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看護師クリエイティブプロジェクト「fractale」のみなさんが、毎回テーマに沿ってそれぞれの看護の足跡を残していく本企画。

「学びかたを学ぶことで看護師として生きる選択肢をふやしていく」ことをコンセプトに立ち上げたメディア「メディカLIBRARY」のスタッフが、毎回、フラクタルのみなさんにテーマを伝えています。

今回は「病棟看護の魅力」を綴っていただきました。

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思い返してみると、病棟看護を離れて、もう5年以上になります。
あっという間ですね。

働いていたのは急性期の病棟だったので、めちゃくちゃ回転の早い病棟でした。
手術目的の患者さんが大半だったので、元気に入院→手術→絶対安静→離床→元気に退院という流れがほとんどでした。

入院時はフリーだった人が、翌日にはドレーンなどの管だらけになっていて、日に日に管の数は減っていって、あっという間にフリーになっていって。
かと思えば術後合併症でリオペになって、またもやドレーンだらけになっていることもあって。
と、患者さんの状態は日々めまぐるしく変化しています。
連休後なんかは患者さんほとんどがはじめましてのときもよくありましたね(笑)。
まさに、浦島太郎状態です。

患者さんがどんどん回復していくのはうれしいですよね。
急性期病棟を選んだ理由でもありました。
人間の回復力って本当にすごいんですよ。

ただ、治療はうまくいくことばかりではありません。
お腹を開けてみて、やっぱり手術できないと判断され、お腹を閉じることもあります。
ドラマの世界だけではないんです。
何でも切れる人は身近にはいないんです。
余命を宣告される人もいます。
後遺症が残る人もいます。

病棟看護の力って、こういう急な精神的ダメージを受けたときにいちばん発揮されるんじゃないかな、と思います。
時間が限られる在宅とは違って、毎時間、毎日、ちょっとずつかかわりサポートすることができる。
否認から、受容まで。
こちらも悩みながら、でも本人のことを考えて、かかわる。

病院という、“治療”ができる場での医師の悩みを聞いたこともあります。
これ以上の治療は難しい、と医師が判断されたとき、ぼそっとこぼしたことばです。

「医師は、患者さんの命を救うことができる、唯一の存在なんだよね。その自分が、積極的な治療をしない、という選択肢を出すのも、すごくつらいことなんだよ」

DNARに慣れつつあったわたしにはハッとする発言でした。
看護側は本人にとって苦しくない選択肢を、と考えるので、わりと淡白に考えていたけど、治療方針を提案するのは医師なんです。
きっと、わたしが思う以上にこの選択は苦しいものなんだと思います。
もちろん患者さんを苦しめないようにするいちばんの選択ではあるのですが。

こうやって、患者さんに真剣に向き合って患者さんのためにいろいろと考えて悩むのは病棟看護も訪問看護も一緒だし、この業界って素敵だなって思います。
本当に。
きっとこういうのをよいと思わない医療従事者はいないと思う。
だから、もっと働きやすくなってくれと、切に願います。

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fractale~satomi~
twitter:さとみ(@minisatominy

三度の飯よりお酒が大好きな飲兵衛看護師。仕事終わった瞬間からが本番だと思っている。仕事は真面目な自信あり。大学病院消化器外科3年、民間病院ICU2年、公立病院脳外科夜勤専従、訪問入浴、デイ、老健など1年の派遣生活を経て、メルボルンへ10ヶ月の看護留学。帰国後から訪問看護師として働き3年目。座右の銘は「笑う門には福来たる」。根からの明るい性格を最大限に利用し、日々楽しく訪問中。マルチポテンシャライトだから特技っていう特技はないけど、強いて言えばラポール形成が無駄に得意。今までクレームや担当変更がないのが密かな自慢。ちゃっかり保健師免許所有。 

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