新卒では看護師の仕事には就かず、農林大学校へ進学したまめこさん。コロナ禍に初めて病院で働きはじめ、それまで通っていた農林大学校を退学することを決意し、荷物整理のために2カ月ぶりに学校の寮に戻ってきました。寮に置きっぱなしでバッテリーの上がった車を直してもらい、部屋の荷物の多さに愕然としならも車に積み込みを終えて、そのまま寮で一泊して迎えた朝、外には友人や先生たちが見送りに集まってくれていました……

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人との出会いで人生は変わる

友人「おじょー!みんなで写真撮ろー!!!」
私「そうだね〜!どこかにカメラ立てかけて撮る?」

駐車場にはいい感じに立てかけられる場所がなかったため、校舎に入る階段の段差に立てかけて撮ることにしました。

友人「タイマーかけるね〜」
先生「わしらも入るんか?」
友人「もちろん!」

あらたまって記念に写真を撮ることに少々照れている様子の先生たちでしたが、何枚か撮らせてもらいました。

5年間の看護高校生活で心身のバランスが崩れてしまっていた私が、ここに来て、発達障害について話したとき、先生たちは「チェーンソーは結構音がするけど大丈夫そうか」「林業の実習で危険なときは笛を鳴らすがそれは大丈夫か」など、普段なら気にかけないところまで、私が刺激になってしまいそうなことを事前に考えて聞いてくださって、実習中も見守ってもらいました。

農業高校出身者に比べて体力がなく、疲れていると「まめこさんは心の療養をしにきたんだもんね(がんばらなくていいよ)」と言ってくれて、学校がピックアップしたリストにないところにインターンに行きたいと私が言ったときはその会社に連絡していっしょに交渉してくれたりもしました。

そうした経験をして、人って、こんなに心を託してもいい存在なんだなと思えました。看護学生のときはどんなにつらくても、自分で律してどうにかして立ち続けなくてはいけなかったので。

そういう寛大さ、温かさに囲まれていたから、また看護師に挑戦してみようと思えたんだと思います。新卒で看護師を選ばなかったときに、もう看護師にはなれないと思っていたのに。

無理して自分を律し、看護師に挑戦するぞ!!という感覚ではなく、身体をこわばらせることなく、コロナが流行ってきたこときっかけに看護師に挑戦してみようかなと意欲が出たことが、私自身、何よりも嬉しかったです。

「やっぱり看護師をしたい、挑戦だけでもしてみたい」

それは私の純粋な気持ちでした。
農林大学校での1年がなければ、この気持ちは浮かび上がってこなかったと思いますし、浮かび上がってきたとしても怖いからと気持ちに蓋をしていたと思います。でも、私は傷つくことも覚悟して挑戦してみようと思えたのです。

同級生にも、先生にも恵まれました。
人との出会いによって、人生は大きく変わるのだと知ることができました。

「好きな自分」に戻れる場所

友人「これ、餞別の品!(笑)」
私「えー!ありがとう!来てくれただけでもうれしいのに!!」
友人「まじでがんばってね!応援してる!」
友人「また遊びにきてね!!車出すから!」
私「ありがとう!」

副担任「あの〜これ僕からなんですが……」
私「ふぇ〜先生まで!!」
副担任「タオルです。また山に登るときに使ってください」

いままで誰かを送り出す経験はあっても、餞別の品をもらうのは人生で初めてで、終始驚いていました。

私は1人外へ出て行ってしまうけど、みんなはあと1年ここで過ごしていると思うと、いつでも戻れる場所があるなと思えました。私は変わってしまうかも知れないけど、みんなは変わらずここで笑っていてくれるんだなと。

仕事柄、緊迫する場面に遭うこともあり、自分の表情や身体が硬くなってしまいそうです。でもみんなに会えば、私はここで過ごした「好きな自分」にすぐ戻れるんだと思えました。変わっていく自分が怖くなったら、ときほぐしに来よう。


友人「おじょー、そろそろじゃない?結構時間かかるんでしょ?」
私「そうだね〜100㎞以上あるから途中でサービスエリアに寄って、休みながら帰るよ」
友人「天気もなんか良くなさそうだから気をつけてね!」

私「先生たちも休みの日なのに来てくれてありがとうございました!」
先生「いやいや、まめこさんの旅立ちの日だからね。身体に気をつけてね」
私「ありがとうございます」

友人たちはこれからご飯に行くらしく、相乗りで学校を出て行きました。また会うっていう感覚があるからこんなにサラッとしているんだなと感じました。

その感覚が伝わってきたのもすごくうれしかったです。

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プロフィール:まめこ
5年一貫の看護高校卒業後、林業学校に進学。現在は、病院と皮膚科クリニック のダブルワークをしながら、発達障害を持っていても負担なく働ける方法を模索中。ひなたぼっこが大好きで、天気がいい日はベランダでご飯を食べる。ちょっとした自慢はメリル・ストリープと握手したことがあること。最果タヒ著『君の言い訳は、最高の芸術』が好きな人はソウルメイトだと思ってる。ゴッホとモネが好き。夜中に食べる納豆ごはんは最強。