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事例

Aさん(52歳、女性)は未婚で80歳の実母と2人暮らしです。高校で教員をしています。卵巣がんで単純子宮全摘出術、両側付属器切除術、大網切除術、骨盤リンパ節生検術施行後、翌月から化学療法を受けることになりました。卵巣がんの標準化学療法であるパクリタキセル(PTX) とカルボプラチン(CBDCA)の併用療法(TC療法)を、3週間ごと6回を目標に受ける予定です。今回は初回のTC療法のため入院しました。

問題

パクリタキセルを投与する際に注意すべきこととして最も適切なものはどれですか。
<正解96%>

(1)薬剤部ですでに混合調剤されているため、患者さんのベッドサイドではマスクや手袋を装着せず投与準備する。

(2)投与開始から最低1時間は、頻回にバイタルサインのモニタリングを行う。

(3)パクリタキセルは無色透明であるため、輸液セットは何を使ってもよい。



… 正解は …











(2)

解説

(1)⇒輸液セットを輸液ボトルに差し込んだ際や、輸液セットの接続部の緩みからの漏出など、抗がん剤に直接触れる危険性があります。曝露予防目的でガウン、マスク、手袋、ゴーグル、帽子を着用します。
(2)⇒呼吸困難、胸痛、血圧低下、頻脈、除脈といった重篤な過敏症状は、多くは開始直後から1 時間以内に起こるといわれています。異常を早期に発見するためにも、予測されることやモニタリングの必要性を説明し患者さんの協力を得ることも重要です。
(3)⇒パクリタキセルの希釈液は、過飽和状態にあるため、結晶として析出する可能性があります。そのため、0.22μm以下のメンブランフィルターを用いたインラインフィルターを使用します。

パクリタキセルは重篤な過敏症状を起こすことがあるので、必ず前投薬を投与します。バイタルサインを含め患者さんの状態に変化がないか十分な観察が必要です。症状が出現した場合は、直ちに投与を中止し、適切な処置を行う必要があります。また、抗がん剤は発がん性、胎児奇形性などの毒性を有するので、医療者の抗がん剤曝露を防止しなければなりません。抗がん剤投与の際は、使用上の注意など安全に投与するための情報が添付文書に記載されているので、確認し十分に理解しておく必要があります。

※2021年6月21日掲載分の再掲載です。