新卒では看護師の仕事には就かず、農林大学校へ進学したまめこさん。コロナ禍に初めて病院で働きはじめ、それまで通っていた農林大学校を退学することを決意し、荷物整理のために2カ月ぶりに学校の寮に戻ってきました。寮での荷物整理を終え、一泊して翌朝に友人や先生たちに見送られて出発しました……

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大雨の高速道路

久しぶりに友だちや先生に会ってパワーをもらいました。
私はこれから1人で100km以上運転して帰らなければなりません。車を運転し始めて1年。初めて県外に出て、初めてこんなにも長距離を走ります。途中の首都高速は無事に乗り越えられるのでしょうか。

これから出発だというのに、雲行きが怪しくなる予感。不安もありますが、とにかく車に乗って出発です。


30分ほど下道を走り、ドキドキしながら高速道路に乗ると、驚くほど空いていました。それでも不安を感じながら運転をしていると雨がパラパラと降り始めました。雨の日の運転には慣れておらず、止んでくれと願えば願うほど雨は強くなっていきます。

いつのまにか雨は土砂降りに。ワイパーを動かしても、動かしても、視界が良くなりません。空いているおかげで衝突の危険性は低そうですが、怖いので速度は60〜70kmです。時折、追い越し車線を車が猛スピードで走っていきます。こんなに視界が悪く、ブレーキも利きにくそうな日に、怖くはないのでしょうか。


1時間ほど走り、フードコートのある広めのサービスエリアに入ることにしました。ところが、スピードを落とそうとブレーキを踏むといつもより利きません。

「やばい」

心臓の音が耳元で聞こえます。

高速道路に入ってからアクセスを踏む、緩めるの繰り返しでスピードを調節していたため、しっかりとブレーキを踏むのは初めてでした。大雨と大量の荷物によりいつもとブレーキの利きが違ったようです。前に車がいたら危なかったかもしれません。


心臓の音が鳴り止まないままサービスエリアに車を止めました。朝ごはんを食べずに出発してお腹が空いていたのに、その感覚もどこかへいってしまいました。

車の中にいると、叩きつけるような雨音がより一層不安を大きくさせるため、これはよくないと思いいったんトイレに行くことにしました。

外は傘では防ぎきれないほどの大雨です。傘を使わずに走ろうかと思いましたが、こういうときは落ち着いて歩いていくべきだと思い直しました。

車の運転が怖い

トイレを終えて、フードコートのある建物に向かいます。お土産コーナーを通り、フードコートを一周、隣のパン屋さんを物色しても食欲はわいてきません。本当に怖かったのです。

車の運転は本当に向いていません。この1年で何度も事故りそうになり、生きているほうが不思議かもしれません。

コンビニの駐車場でエンジンがかからなくなり、ネット検索でも解決策がわからず業者さんに来てもらったら、車を少し見て「これじゃ動かないよ」とレバーを動かしたらエンジンがかかったり、雨の日に「いつもに比べてまったく前が見えないな」と思っていたらワイパーを動かしていないことに気づいたり、赤信号で停車中に「赤は止まれだっけ? あれ、進んでいいんだっけ?」と混乱してしまったこともあります。車の運転は、私にはマルチタスク過ぎるのかもしれません。

農林大学校では、路線バスは夕方までしてか動いておらず、そのバス停までも歩いて40分かかるような場所に住んでいたので仕方がなく車に乗っていましたが、こんな場所だから、この運転スキルでも事故なく過ごせたのだと思います。地元に戻ったらできるだけ車には乗りたくありません。

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プロフィール:まめこ
5年一貫の看護高校卒業後、林業学校に進学。現在は、病院と皮膚科クリニック のダブルワークをしながら、発達障害を持っていても負担なく働ける方法を模索中。ひなたぼっこが大好きで、天気がいい日はベランダでご飯を食べる。ちょっとした自慢はメリル・ストリープと握手したことがあること。最果タヒ著『君の言い訳は、最高の芸術』が好きな人はソウルメイトだと思ってる。ゴッホとモネが好き。夜中に食べる納豆ごはんは最強。