著者:川下貴士(松蔭大学看護学部精神看護学講師)
t-kawashimo@shoin-u.ac.jp
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今回は精神科訪問看護時代の上司へ横柄な態度をとったという失敗談です。どうぞお付き合いください。
教科書に載ってないのにそれ意味あるんですか?
大ベテランへ上から目線で答えた僕。終わってる……。
僕が初めて精神科訪問看護という分野で働いた場所は病院併設でした。人気がないのか……僕を含めて職員は3名。精神科訪問看護に夢と希望を抱いて入職したものの自分の思いと裏腹に年々、職員は辞めていきこの人数になったという現実に唖然としたことを今でも覚えています。そして……また一人……職員は辞めていき、とうとう真面目で感情表出が苦手な上司と僕の2人だけになりました。
上司は、臨床経験20年以上で精神科訪問看護へ異動してきて5年。臨床経験も精神科訪問看護歴も僕より上で大ベテラン看護師です。だけど当時の僕はなぜかこの上司に上から目線。精神科訪問看護1年目のやつが本当、意味がわからないですよね……。
同行訪問する際には、上司の精神科訪問看護の場面を間近で観察することができます。もちろん僕は学ぶ姿勢ではありません。「あのときの利用者への言動の根拠は何ですか?」と訪問後にすぐに詰問するなど上司の看護を評価する態度です。この人何様? 失礼でしかないですよね……。
そんな上司にある日。「川下さんはどうして訪問場所の地図を覚えようとしないの? メモとかしなくて大丈夫?」と聞かれたことがありました。今、思うと上司なりの気遣いということは理解できますが、当時の万能感に浸っている僕には気遣いであることが理解できません。そして、冒頭でのあの言葉を発します。「地図を覚えたり、メモすることって必要なんですか?」と語気を荒げ、訪問バッグに入れていた教科書をパラパラとめくり、「どこに書いてあるんですか? 教科書に載ってないのにそれ意味あるんですか?」と自信満々にまさかの上司へ逆質問。
そこから先は皆さんの想像どおり。
教科書に載っていることや根拠を他者に叩きつけることがコミュニケーションでしょうか。教科書や根拠をもとにコミュニケーションを図ることも大切ですが、上司にしかわからない教科書にも載っていない経験を伝えることも大切なコミュニケーションです。上司への経験を否定したコミュニケーションに信頼関係も何もありません。上司を見下し、何一つ上司のことを知ろうとしていない。コミュニケーションは上司を論破するために行うのでしょうか。違いますよね。
上司との信頼関係を築くためのコミュニケーションのはずです。上司の親切心を当時の僕は素直に受け取ることができませんでした。本当、あのときはすみませんでした。なぜ上司があのときあのような発言をしたのか? その背景を理解できていれば……未熟者でしかないですね……。
論破より思いやり!
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日本看護協会出版会『コミュニティケア』誌(2024年9月号)にて「精神科訪問看護へようこそ」を2025年12月号まで連載していました! 全16話で、精神看護に興味のある方はどちらの雑誌も読んでいただけると嬉しいです!
※本記事に登場する人々は、著者の体験に基づくフィクションです。実在する人物などとは関係はありません。
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