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看護師クリエイティブプロジェクト「fractale」のみなさんが、毎回テーマに沿ってそれぞれの看護の足跡を残していく本企画。

「学びかたを学ぶことで看護師として生きる選択肢をふやしていく」ことをコンセプトに立ち上げたメディア「メディカLIBRARY」のスタッフが、毎回、フラクタルのみなさんにテーマを伝えています。

今回のテーマは「ウソをつかなきゃよかったと思ったこと」です。

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新年度が始まり、異動された方、新卒の方は少しずつ仕事に慣れてきたころでしょうか。
仕事にはいろんな決まりがあり、自分のなかの「正義」と社会や会社の「常識」がぶつかるころかもしれません。
ぜひ、自分の決まりや常識だけではなく、少し肩の力を抜いて世間に流されてみてください。「がんばりすぎないこと」が働き続けられるコツかと思います。

さて、今回のテーマは「ウソをつかなきゃよかったと思ったこと」。
このテーマ、なかなか難しいなと思いました。
なぜなら、看護の仕事ってあまりウソを付いて後悔する場面ってないなって思います。

ウソも時として武器になります。

私は人生で一度も入院したことがありません。
でも看護という仕事をしていると、患者さんの入院生活と接する場面が多くあります。
そのときのつらさや大変さに共感するために「大変でしたね」とか「つらかったですね」と話しますが、じつはどれぐらい大変かよくわかってません。
でも、ここで「入院したことないのでわかりません」は事実ですが適切な言葉がけではないと思います。

ただ、ちょっと仕事で失敗した経験があります。
あれは、精神科で働いて2年目ぐらいのとき。
夜勤中、患者さんが一緒に働いていたスタッフに対して「私の記憶を奪わないでよ」と言ってきたことがありました。
記憶を奪う、それは妄想上の話なのはわかります。
モノではないので、こういう時の対処法がいまいちわからず。
「実態がないものだから、謝れば気が済むのかな」と思いました。
なので「じゃあ謝ってもらう?」と患者さんに聞きましたが、スタッフが「なんで謝らないといけないのよ」と言ってきました。
そのときハッとしたんです。
「そうか、ここで謝ると妄想が本当となってしまい、今後の妄想がもっと膨らんでしまうし、患者さんとの関係性が修復できなくなるな」って。

妄想への対応って、精神科で働くなら必ず対応することですが、その場しのぎの対応ではだめだとこの場面で学びました。

精神科だと看護師がついたウソによって患者さんとの関係性が悪くなります。
妄想を持たれやすい関係であるため、持たれた妄想に対してはきっぱりと否定する対応も、時として必要なスキルです。
そのためにはお互いにウソをつかないことが必要だと思います。

まあ、看護という仕事は対人関係の必要な仕事ですので、時としては必要なウソもあると思います。
相手との関係性も考えつつ、ウソという武器を上手に使っていきたいものですね。

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fractale~mizuki~
twitter:mizuki@おぬ12年目看護師(@c_mikzuki

乗り物好きな看護師。事務職、データベースエンジニアを経て31歳で看護師に。脳外科、回復期、精神科病棟を経験。その後は在宅医療を経験し、再度精神科病棟へ。看護師クリエイティブプロジェクト「fractale」管理者。医療メディア「メディッコ」メンバー。看護師のキャリアについて考える「ナスキャリ部!」副部長(仮)。その他多数プロジェクトに参加。好きな言葉は「まだ見ぬ誰かの笑顔のために」。好きな看護技術はひげ剃り(その他ほぼ不得意)。好きな看護業務はリーダー業務。好きな都バスの路線は【業10】新橋~とうきょうスカイツリー駅前。 

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