新卒では看護師の仕事には就かず、農林大学校へ進学したまめこさんは、コロナ禍に初めて病院で働きはじめ、農林大学校は退学することに。病院勤務は週3日、働き始めて2カ月が経ちました。看護助手業務からスタートして、現在は緊張や不安を感じながらも周囲の温かい声かけにも助けられ、入浴介助や食事介助を担当していましたが、業務内容も徐々に変わりつつあり、褥瘡の処置にもかかわりはじめました。そんなとき突然、所属フロアを異動することに! さらに、病院勤務に慣れるにつれて、あらたな業務も担当することになりそうです……
部屋持ちになったら……
先輩「まめこさん、部屋持ちしちゃいなよ!」
私「いやいや、できないですよ……」
先輩「できるよぉ〜、そんなにむずかしくないよ! ね〜師長、まめこさんもうできるよね〜」
師長「笑、笑、そうね〜」
入職して8カ月目の12月、先輩と師長さんと休憩室でいっしょになったときに、そろそろ部屋持ちをすることになるなと感じましたが、師長さんは私の動向を伺いながら、負担にならないように先輩の話をうまく流してくれているように感じました。
私のメンタルは秋冬にぐっと悪くなります。日照時間が減ると鬱々としてきやすい私は、とにかく働きながら無事に秋冬を乗り越えることだけを考えていました。
農林大学校に通っていたときでさえ、日照時間が減ってくると、少しでも太陽を感じたくて昼食時間を減らして外で日向ぼっこしたり、授業終わりにコンクリートに寝転がって地面の熱から太陽を感じたりするほどでしたから。
仕事を始めてからは日中に直接、日に当たることができなくなった私は、その状態で秋冬を乗り越えられるかとても心配だったのです。
師長「そろそろさ、冬も終わってきたことだし、部屋持ちどうかな〜と思うんだけど、どうかな?」
私「(ついにきたか。できるだけ先延ばしにしてきたけど、そうだよな、やらないとだよな……)4月くらいからとかでもいいですかね?」
師長「じゃあ、4月からにしようか!」
部屋持ち業務をするにあたって、できるようにならなければいけないことがあります。
それは、採血とルート確保、点滴作りです。
看護師の方々からしたらあり得ないことだと思いますが、入職からこの8カ月間、部屋持ち業務が視野に入り始めるまでいっさい点滴を作ったことがなかったのです。出勤して部屋持ち看護師が点滴を詰めているとき、フリー業務担当の私は経管栄養の準備をしていたからです。午後の抗生剤作るのもすべて別のフリー業務看護師がやってくれていました。
私は薬剤関係に触れるのがとても怖かったのです。師長さんとしても発達障害を持つ私に任せるのは同様に怖かったのではないかと思います。
インスリン1単位を1mLと認識していたために100倍量を投与した事例を学生時代に知り、こうしたミスを私もしてしまうのではないかと心配でした。だから、できる限り点滴を詰めることに関わりたくなかったのです。
でも部屋持ち業務をするなら、できなくてはいけません。
壊滅的に不器用
先輩「じゃあ、このアンプル開けてね」
私「えっと、この方向に曲げればいいんですよね?」
印が付いているところを目安に反対に力を入れます。ですが、まったくアンプルはカットできません。もっと力が必要なのかと力を入れますが、ちっともです。
腕がプルプルするほど力を入れている私を見た先輩が声をかけてくれました。
「なにやってのよ(笑)! そんなに力を入れなくてもカットできるものだから、ほら!」
パキッ
魔法かな?
私があんなに苦戦していたアンプルがいとも簡単に開いていました。力がそんなにいらないことはわかったけども、どこに力をかけたらいいのかまったくわかりません。
違うアンプルを渡されて再挑戦しますが、さっきと同じです。頭の中ではイメージはできます。でも実際の手元だとできないのです。なぜ先輩たちはスパスパとやれるの?
この日は1個もカットできず、別日にも挑戦しましたが3連続でアンプルで指切って怖くなり、それ以来避け続けました。
そして避け続けに続け、アンプルを安定的にカットできるようになったのは3年目とか4年目で、大きなアンプルをカットできるようになったのは5年目になってからです(笑)。最近まで1人で点滴づくりすらできなかったのです。あり得ないですよね。笑っていいのか笑えないことなのか(笑)。カットできない私は先輩や後輩に毎回やってもらっていました。
手先不器用なのは発達障害由来なんですよね。
なので小さいころから折り紙や縫い物も壊滅的にできませんでした。不器用なことは生まれつきと知っていたことと、先輩も後輩も嫌な顔せずに助けてくれたから、アンプルカットできなくても心折れず看護師続けてこられました。
人と違う特性を持って生きるために必要なのは、「自己分析」と「言語化」、「環境」の組み合わせによると思います。私も環境が違ったら自己肯定感も自尊心ズタズタ、自己効力感もまったくなくなっていたのではないかと思います。