「学びかたを学ぶことで看護師として生きる選択肢をふやしていく」ことをコンセプトに立ち上げたメディア「メディカLIBRARY」のスタッフが、毎回、フラクタルのみなさんにテーマを伝えています。
今回のテーマは「経管栄養」です。
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バシャッ
シリンジで入れようとしていた、簡易懸濁してた内服薬、20mL、ぜんぶ顔にかかった。
一瞬事情がわからず固まってしまった。
患者さんにかからなくて良かった。
脳梗塞後の後遺症で、嚥下障害がある。
意識障害も麻痺もあるので動くことができない。
勢いよく内服薬がとんできたら避けられない。
いや、すこしも良くない。
内服できてない。
きっと怒られる。
カリウムを下げる大事な薬もあった。
どうしよう。
とはいえ、どうすることもできないので、薬まみれのままリーダーに報告しにいくと、
『あー、昨日経管流してて、フィーディングチューブ詰まるかもって思ってたんだよね。しかたない。もう挿れて1カ月近くだし。むしろ朝の経管流れて良かったよ。先生来たら入れ替えてもらおう』と。
意外や意外、怒られることはなかった。
それどころかリーダーにはすべて予想どおりだったらしい。
『先生来たらすぐお願いできるように、物品揃えておこう。やったことある?』
ないです、と伝えるとリーダーは一緒に準備をしてくれた。
『チューブを入れたら気泡音を聞くから、空気を入れるシリンジと聴診器。チューブが挿入しやすいように潤滑剤。あと固定のテープね。それから今回は、フィーディングチューブじゃない、太いのを準備しておこう』と言って、12Fr.のチューブを準備していた。
普段経管栄養のみで使用しているフィーディングチューブは8F.だった。
12Fr.、14Fr.はドレナージ目的で挿入されていることが多かった。
医師が来て、経鼻胃管挿入実施。
胃で気泡音を確認、ポータブルX線撮影の指示を出していった。
ついでにわたしが思いきりよくかぶってしまった朝の内服を1回分処方していってくれた。
ありがとう先生。
『ほら見て』
胃管挿入介助まで一緒についていてくれたリーダーが、さっきまで挿入されていたフィーディングチューブの先端を持ち上げて言った。
『先端のところに薬が詰まってる』
白っぽい塊がチューブ先端に付着していた。
なるほど、チューブを詰まらせた原因だ。
『あの患者さんの薬にカリメートⓇってあったでしょ? あの薬を溶かすときはけっこうたくさんお湯いれないと、溶け残っちゃうんだよね』
12Fr.のチューブから入れた内服薬は、信じられないくらいスムーズに注入された。
『あ、あと、チューブ入れ替えた直後やチューブが太くなったら、投与速度ちゃんと見てないと早くなったりするからね! 気を付けて』
そうアドバイスを受けて、日勤でその患者さんを受け持つ同期にこそっと教えにいった。
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fractale~nozomi~
twitter:のぞみ(@sratsylenol)
看護師クリエイティブプロジェクトFractaleのエモ担当。なぜか気が付いたら在宅沼に片足突っ込んでいた7年目看護師。外科・脳外科病棟→救命救急センター→集中治療室→2020年2月から在宅。新米訪問看護師。輸液ポンプ、シリンジポンプのコード整理の特技が活かせなくなってしまった。元葬儀屋、病院栄養科勤務経験のある社会人から看護師パターンのやつ。ケアの原点を在宅に感じて、改めて生と死を見つめ直そうとしている。趣味は筋トレと読書とロードバイクと音楽鑑賞。B'zに対する並々ならぬ執着心がチャームポイント。 好きなトレーニングはレッグエクステンション。
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