農林大学校に退学届の提出や寮の荷物整理に向かう電車の中でこれまでの学校生活を思い起こしています。林業の実習では、同じ班の子に頼ることも多くあったものの、声をかけてくれるクラスメイトに恵まれて、人に頼ってもいいと感じられるようになりました。それと同時に思い出されたのが看護学校時代のこと。自分自身も周囲のクラスメイトも精いっぱいの毎日を過ごしていたため、周りに頼るなんて考えることもできず、自分のことは自分でやるしかない、1人で切り抜けるしかないと思っていたのでした……

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頼ること、甘えることが苦手な私が……

私は人を頼ることも、人に甘えることも苦手でした。

自分がつらいと思っていても、人に頼んで嫌な顔されたときのほうがよっぽどぐっと心が苦しくなるので、それならば頼らず自分でやってしまおうと思ってきました。予期不安が強いので、「こうして、こうだったら」と考えて不安になってしまうのならば、自分でやってしまおうと思うんですよね。

それに、もともと人と関わるのが得意でないのもあって、人に声をかける機会を避けていたのもあります。


そんな私が人を頼る選択をしなければいけなくなったのは、「発達障害の特性上、学校生活が困難であった」からです。もし発達障害の特性がなければ「人を頼る」選択をずっとしなかったかもしれません。

看護学生のときは、看護師になりたいから、卒業したいから配慮してほしいと先生たちを頼りました。農林大学校でも寮や学校生活のことについて先生たちに配慮をお願いしてきました。

人を頼ると会話量が必然的に増えるのでエネルギーをすごく消費します。でも自分ではどうしようもなく解決できないことだから、人を頼ることが必要になります。

自己開示をし、話し相手の反応を見る。そして受けとめる。

業務上だからやってくれているんだと思うところもありつつ、自分のなかで「人に頼ること」への抵抗が少しずつなくなってきました。意外と頼っても人は嫌な顔しないんだなと感じました。

人生を長期的に見て、10代で人を頼ることがある程度抵抗なくできるようになったのはよかったなと思っています。特に働いてからは先輩に頼りっぱなしです。

友だちとの関係性

中学校、高校、看護学校と、友だちに頼るのが申し訳なくてあまりしてきませんでした。自分が「テスト範囲の勉強を教えて」とか「ノート見せて」とか言われるのは「いいよいいよ〜」と抵抗なくできるのですが、自分からはできなかったんですよね。

ですが農林大学校に進学して、時間的にも精神的にも余裕が持てるようになり、「人を頼って嫌な顔されても、受け止められる」と思えてからは言えるようになりました。


「職員室に1人で行くの嫌だから付いてきて〜」
「コンビニ行きたくない?(車出してくれたらうれしいなの気持ちを込めて笑)」

これらはすべて1人でやることもできたわけです。でも職員室に行くのは緊張するから1人では行きたくないし、コンビニ1人で行くのさみしいし、友だちといっしょに行ったほうが絶対楽しいし、できれば車を出したくないなみたいな。

車出したくないってめちゃめちゃ嫌なヤツだと思うんです。自分がコンビニ行きたいのに、誘って車まで出してほしいって相当なわがままだと思うんです。でもそういうことが言えるようになったんですよね(農林大学校に来るまでペーパードライバーだったので運転に自信がなかったんです……泣)。

農林大学校では、そういうお願いを言っても許される関係を作ることができました。私にとっては初めての関係性です。

「えーめんどくさい」と言いながらも「コンビニ行きたいって言われたら、私もなんか行きたくなって来ちゃったじゃん!ww」と車を出してくれたり、「コンビニ行きたいときは言ってね! おじょーとお買い物できるのうれしいから!」と言ってくれる子まで出てきました(泣)。


こんなに自己中なワガママ言っていいの!? 受け止めてもらえるんだと、とてもびっくりしました。

「お願いごと(頼ること)=めんどくさがられる=嫌われる」の方程式が「=時と場合とキャラによって受容される」に変更されました。

感情を表出できるようになったのと引き換えに

いままで自分だけで背負い過ぎていたのかもしれません。

考えていることや思っていること、感じていることを表出しなさ過ぎて、自分が苦しくなっていったんだろうと思います(頭で考えていることと口に出す言葉の量の差、プロセスレコードについてお話しした#030「人の感情って温かい」を読んでください!)。当時は感情を表出しないことが自分を苦しめているなんて、思いもしませんでした。


最近、感情を表出できるようになったことで、以前よりうまく生きられるようになったなと感じることが多くなりました。同時に、自分のなかの感覚をわかりやすい言葉で共有する怖さもあります。自分が感じたときと、話すための言葉に落とし込んだときのあいだに、見えなくなっているものがあるんじゃないかとときどき思います。もともと完璧主義だった私は0か100の白黒思考になりがちなので、100%理解できないってわかっているけどちょっと違うように受け取られるのは嫌だなと思って、言葉を出せないときがあります。考えすぎだと言われたらそうなんですけどね……。

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プロフィール:まめこ
5年一貫の看護高校卒業後、林業学校に進学。現在は、病院と皮膚科クリニック のダブルワークをしながら、発達障害を持っていても負担なく働ける方法を模索中。ひなたぼっこが大好きで、天気がいい日はベランダでご飯を食べる。ちょっとした自慢はメリル・ストリープと握手したことがあること。最果タヒ著『君の言い訳は、最高の芸術』が好きな人はソウルメイトだと思ってる。ゴッホとモネが好き。夜中に食べる納豆ごはんは最強。