新卒では看護師の仕事には就かず、農林大学校へ進学したまめこさんは、コロナ禍に初めて病院で働きはじめ、農林大学校は退学することに。病院勤務は週3日、働き始めて2カ月が経ちました。看護助手業務からスタートして、現在は緊張や不安を感じながらも周囲の温かい声かけにも助けられ、入浴介助や食事介助を担当していますが、今朝は出勤してすぐナースステーションでの申し送りに参加して、あいさつをしました。そしてこれまでになかった、入浴前の患者さんの準備を担当することになりました……
師長とともに入浴介助の準備
シャカ、シャカシャカ、シャカシャカ。
入浴介助のときに着る撥水性のエプロンが擦れる音が聞こえてきます。
師長「まめこさん〜、準備できたーー?」
私「できてます」
本来撥水性のエプロンを着て、長靴を履いて動くとズボンとエプロンが引っ付いて歩きづらさが増します。でも師長さんは、そんなこと関係なしにスタスタと歩いて行きます。
師長「ほらほら〜、まめこさん〜、患者さん出してくよ〜」
師長「今日お風呂ですからね〜、準備していきますよ〜」
患者さんに声をかけながら、頭側が上がっているベットを平らにして、コンセントを抜き、患者さんの背中や脚に入っているクッションを抜いていきます。
師長「これ持っていくんだっけ?」
看護助手「あ、そうです。師長さんすみません」
師長「はいはい〜」
特浴後、患者さんの体を拭いて寝衣を着せるときに塗る保湿剤などが入ったカゴをベッドに乗せます。看護助手さんたちがだいたい患者さんを特浴室の前まで連れて行くのですが、朝のオムツ交換が忙しくて終わっていなかったりすると看護師も手伝っていきます。師長さんはすべての行動が早いタイプなので、助手さんもタジタジです。
師長「はい〜、動かすよ〜」
はじめての摘便に挑む
廊下に数名、ベッドごと並べました。
師長「助手さーん! これぐらい出せば大丈夫? もっと出す?」
助手「大丈夫ですー! すいませーん! ありがとうございますー!」
働いて驚いた、大声文化です。
病棟の構造上、端から端までが遠く、近くまで行こうとするとけっこう歩かなくてはいけないので、みんな大きな声で話して物理的距離をショートカットしています。
師長「じゃあ、始めちゃうよーー!」
人手不足の看護助手さんたちは特浴室に来る余裕がまだなさそうなので、私と師長さんの2人でベッドから特浴用のストレッチャーに患者さんを移していきます。そこから浴槽近くまでストレッチャーを移動させ、そこで患者さんの寝衣を脱がしていきます。
おむつを開けると、お小水のみで便は出ていません。
師長「浣腸したのに、便出てないな〜、摘便するか! まめこさんって摘便したことあったんだっけ?」
私「ないです……」
師長「じゃあ、やってみようか!」
はじめてのことは、こうやって唐突にくるのです。心理的準備する暇もなく、師長さんは患者さんに声をかけていました。
師長「お通じ出てないので、肛門に指を入れてかき出しますね〜」
師長「はい、やってみていいよ〜」
摘便は座学で習ったものの、実際に人の肛門に指を入れるのは初めてです。感覚過敏を持っている私はできるのでしょうか。感触がめちゃめちゃ気持ち悪かったら、どうしよう。
でも、覚悟を決めるしかない。そして指を肛門に入れました。
あーーー変な感じ、、、
なんかモニョモニョする(震)
ふぇ〜〜
私はできるだけ表情に出ないようにしながら指を動かしていきます。
師長「かき出すときは、指の腹側じゃなくて反対側に便を乗せる感じね」
狭い空間の中で、指全体がモニョモニョとした柔らかいものに囲まれています。がんばってかき出そうとしてもなかなかうまく外にかき出せません。
指が、攣りそうです。これまでの人生のなかで、こんなに人差し指だけに集中したことあったでしょうか。
苦戦しながらも指を動かし、少しずつ外に出していくと、徐々に指を囲んでいたモニョモニョとしたものが減っていくのがわかります。
摘便を終わらせるタイミングはどの感覚なんだろう。いまのこの感覚は、かき出せるものがもうなくなったということなんだろうか。
師長「もう全部出せたー?」
私「初めてなので、これが全部出せたのか感覚的にわからないです……」
師長さん「そっかそっか(笑)摘便始める前よりだいぶお腹が柔らかくなったから、それくらいでいいと思うよ〜」
一応、無事初めての摘便を終えました。