コロナ禍に初めて病院で働きはじめ、それまで通っていた農林大学校を退学することを決意したまめこさん。寮の荷物整理に向かう電車の中で、これまでの農林大学校での学生生活を思い出し、そこで起こった出来事、体験を起点に、フトーコーだった小学生時代、看護師になることを目標に生徒会に入り成績をぐんぐん上げた中学生時代、そして高等部看護科での勉強、子どものころから感じていた自分と他の人の違い、「普通であること」に憧れて手に入れたいと思っていた日々など、さまざまな思いを振り返ってきましたが、今回から農林大学校に向かう電車の中に戻ってきました。

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腰痛は良くならない?

電車に差し込む暖かい陽射しに当たり、過ぎていく景色を見ながら、いままでの学校生活を思い返していると、徐々に陽が落ちてきました。4時間という時間は長いようで短く感じました(思い出の振り返りは長かったですが(笑))。

ずっと座っていたせいかお尻が痺れています。思い巡らせていたところから現実に戻ると、思った以上に腰が痛い。

数週間前から腰の痛みと太ももに走る電撃痛、痺れと尿失禁もありました。春休みに造園会社のインターンシップに2週間ちょっと参加して、竹や枝、落ち葉を集めて運んだり、スコップで大きな穴を掘ったりとだいぶ腰に負担がかかっていました。それ加えて、病院で働きだし、看護助手業務のなかで行う患者さんの体位変換やおむつ交換によって日に日に腰に負担がかかり、もともとあった腰痛が悪化していたのです(泣)。

前日にMRIを撮って医師からは問題ないと言われたものの、少し前までは歩いたときの振動でさえ腰が痛むレベルだったので、長時間の移動はさすがに負担が大きかったようです(第18〜22回では腰痛について書いています)。

診断の結果、腰に大きな疾患はないとわかったという精神的なこともあってか痛みは少し和らいでいたのですが、これから農林大学校までバスにも乗らなければならないことが心配でした。

久しぶりの再会

3カ月ぶりに農林大学校でしたが、戻って荷物の整理をすることを友人たちに伝えたところ、ご飯を食べに行くことになり、みんなが学校最寄りのバス停まで迎えに来てくれることになっていました。

嬉しかったです。久しぶりにみんなに会えることが。それと同時に、退学すると、こうして、こんな感覚で、集まることがもうできなくなっちゃうんだと思うとすごい悲しかったです。

駅から学校に向かうためのバスにももう乗ることがないのかなと考えると、すべての景色が見逃せなく思えました。この地域の匂いも、音も、アナウンスも、もう聞くことがないのかもしれません。そう思うと目頭が熱くなりました。

農林大学校1年生は全員寮生活ですが、2年生になるとほとんどみんな実家から通います。そのため、この日はみんなそれぞれ実家から、遠い友人は約1時間ほどかけてきてくれました。

学校最寄りのバス停に着くのが18時半。最寄りのバス停から学校まで歩くと40分ほどかかるので、友人たちにバス停で拾ってもらえるのはとても助かりました。

各々が家から車でやって来るので、相乗りするためにいったん学校の駐車場に集合しました。誰が車を運転するか、グダグダして、次に誰が誰の車乗るかじゃんけんです。そのすべてが懐かし過ぎます。

想定もしていなかった進路へ

農林大学校に入学した当初は2年間在学して卒業するものだと思っていましたし、国土交通省と造園会社のインターンシップに行き、就職先も森林組合、林野庁、造園会社あたりを検討していました。

もう病棟での看護師はできないと思って、人と関わりの少ない仕事を検討していたのです。ところが予想もしなかった感染症の流行により、病院で非常勤として働くことになり、縁あって継続して働くことができるようになり、1年早く農林大学校とお別れをすることに。

1年。たった1年です。

同級生とは踊ったり、ノリで温泉に行ったり、文化祭のポスター作ってみたり、公園で遊んだり、お金がもったいないからと言う友だちの髪を寮で切ったり、いままで無縁だった音楽をかじってみたり、学校生活の動画をYouTubeにアップしたりと本当にいろんなことを経験しました。すべてが楽しくて、すべてが面白くて、常に笑っていました。笑ってるというか、笑っちゃってる感じです。

もう楽しくて、楽しくて、仕方がない。
私が“わたし”以上に“わたし”だった。
私が“わたし”として存在した。
認めてもらった。認識した。
思い出せないほどたくさんくだらないことを話した。
看護高等学校5年分以上の会話をこの1年でした。

そんな生活がもう1年続くと思っていました。

看護師をやるということは自分で決めたことなんだけど、切り開いて進んだ先の運命が怖い。でも、この農林大学校での1年間がすごく楽しかったからまたがんばれそうとも思えて、看護の道を歩いてみることにしました。

そう思えるなんてね。
すごく、すごく大切な期間でした。

とにかく楽しかったし、経験できないと思っていた憧れの「学生生活」を経験することができました。

どんなに歳を重ねても、この1年は絶対に忘れられません。

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プロフィール:まめこ
5年一貫の看護高校卒業後、林業学校に進学。現在は、病院と皮膚科クリニック のダブルワークをしながら、発達障害を持っていても負担なく働ける方法を模索中。ひなたぼっこが大好きで、天気がいい日はベランダでご飯を食べる。ちょっとした自慢はメリル・ストリープと握手したことがあること。最果タヒ著『君の言い訳は、最高の芸術』が好きな人はソウルメイトだと思ってる。ゴッホとモネが好き。夜中に食べる納豆ごはんは最強。