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事例

Aさん(52歳、女性)は未婚で80歳の実母と2人暮らしです。高校で教員をしています。卵巣がんで単純子宮全摘出術、両側付属器切除術、大網切除術、骨盤リンパ節生検術施行後、翌月から化学療法を受けることになりました。卵巣がんの標準化学療法であるパクリタキセル(PTX) とカルボプラチン(CBDCA)の併用療法(TC療法)を、3週間ごと6回を目標に受ける予定です。今回は初回のTC療法のため入院しました。

問題

Aさんは傷病休暇を利用して、残り5回の抗がん剤治療を外来で受ける予定で、早期の職場復帰を考えています。退院指導として最も適切なものはどれですか。
<正解100%>

(1)体調が良ければいつでも職場復帰してよいと伝える。

(2)Aさんは教員なので、仕事上特に注意すべきことはないと伝える。

(3)これからの治療スケジュールと骨髄抑制などの出現時期などを具体的にカレンダーで示しながら説明し、自宅での生活上の注意点などを説明する。



… 正解は …











(3)

解説

(1)⇒2回3回と治療を重ねていくことで、副作用が強く出たり、体力が低下していくことも考えられます。職場への復帰は自己判断をせず、体調に合わせて医師と相談しながら時期を決めることが大切です。
(2)⇒教員という情報だけで判断してはいけません。Aさんは術式からリンパ浮腫を発症する可能性もあります。仕事内容や職場環境、通勤方法などを確認し、仕事をする上での注意点やリンパ浮腫予防のための生活方法などを指導することも必要です。
(3)⇒初回の抗がん剤治療が終了したところなので、副作用は退院後に出てくると考えられます。初めての経験ですので、家での生活をイメージしながら食事や家事などを具体的に指導することが望ましいです。

抗がん剤の副作用は、早期に現れる吐き気や倦怠感、しばらくたってから現れる骨髄抑制や脱毛、手足のしびれなど種類によって出現時期が異なります。外来での通院治療を計画通り受けられるよう、退院後は体調管理が大切です。「この時期は白血球が下がるから食事に気をつける」など具体的な時期と注意点を指導することで、患者さんの不安も和らぎます。治療回数を重ねることで副作用が強く出たり、体力が低下することも考えられます。職場復帰については、仕事内容によっては業務調整や環境調整が必要な場合もあります。安易な判断はせず、外来での抗がん剤治療を受けながら、医師と相談して決めていく必要があります。

※2021年6月25日掲載分の再掲載です。