特性に振り回されながら、とてつもない不安をどうにかコントロールしようと、もがき続けた学生時代。看護師になることを目標としてからは、中学では看護高校に入学するための行動に全力を注ぎ、看護高校では入学時から専攻科に上がってからの勉強に不安を感じて、周りが授業中寝ているなか、真面目に解剖学などの専門科目に取り組みました。まめこさんは自身の目標を達成できなかったらどうしようという「不安」に突き動かされて、自らの行動も変えていくのです。そして今回は、そうした行動が意外にも定型発達者の同級生がつくるコミュニティから孤立しない生き抜き戦略に繋がっていたことについてのお話です。

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コミュニケーション能力≒余裕?

「社会性がない」と言われたら、そうだよなと思います。

目的のないおしゃべり(雑談)は苦手で、特性として難しい部分もあると思いますが、私は社会性を発揮できるほどの体力を持ち合わせていませんでした。

絶え間なく身体と頭に入ってくる刺激に対処するだけで精いっぱいで、誰かと話して交流することまで精力的になれません。

しかし不思議なことに、周りに友だちがいなかったかというと、そうでもありませんでした。

情報収集としてのコミュニケーション…?

「だれだれ先輩がかっこいい」とか「誰と誰が付き合ってる」「別れた」とか、そういう話にまったく興味がなかったのですが、いじめられたりしたら内申書に響くから、ただ看護高校に入るために、興味ない話題でも穏やかに流していました。

中学のころは看護高校に入ることがすべてで、それ以外はどうでもいいと思っていました。内申書のために部活に入り、性格を変えるためにその手段として生徒会役員になりました。生徒会に入ると頭のいい先輩と1年先の受験の話ができることがすごく楽しかったです。1年後、自分はこんなことに興味もって、こんなことを努力しているんだなと。

ただ、1つ上の学年にも、さらにもう1つ上の学年にも、私の志望校を受ける先輩がいなかったのは残念でした。看護高校の情報がないなかで受験をしなければならない過酷さを中学1年生のときに知ることになりました。

2つ上の生徒会長は県内で一番偏差値の高い県立高校に進学され、1つ上の生徒会長は私立の進学校に入学されました。狭い生徒会室は、いままで関わることのなかった頭のいい人たちの思考や勉強に向ける姿勢を学べる贅沢な場所でした。


入った部活にも頭のいい子が多くいました。私は看護高校への進学を目標にクラス最底辺から脱出しようと必死だったので、学年1位を取ったことのある人や1桁順位常連組の話を聞けることは貴重でした。そして、自分の勉強方法を確立するための情報収集だと考えると、みんなとの会話にも意欲的になれました。

テスト攻略本としての私

看護高校に進学すると、1年目から勉強をがんばる人は少ないため孤独でした。周りからは「なんでそんなにがんばるの?」的な雰囲気を感じていました。先輩たちからも「低学年のときはたくさん遊んでおきな」と言われていましたが、私は専攻科生(4・5年目)が10人以上留年している姿を見て、自分のことが心配にならないわけがありませんでした。

小学校時代に「フトーコー」からスタートした私も、中学校では学年順位上位10%に入れるようになりました。しかし、看護高校では学力が自分とほとんど同じ人たちのなかで、戦意喪失せず、がんばっていかなければなりません。しかも、親や親戚に医療関係者がいる子が多く、身近に医療関係者のいない私は看護師を目指すうえで、看護師という具体性を得るための情報が圧倒的に少ない状況でした。


15歳、高校1年生で解剖学の授業が始まり、いままでの5教科の勉強の仕方ではやっていけないと感じました。やっと中学3年間で勉強の仕方を模索して作り上げてきたのに、また構築し直さなければいけません。大学生と同じレベルの授業をどうやって身につけていけばいいのだろうかと、とても不安でした。国試は5年後。クラスメイトは国試への焦りがまだ生じておらず、勉強の仕方を教えてほしいと思ってもクラスメイトのほかに15歳で解剖を学んでいる友だちはいませんでした。

そうした孤独のなか編み出した勉強法は、専攻科生になったときの大きなアドバンテージになりました。専攻科2年生で受けた模試はすべてA判定、常にクラス1位、全国偏差値も校内偏差値も70。

40人のクラスで5年もいっしょだと誰がテストや模試で上位かわかります。そうすると、勉強の仕方や私がどこが出ると思って勉強してるかなど、みんなが教室やLINEで聞いてくるようになったのでした。

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プロフィール:まめこ
5年一貫の看護高校卒業後、林業学校に進学。現在は、病院と皮膚科クリニック のダブルワークをしながら、発達障害を持っていても負担なく働ける方法を模索中。ひなたぼっこが大好きで、天気がいい日はベランダでご飯を食べる。ちょっとした自慢はメリル・ストリープと握手したことがあること。最果タヒ著『君の言い訳は、最高の芸術』が好きな人はソウルメイトだと思ってる。ゴッホとモネが好き。夜中に食べる納豆ごはんは最強。