農林大学校に退学届の提出や寮の荷物整理に向かう電車の中でこれまでの学校生活を思い起こしています。看護学生のころまでは、人を頼ることも、人に甘えることも苦手だったものの、時間的にも精神的にも余裕ができ、お願いをしたときの相手の反応も受け止められるようになると、人を頼ることに抵抗なくなっていきました。1人でできることも、友だちを誘えばもっと楽しい、そんな関係性を農林大学校で作ることができたのです……

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コンビニスーパーに行くだけでも、今までにない楽しさ!?

すべての授業が終わるのが16時過ぎ、食堂でご飯が食べられるのは18時です。

この2時間は短いようで長くて、長いようで短いのです。つまり、部屋で夜ご飯を待つにしては長くて、外に出かけるには短いのです。

ご飯の前にお風呂を済ませて髪の毛を乾かし、部屋でちょっとダラダラしてたらちょうどいい時間になるので、多くの日はこのスタイルです。

でも2時間待てないくらいお腹が空いていたりすると、コンビニかスーパーに行かない?と友だちを誘います。前回書いた、自分が誘って車は出してもらうという、とてもわがままなお誘いです(笑)。

学校があるのは周りに何もない田舎だったので、スーパーやコンビニに行くにも車で10分ほどかかります。都会みたいに歩いて行ける距離ではないんですよね。

だからこそめちゃくちゃ楽しいんです。

「甘いもの食べたくない? コンビニ行こうよ〜。行きたくなってきたでしょ! 行こ行こ行こ!」と誘い、ノリノリでスキップなんかしちゃいながら駐車場まで向かっていました(笑)。歌とかも歌っちゃいますね。

夏は車のクーラーが効く前に着く距離なので窓を開けるのですが、窓から入ってくる生ぬるい風を感じながらテンション高めで向かうコンビニが大好きでした。

ふぅ⤴︎ コンビニ! コンビニ! のテンションです。
コンビニに盛り上がれるのは小学生以来でした。
と言うより、小学生のころよりも盛り上がっていました(笑)。


コンビニがお出かけ気分にさせてくれるんですよね。
以前は、地元を都会ではないと思っていました。ですが周りに畑と山しかない場所に住んでみると、どこへでもすぐに行けるアクセスの良い場所に住んでいたんだな感じました。農林大学校に入って、歩いて行ける距離に3〜5カ所もコンビニがあった地元を都会だと認識するようになりました。

テストで早帰りの日は

テストが午前中で終わる日は、食堂で昼食を食べてからいろんな所に行きました。ワークマンプラスに行きたくて2時間車を走らせたものの意外と普通のワークマンと変わらなくてがっかりしたり、モンベルストアで想像が膨らんで楽しくて2時間滞在したり、カラオケに行って夜まで歌って踊ったり。

これぞ学生生活!って感じです。
いままで憧れていたことをたくさんできました。

イオンにも、行くだけでもめちゃめちゃ楽しかったです。何が楽しかったのかもう思い出せませんが、コンビニの延長線上にあるもっと楽しい場所という印象です。友だちとはいつもいっしょに食堂でご飯を食べていましたが、イオンでご飯屋さんを探していっしょに食べるのもめちゃくちゃ楽しかったんですよね。


すべてが楽しくて、すべてが面白くて、つねに笑っていました。
笑っているというか、笑っちゃっている感じです。
もう楽しくて、楽しくて、仕方がない。


看護学生のころの自分が見たら、びっくりして腰が抜けちゃうと思います。それくらい自分でも、こんなに人って人生って変わるんだと思いました。

看護学生のころは登校してもほぼ一言もしゃべらずに下校することもありました。疲れてると家でもしゃべる気力がわかず、声の出し方がわからなくなっちゃったこともあるくらいです。ふとしたときに人と話して「私、声の出し方を忘れていないや、よかった」と思ってたので。


必要事項の連絡やグループワークなどで人と話す機会がなければ、みずから話すタイプではなかったので、人と雑談することもほとんどなかったと思います。

それが農林大学校に入ったら1年も経たずに笑いが止まらないんです。私という人間はほとんど変わっていないはずなのに、こんなにも違う人になってる。

看護学生時代の同級生が農林大学校で過ごす私を見たらびっくりするだろうし、逆に農林大学校の友だちが看護学生だったときの私を見たら引くと思います。

勉強に全エネルギーをぶち込んでいた私はサイボーグみたいとも言われていたので、それほど人間味がなかったのでしょう(私は当人なのでわからないですが)。


新卒で看護師にならなかった理由の一つに、このまま看護師になってキャリアを積み重ねていったら、その自分を好きではいられないだろうなと思ったということがあります。

看護学生として過ごすなかで、自分の性格がどんどんきつくなっていることがわかっていたし、実習先で出会う看護師さんたちもきつかったので、将来自分がこうなるのかと思うと怖かったです。

小学生のころからなりたかった「看護師」になる代わりに、なりたくない「自分」になってしまうんじゃないかという怖さがありました。

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プロフィール:まめこ
5年一貫の看護高校卒業後、林業学校に進学。現在は、病院と皮膚科クリニック のダブルワークをしながら、発達障害を持っていても負担なく働ける方法を模索中。ひなたぼっこが大好きで、天気がいい日はベランダでご飯を食べる。ちょっとした自慢はメリル・ストリープと握手したことがあること。最果タヒ著『君の言い訳は、最高の芸術』が好きな人はソウルメイトだと思ってる。ゴッホとモネが好き。夜中に食べる納豆ごはんは最強。