看護師クリエイティブプロジェクト「fractale」のみなさんが、毎回テーマに沿ってそれぞれの看護の足跡を残していく本企画。
「学びかたを学ぶことで看護師として生きる選択肢をふやしていく」ことをコンセプトに立ち上げたメディア「メディカLIBRARY」のスタッフが、毎回、フラクタルのみなさんにテーマを伝えています。
今回は「患者さんの意外な一面」を綴っていただきました。
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こんにちは。
新年度、環境がバタバタしている中の勤務、お疲れ様です。人事異動も多く大変な時期の1つですよね。
さて、今回のテーマは「患者さんの意外な一面」です。
思っていた患者さん像とのギャップ、あるあるです。当然ながら看護師として関わるのはほんの一場面なので、そりゃもう色んな一面に驚かされました。
医療者に対してとても丁寧な方がご家族には命令口調だったり。
術前、堂々として強そうだった方が実は術後パニックになっていたり。
自分のことになるとコンプライアンス悪いのに、ペットはしっかりと管理していたり。
看護師にはどこか他人の顔になる患者さんや利用者さんの、素に近い面というのは良いですね。
人間味があり、好きです。
その中でも特に強く印象に残っているエピソードをご紹介します。
それは1番最初に働いた大学病院の時でした。確か2年目だったかな。
入院患者の中には難病に苦しむ若い子もいました。その中に、まぁ、、いわゆるヤンキーがいたんです。
その子は常にむすっとしていました。
彼氏が毎日面会に来ていたのですが、2人して看護師に高圧的だったのでベッドサイドに行くのは少し苦手でした。
というか、行くと睨まれてこわかったのです。
その子の退院日。
その子はわたしに手紙をくれました。
その手紙には、“入院生活はすごく不安だったこと”と“わたしが夜勤だと安心したこと”が書いてありました。
その子はプライマリーじゃなかったので驚きました。
...なんでわたしが..??
特別なことはしてないし、
不安を表出されたような場面もなかったし、正直見当がつかなかった。
というかずっと怒ってたじゃん..
難病の子は入退院を繰り返すので、1ヶ月もたたないうちにその子は再入院してきました。
そこで、手紙のお礼、不安だったのにあまり話も聞けなかったことへの謝罪、そしてなんでわたしに手紙をくれたのかを聞きました。
“....いつも「何かあったらいつでも呼んでもらって大丈夫」って言ってくれたから...”
..確かに、ベッドサイドから離れる時の決まり文句でそのことばを伝えていました。
わたしの中で当たり前だったものなんですけど..それがその子にはすごい響いていたのです。
予想外の返答に驚くのと同時に、そんなに不安だったのに気づけなかったことに罪悪感を覚えました。
そりゃ、普段スンとしてても10歳代での入院だもんね、しかも初めての入院。
不安じゃないわけないよね。
こんな声かけで安心してくれるなんて、よっぽど心細かったんだな。
なんだかその子が小さく見えました。
実はその子はもう1人別の看護師にも手紙を書いていたので、その人とわたしから全体へ情報共有をしました。
実は不安でいっぱいです、と。
その甲斐もあり2回目の入院ではちゃんと“こわい”“不安”と気持ちを出せるようになりました。
本当によかった。
見た目が強そう、
表情がこわい、
こんなので“大丈夫”って決めつけてはいけませんね。きちんとその人と向き合って、本音を探っていく必要があるな、と感じた事例でした。
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fractale~satomi~
X:さとみ(@minisatominy)
三度の飯よりお酒が大好きな飲兵衛看護師。仕事終わった瞬間からが本番だと思っている。仕事は真面目な自信あり。大学病院消化器外科3年、民間病院ICU2年、公立病院脳外科夜勤専従、訪問入浴、デイ、老健など1年の派遣生活を経て、メルボルンへ10ヶ月の看護留学。帰国後から訪問看護師として働き3年目。座右の銘は「笑う門には福来たる」。根からの明るい性格を最大限に利用し、日々楽しく訪問中。マルチポテンシャライトだから特技っていう特技はないけど、強いて言えばラポール形成が無駄に得意。今までクレームや担当変更がないのが密かな自慢。ちゃっかり保健師免許所有。
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