農林大学校に退学届の提出や寮の荷物整理に向かう電車の中でこれまでの学校生活を思い起こしています。友だちからのリクエストで農林大学校内で始めたダンス練習。参加者との温度差で感じたフラストレーションが小学校時代を思い出させます。運動はできるものの勉強はできない、それでもどうにかしなければならない。ひとまず学校に行こうと目標をたてました。どんなに行きたくなくても登校し、自分なりの方法を見つけ出して授業を受ける努力を続けました。一度決めたことだから、はじめて自分で立てた目標だから、がんばり続けたのです……

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馬鹿にされてもしょうがない

小学生のころ、私は頭が悪かったので馬鹿にされていましたし、変に噂を立てられても反論する言語力も勇気もありませんでした。

変な方向に話を持っていかれて、変な印象を持たれたとしても、私は何も言えない。だから学校に行かない選択肢が欲しかった。何か変なこと言われても休めばいいやって思いたかった。逃げる場所をとっておきたかった。


本当は休みたい。
人に何か言われたくない。
視線をこちらに向けないでほしい。
胸がざわざわする。心拍数が上がる。
全身にジワっと冷や汗が出てきて身体が冷えてくる。
これはお腹が痛くなる前兆。
これは何度も経験してるんだ。
鳥肌が立ってる。

お腹痛くなるな、お腹よ痛くなるな。

授業中にトイレに行くなんて、うんこをしにいくと思われるじゃないか。トイレから帰ってきたらクスクスと笑われている未来しか見えない。

注目されたくないんだ、本当に。
いっそうのこと透明人間になりたい。

それでも、私は決めたから、どんなに行きたくなくても、学校に行き続けました。

影響力がある人は苦手

声が大きい人は本当に苦手です。
聴覚過敏を持っているからでもあるのですが、内容がどうであれ、声が大きければ聞こうとしていなくてもその声が入ってしまいますし、それが真実に聞こえてしまいます。

グレーははっきりしなくて不安定だから、人は白黒つけられるものを好みます。誰かの白黒思考に乗っかっておけば、それがいちばん精神的コストがかからず、安心できるんだと思います。

小学生は噂にすぐ引っ張られるので本当に厄介でした。私にとっては「なんでそういう認識になるの?」とストレスでしかありませんでした。

私は、勉強はできませんでしたが、物事や概念を認識し理解する力は長けていたんだと思います。しかし、アウトプットする力がなかったため、頭や心の中がモヤモヤするだけでその感覚を外に出せませんでした。言葉にすることができなかったのです。

内気な自分を変えたい

言葉にすることができない私は、しっかり意見を言えるようになりたいと思うようになっていきました。それは看護師になるなら絶対に必要な能力だと思ったからです。なんとしてでも話せるようにならなければ、そう思っていました。

そしてこの2年後、私は中学校で生徒会長になります。

頭の良い優等生の象徴である「生徒会長」になるなんて、親も同級生も想像できなかったでしょうし、もちろん私も思いもしませんでした。

ちょうど同級生のお姉さんが生徒会長をやっていると聞いて「すごいな〜、私とは世界線が違う」と思っていました。そのお姉さんは成績も学年トップで、部活とも両立しているのです。何でもできる人が世の中にはいるのだなと思いました。

フトーコーと言われ、馬鹿にされてきた私がそのポジションに就くなんて、誰が予想できたでしょうか。


学年に関係なくフラットに遊んできた小学生とは違い、中学校に上がったらいままで経験したことのない上下関係がありました。先輩に仲の良い人はいないですし、同学年でも私を認識している人がいるのかもわからないなか、私が生徒会長になるなんて。

普通に考えて、生徒会長になるのはまずすごいことです。学校で1人しかおらず、それも投票で選ばれるのですから。

そして、人に注目されるのも、人前で話すことも、いい子にして優等生として振る舞うのも無理だった私が生徒会長になるのは、ありえないことでした。

やり抜く力は人一倍

目標を決めたらなんとしてでもやり切る、その私の力が、当時、私に見えていたよりはるか遠くの世界まで連れて行ってくれました。そして、良くも悪くも私の環境を、人生を変えました。

それを「才能」と言われることもあります。

発達障害があると「才能を持っている天才」として括られ、うらやましがられることもあります。しかし、それは自分の特性を自分で操ることができたらの場合です。10代だったころの私には、その特性を操ることができませんでした。

第三者からしたら私の10代で出してきた成果は立派なものに見えます。しかし、実際の私は特性に振り回され、心身が疲弊しきっていたのです。

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プロフィール:まめこ
5年一貫の看護高校卒業後、林業学校に進学。現在は、病院と皮膚科クリニック のダブルワークをしながら、発達障害を持っていても負担なく働ける方法を模索中。ひなたぼっこが大好きで、天気がいい日はベランダでご飯を食べる。ちょっとした自慢はメリル・ストリープと握手したことがあること。最果タヒ著『君の言い訳は、最高の芸術』が好きな人はソウルメイトだと思ってる。ゴッホとモネが好き。夜中に食べる納豆ごはんは最強。