新卒では看護師の仕事には就かず、農林大学校へ進学したまめこさん。コロナ禍に初めて病院で働きはじめ、それまで通っていた農林大学校を退学することを決意。2カ月ぶりに学校を訪れて寮の荷物整理をし、一泊して翌朝に友人や先生たちに見送られて出発しましたが高速道路では大雨に、首都高速では車線の多さとナビの指示でパニックになりながら、ようやく地元の知っている道まで来ました。母にもう少しで着くとLINEをしたら駐車場で父が待っていると返事が来て困惑しました。父とは中学生以来、ほとんど話をしたことがないのです……

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父が駐車場で待ってる?

下道を運転しながら、父が駐車場で待っているとはどういうことだろうと考えていました。

まともに話したのはいつなのかも覚えていない父が雨の中、駐車場で待っている光景を想像するだけで気まずいです。

雨が降ってるし、やっぱり家で待とうと思ってくれていたらいいのに。

運転はまあまあできても、バック駐車は大の苦手です。農林大学校の周囲の駐車場はどこも広くてバック駐車が必要になることは滅多にありませんでした。寮の駐車場はバック駐車が必要なものの、誰にも見られないため何度切り返そうが恥ずかしくありません。

父が見ているなかで苦手なバック駐車をするなんて、気まづさのダブルパンチです。


いよいよ家が近くなり、手に汗をかき変な緊張感が高まってきます。この通りに駐車場があるはずと進んでいくと、ビニール傘を持ち片手をポケットに手を入れている人が立っているではありませんか。

なんてこった。
全然前に進みたくありません。
自然とアクセルを踏む足がゆるんでいきます。

しかし進みたくない気持ちとは裏腹に車は少しずつ進んでしまうもので、そのうち父は私の車に気づき、手を振ってきました。

手を振るような性格だったっけな。

仕方なく近づき、周りに車が来ていないことを確認して駐車していきます。右側には父の車があり、幸いなことに左側は空いていました。ハンドルを右に切り、ゆっくりバックしていきます。これくらいで逆に切り返していけばいいかなと勘で動かして、いったん前に出て再度バックします。右に寄ってしまったものの、線の中には入った気がしたため、そのままエンジンを切ります。ダサい姿を見られずにすみました。

「おかえり~運転大変だったでしょ?」と言う父に「そんなに」とぶっきらぼうに返し、傘を受け取ります。

父「荷物は明日でもいいんでしょ? 雨だし必要なものだけ……」

最初からそうするつもりだったと言わんばかりに後部席から無言でバックを取り、ドアを閉めます。

父「無事帰って来れて、安心したよー」

テンションがあからさまに高く、私が帰ってきたことが嬉しいのだろうなと思いながら、この生ぬるく落ち着かない空間をできるだけ早く終わらせたくて、進む足が早くなります。

私のこだわり? 母のこだわり?

ガチャ。

母「おかえり~」

荷物を廊下に置き、自分の部屋に入って外着から部屋着に変え、それまで着ていた服を洗濯機横のカゴに入れます(私の家はとても狭いのでこの動作で10歩ほどしか歩いていません。なんせ玄関から1歩で私の部屋なので。廊下も2mもありません)。

父「雨降ってるよ、かーちゃん。ちょっと濡れちゃったな〜。まあ、まめこが無事に帰ってこれたことだし、いいかいいか~」

今日は明らかに言葉が多いです。

私「ただいま~」

私は昔から玄関で「ただいま」と言うことに抵抗があり、リビングに入る手前で言うことにしています。これもASD由来のこだわりなのでしょう。母には「玄関入ってすぐに言ってくれないと変な人が入ってきたかと思うでしょ!」と何度も言われていますが、私は頑なに玄関で言わないことを貫き通しています。

先ほど洗濯カゴに入れた靴下も洋服も裏返しのままです。これも昔から「裏返したままにしないで」と何百回と言われたものの洋服を脱いだ裏返しの状態を直す意味がわからず、いまだにそのままです。

裏返しのまま洗って干して、裏返しのまま仕舞えばいいのでは? そして着るときに私が直せばいいのではないか。お母さんこそ裏返しを直したいというこだわりが強いのではと私は思っているので、一生対立しています。

母「雨大丈夫だった~?」
私「ブレーキが普段みたいに効かないし、大雨すぎてワイパー動かしても前見えないし、よく生きて帰ってこれたなって感じ~」
母「怖い~無事でよかったよ、ほんとに〜。荷物は明日やるの?」
私「今日は雨だし明日やる。明後日が仕事だから明日終わらせたいな~」

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プロフィール:まめこ
5年一貫の看護高校卒業後、林業学校に進学。現在は、病院と皮膚科クリニック のダブルワークをしながら、発達障害を持っていても負担なく働ける方法を模索中。ひなたぼっこが大好きで、天気がいい日はベランダでご飯を食べる。ちょっとした自慢はメリル・ストリープと握手したことがあること。最果タヒ著『君の言い訳は、最高の芸術』が好きな人はソウルメイトだと思ってる。ゴッホとモネが好き。夜中に食べる納豆ごはんは最強。