事例
Aさん(60歳、女性)は、うつ病(depression)で、夫と2人暮らしです。自宅で自殺目的にて縊首したところを発見されました。発見が早く生命への影響はなかったため、うつ病の治療のために医療保護入院となりました。身長155cm、体重40kg(この2カ月で体重は8kg減少)、血圧102/60mmHg、脈拍数66回/分、SpO299%、採血データ上、脱水と低栄養状態の所見を認めました。
問題
Aさんの精神症状は寛解し、自宅への試験外泊をすることになりました。Aさんは「早く退院したいです。やらなくてはいけないことがたくさんあります」と話しています。外泊中の自宅での生活について、Aさんへのアドバイスで最も適切なものはどれですか。
<正解率95%>
(1)「 退院の判断をするために、家でどこまでできるか試しましょう。外泊でやらなければならないことができたら、退院しましょう」
(2)「 家族に頼らずに、自分で生活するようにしましょう」
(3)「 無理をしないで少しずつ、できることを増やしていきましょう」
… 正解は …
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(3)
… 正解は …
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(3)
解説
(1)⇒どこまでできるかという限界を試すのではなく、少しずつ入院環境から地域社会生活に移行していきます。
(2)⇒服薬により症状コントロールがされていても、ライフイベントや環境変化によるストレスで、症状は変化しやすい状況です。患者一人で抱え込まずに、キーパーソンとなる相談相手が必要です。
(3)⇒うつ状態の回復過程では、具体的で無理のない負荷の少ない小目標、短期目標を設定し、課題達成していくことが望ましいです。達成できない目標であると、自己否定や自責感が高まり病状が再燃する可能性があります。
うつ病の回復期は、自分自身を振り返ることで後悔や病状への悲嘆などが生じやすく、抑うつ感が増強する可能性があります。元気を取り戻したことに安心するのではなく、患者の変化に気づき病状の変化があったときには早期に対応できるよう、家族の理解や疾患教育が必要です。また回復期に取り戻したエネルギーが、自傷行為を実行するために用いられる可能性もあります。環境変化や新しいことを始めるに当たっては、慎重に取り組んでいく必要があります。うつ病患者の気質として、几帳面、がんばりや、頑固といった性格傾向があります。患者のこれまでの生活から強みを見いだし、自己肯定感を維持できるような支援が必要です。