発達障害があることで、これまで周囲からは特別な才能があるようにとらえられ、うらやましがられることも少なくありませんでしたが、そこには、つねに周囲と自身の感覚にギャップを感じてきました。また同時に、「普通」でありたいと願い、「普通」であろうとして、自分の特性を抑えてきた戦いでもありました。今回は、その戦いの一幕の記録であり、そのなかで語られる、まめこさんのホンネのお話です。

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才能?それは扱い方次第

「才能を生かすも殺すも自分次第」といった言い方がよくされますが、私には違和感があります。それは、「才能を殺す」だけではなく、「才能に殺される」ということもあると私は感じているからです。

もしかしたら私の場合、才能といわれる部分が多動だったり、衝動だったりと、自分で抑えることが難しいものだから、「生かすか殺すか」ではなく「生かせるか殺されるか」の感覚なのかもしれないのですが……。


特別だといわれる才能を持ったお手本は身近におらず、他人からは「才能」と言われる部分を私自身が認識するのも困難ななか、その扱い方を自分で試行錯誤していかなければなりません。それには体力が必要ですし、頭も使いますし、いちばんは心が疲れていきます。

こんなにも孤独で、疲れるプロセスが必要なら、普通でいたかったと何度も思いました。普通になろうとしてこれまでずっと努力してきましたが、普通に寄ったつもりで擬態していても、周りからは「なんか独特な雰囲気」と距離を取られてきました。

私にとって「普通」は、どれだけ努力しても手に入れられず、どんなに憧れてあがいても手に入らないものなんですよね……悲しい。

手に入れることを諦めた振りをして、それでもたびたび挑戦するのですが、あえなく撃沈します。これからも「普通」に対して未練タラタラだと思います。23歳になったいまも、「普通」になりたくて、どうしてもなれなくて、悲しくて、寂しくて、泣きますからね。相当なものです。

純粋に「普通」への所属感が欲しいんですよね。占い師さんには「あなたには所属感は得られない」と言われましたが(泣)。

アニメが現実に??

人より長けた部分を持っていると、それを扱うのはとてもエネルギーがいります。漫画やアニメでとある能力を持った人が、自分自身が傷つきながらもその能力を扱えるようになっていくストーリーを想像していただくとわかりやすいかなと思います。

自分のコントロール範囲を超えて暴走することもあるため、つねに自分自身を繊細に感知して統制しています。それは定型に合わせて成り立っている社会で生きていくためでもあります。社会の構造、人々の意識が違えば、こんなにも統制にエネルギーを注ぐことはないのかもしれません。


小学生のころはたびたびヒートアップして、体調が悪くなりダウンしていました。幼いときは親が見守っていてくれるのでキャパオーバーになっても看病してもらえたのでまだよかったです。

母は、小児科医から「この子はやり過ぎちゃって急に倒れるみたいな感じになるから、お母さんがここまでって囲いを作ってあげなきゃダメだからね」と言われたそうです。そのアドバイスもあって、小学生時代は人生のなかで比較的安定していたと思います。

いまは一人暮らしなのですべて自己管理のためたいへんです(涙)。スマートウォッチを導入して、バイタルサインや睡眠の時間と質を可視化してやっと生きていける感じです(笑)。寝るのも驚くほど苦手なのです。

看護師になる過程ではメンタル不調に陥りましたが、看護師になれるだけの身体への理解とアセスメントがなければ、自分自身の生命維持がもっと難しかったんだろうなと思います。

テクノロジーが発達しているから生きていけているのか、近代化し過ぎて生きづらいのか、もうわかりません。

超能力者と私

子どものころ、アニメで観た超能力を持った登場人物に憧れていましたが、じつは私は同じ側ではないかと気づいたのは、その登場人物たちがしている努力を、私自身もしていると気づいたときです。

暴走しがちな特性を統制するためには、つねに余裕がないといけませんし、そのためには基礎体力が必要です。食べることも、寝ることも上手ではない私にとっては難し過ぎます。

自己実現していくためには、まずは生理的欲求を満たさなければならないのに、ご飯を食べることも忘れるし、楽しいことがあると興奮して寝られません。布団に入って3時間も寝られないと、もう寝るための努力に飽きてきます。着る服も気温に合わせて決めるのが苦手で、時には着込みすぎて汗だく、雨なのにサンダル、今度は薄着すぎて凍える。

春夏秋冬のたった4つの季節ですら調整できないのに、1週間のうちに気温差が激しい時期はまあ最悪です。毎日服装を変えられるほど器用ではないので、どの日かに合えばいいと考えて着込みます!

天才が出てきたり、超能力者が出てくるアニメなどの作品は、私の努力プロセスの可視化であり、精神の安定に寄与しています。特性を理解して日常生活を円滑に送るための専属アドバイザーがほしいです(切実に)。

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プロフィール:まめこ
5年一貫の看護高校卒業後、林業学校に進学。現在は、病院と皮膚科クリニック のダブルワークをしながら、発達障害を持っていても負担なく働ける方法を模索中。ひなたぼっこが大好きで、天気がいい日はベランダでご飯を食べる。ちょっとした自慢はメリル・ストリープと握手したことがあること。最果タヒ著『君の言い訳は、最高の芸術』が好きな人はソウルメイトだと思ってる。ゴッホとモネが好き。夜中に食べる納豆ごはんは最強。