小学生の時は注目されることが苦手だったものの、看護師になることを目標としてからは、自分の思っていることをしっかり言葉にする力が必要だと思い、中学校では生徒会長になりました。目標を決めたらなんとしてでもやり切る、その力が、まめこさんの環境を、人生を変えていくのですが、その過程では、発達障害があることで「才能を持っている天才」として括られ、うらやましがられることもあり、自身の特性に振り回され、心身が疲弊しきったこともありました。今回はそうした周囲の理解といまの社会の風潮について話します。

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発達障害を持つ人は天才?

私は雑談することはあんまり好きではないので、美容室に行ったときなどに「天気の話だけでは時間がもたないな」というときにしか自分の話はしません。  

「独特だね」とか「変わってるね」と言われるのが嫌で、自分の話は接触頻度が高い職場ですら話しません。なので、私という人間がどんな人なのか知っているのはわずかです(笑)。実際に会ったことがある人よりも、この連載を読んでくださっている人のほうが私を知っていると思います。


自分の話をすると、私は当たり前に思っていることでも、相手にとってはおもしろくかったり驚くことも多いようで、意図せずインパクトを残してしまうのが嫌なんですよね(笑)。

意図してインパクトを残すのならいいんですが、私は基本的に目立ちたくないので、私はこれまで話さないことを選んできました。

美容院でもカット1時間のうち30分以上は目をつぶっていることが多いのですが、後半に美容師さんに話しかけられて話が進むことがあるんですよね。そのときに「天才肌」「いままでに会ったことがないタイプ」などと言われることが多くなり驚いています。

職業柄、相手を褒めて持ち上げるのが得意なのかもしれませんが、美容師さんのテンションを見るとこちらが楽しくなるほど、私の話を聞いて楽しそうなんです。それが不思議でたまりません。


学生時代はレールの上をはみ出しながらも、ある程度はレールに沿って看護師までなったので、そこまで面白みを感じなかったのかもしれませんが、いまは王道から外れまくりなので「変な人」「天才」感が出ているのかもしれません。

メディアと発達障害

人は触れてきたメディアによって「天才」像ができているのかなと思います。メディアは「発達障害=天才」の構図を作りたがる傾向にあると思います。

最近はギフテッド(生まれつき突出した才能がある人)の特集をニュースなどで見るようになり、2E(ギフテッドの部分と発達障害の2つを持っている)である場合の困難さは表に出さず、天才性だけを取り上げている感じがします。私がまだ幼いころ、サヴァン症候群がテレビに取り上げられていたのを覚えていますが、日常生活の困難さよりも天才性のみにフォーカスが当たっていたように思います。

人は、光が当たっている部分しか見ていないので、何かに長けている人の話を聞くとわくわくしますよね。私も他者の天才性のある話は好きです。でも、見えていない部分があるのです。


私の話は、当時はしんどかったことでも、そこから時間的、精神的な距離が取れて、客観視しながら話すのでつらさが見えず、聞いている人からすればワクワクしたものを感じるのかもしれません。ですが、現在進行形で困難なことは困難ですし、発達のムラが無ければこんなことで悩まないだろうし、傷つくこともないんだろうなと悲しくなって泣くこともあります。

チャップリンが
「人生は近くで見ると悲劇だが、遠くから見ると喜劇である」
という言葉を残していますが、まさに!です。

優生思想が広がらないように

天才性をもてはやしたがるこの世の中で、”障害や発達のムラを持っていても突出した部分がある人は価値がある”のような認識が広がることを私は危惧しています。

発達障害にも個人差があり、平均以下での凸凹がある人もいれば、平均以上での凸凹がある人もいます。私のWAIS-Ⅲの結果を出すならば、得意な言語理解は117に対して、苦手な作動記憶は94です。

私は心理学の専門家ではないのでWAIS-Ⅲの詳しい説明はできませんが、私の場合、言いたいことを適切な言葉で相手に伝えたり、相手の言葉から意味や意図を考えたりする能力(言語理解)は高い数値であり、耳から入った情報を短期記憶しておくこと(作動記憶)は平均的ではあるものの私のなかでは凹になっています。この2つの数値の差が20以上あると生活上困難があるとされていて、私の差は23です。そのため、一人暮らしはできているものの生活に困難を感じることがしばしばあります。

作動記憶が凹になっているとはいえ平均値なのになぜ生活上困難が生じるの? と思う方もいると思います。それは、車で例えるとスポーツカーのエンジンがあるのにタイヤが軽自動車みたいな感じですかね……。凸とつり合う能力が他にもないとアンバランスになっちゃうといった理解です(間違っていたら専門家の方ご指摘おお願いします)。


メディアによる影響で、凹があるなら平均以上の凸がなければ価値がない!のような状況になってしまうと、そうでない方がより生きづらくなってしまうのです。そのため、私は自分の発達障害について話す際、あまり知能指数や突出している部分を出さないようにしています。

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プロフィール:まめこ
5年一貫の看護高校卒業後、林業学校に進学。現在は、病院と皮膚科クリニック のダブルワークをしながら、発達障害を持っていても負担なく働ける方法を模索中。ひなたぼっこが大好きで、天気がいい日はベランダでご飯を食べる。ちょっとした自慢はメリル・ストリープと握手したことがあること。最果タヒ著『君の言い訳は、最高の芸術』が好きな人はソウルメイトだと思ってる。ゴッホとモネが好き。夜中に食べる納豆ごはんは最強。