「自助具」は「生活を補助する道具」です

リハビリテーション(以下、リハ)に関連する言葉に「自助具」があります。自助具は、腕や手の麻痺、関節拘縮、痛み、切断などの障害をもつ患者さんが、セルフケアをはじめとした日常生活動作(ADL)、手段的日常生活動作(IADL)を独力でできるようにするための福祉用具です。自助具は一般的な道具に工夫や改良を加えた「生活を補助する道具」として考えられています。

これらの自助具は、リハ関連職種のなかでもとくに作業療法に根付いており、市販のものから、作業療法士が手作りするそれぞれの患者さんの特徴に特化したオーダーメイドなものまで、さまざまなものが存在します。

自助具の世界的な潮流

さて、上記の自助具を含む支援機器については、世界的には長らく「テクニカル・エイド(technical aid)」とよばれてきました。しかしながら、近年では、「テクニカル・デバイス(technical device)」となり、2007 年以降はISO9999 で「アシスティブ・プロダクツ(assistive products)」とよばれています。

一方、これらの製品について、米国での法律的なよびかたは「アシスティブ・テクノロジー・デバイス(assistive technology device)」です。米国は1988 年に、障害者への支援におけるテクノロジーの役割を認めており、連邦政府が各州に対して補助金を交付するための法律を制定しています(この法律は1994 年に改正されています)。

その法律では、「“assistive technology device” means any item, piece of equipment, or product system, whether acquired commercially off the shelf, modified, or customized, that is used to increase, maintain, or improve functional capabilities of a child with a disability(『アシスティブ・テクノロジー・デバイス』とは、障害のある人の生活機能を向上させたり、低下を防ぎ、改善させたりする目的で用いられるさまざまな品目、装置部品、製品システムであって、店頭での購入、修正したものや個人にあわせて特注されたものも含む)」と定義されています。

自助具は障害とともに生きる人たちだけではなく、多くの人が利用できます

法律などで定義された、支援制度の対象となる障害とともに生きる人たちに対して、自助具の配布や購入の優遇制度が存在するため、自助具は障害などをもつ対象者のために設定されたものだと思いがちです。しかしながら、これら自助具はユニバーサルデザインという概念をもちあわせています。多くの自助具は障害をもつ対象者のためだけのものではなく、できるだけ多くの人々が年齢や能力、状況などにかかわらず利用できるようにすることを、最初のデザインの段階から想定して作られています。

とくに近年ではユニバーサルデザインに加え、インクルージブデザインという概念も注目されています。ユニバーサルデザインはデザイナーなどの生産者側がデザインを考案するのに対して、インクルージブデザインは消費者側、なかでもマイノリティ(社会的少数者)のような、従来のデザインや制作の過程から除外されてきた人たちのニーズに寄り添い、デザインを考案する段階から消費者を巻き込むことをいいます。なかでも近年の自助具はインクルージブデザインの概念を含むものが多く、筆者もこれらのデザインが一般市場に流通することにより、自助具を通して健常者と障害者、あるいは生産者と消費者の間に存在する、バリアによる分断を緩和するツールになる可能性を考えています。

この連載企画の目的

この連載企画では、複数のインクルージブデザインを採用した自助具を紹介します。眼前の対象者だけではなく、読者の周辺の人たちの生活に、これらの製品が少しでも役に立てればと願っています。




竹林 崇
大阪公立大学 リハビリテーション学研究院 教授、OT

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