農林大学校に退学届の提出や寮の荷物整理に向かう電車の中でこれまでの学校生活を思い起こしています。県内で唯一の看護科がある高校に入るために真面目に中学校生活を送ったものの、いざ高校に入学してみたら校則がすごく厳しいうえに、授業や課題、実習に追われ、思い描いていたキラキラした高校生活とはかけ離れた現実がありました。看護師になることが第一優先と自分を納得させ、部活や友だちと遊ぶことは諦めて過ごした高校時代。もう憧れの学校生活は憧れのまま終わると思っていたところ、農林大学校への入学で再び学生生活を送ることとなり……
優先順位
看護師になるための勉強を最優先するため、高校生時代は活動日数の少ない部活に入り、友だちと放課後に遊ぶこともありませんでした(文化系の部活に入っていたものの、半年で幽霊部員になりました)。大会会場が看護科校舎だったため「ウチからも出場しよう」と先生に声をかけられて作った部活の研究で全国大会に行ったこともありますが、それはまたいつか書きますね。
活動日数の多い部活と両立している同級生もいましたが、実習終わりに部活に行ったりととてもたいへんそうで、学校から家までが遠くて体力にも自信がない私は部活に入ることを選べませんでした。
本当はワンダーフォーゲル部かダンス部に入りたかったんですけどね。私が通う高校はとにかく部活が強かったので、全国大会に出るのが当たり前、なかには国際大会に出ている人もいました。
楽しそうな同級生を見て、羨ましさしかなかったですね。部活に入れば普通科に通う人と仲良くなれるチャンスもあったのですが、幽霊部員の私はほとんどコミュニティが広がることもなく3年間の高校生活を終えました。
なので、私にとって部活は憧れなのです。
はじめての学生“生活“
農林大学校では、野球、フットサル、バスケ、テニス、バレーボールなどの体育会系部活と軽音の文化系部活がありました。
新入生歓迎会でいろんな部活があることを知ったものの、同じ寮の部屋の子は部活に入る予定はなさそうだったので、体験入部するなら1人で行かなければなりませんでした。
私はとても小心者です。あれだけ高校時代の部活に憧れを持ち、できなかった虚しさを感じていたのに、「部活はやりたいけど1人で行くのは怖いな」という気持ちが膨らみます。
でも、いま体験入部に行かないとこのままでは入るタイミングを逃してしまう、チャンスを潰してしまいます。
そして体験入部初日。
私は行くことができませんでした。
同級生もどういう人たちかわかっていないなかで、先輩と関わるなんてもっと怖かったのです。
誰か今日体験に行ったのかなと聞き耳を立て、周りの子の話を聞いていると「バレーボール部に行った子がいるらしいよ」と聞こえてきます。
なんてタイミング!
具体的な名前が出てこなかったものの、女の子が体験に行っていることを知れただけでも大きな情報でした。バレーボール部は人数が少なく男女混合だったので、体験に行く心理的ハードルが高かったのです。
その後も同じ寮の子たちで、どこへ体験に行ったか、入るかどうするか話しているなかで「私バレーボール部に行ったよ」と言う子に出会いました。
なんという偶然!
私はこのチャンスを逃すまいと「私もバレーボールに興味あるんだよね」と話しかけました。すると「え!そうなの!?次はいっしょに行こうよ」と言ってくれたのです。小心者の私にとってその言葉は、女神さまの声に聞こえました。ありがたや、ありがたや~。
緊張の体験入部
授業が終わって運動のできる服装に着替えます。
部活ができるんだというワクワクした気持ちと、どうか期待を裏切らないでくれという気持ちもありました。
私「こんな感じの服で大丈夫かな?」
女の子「大丈夫!大丈夫!」
寮から体育館が見えます。
ボールの弾む音が聞こえてきます。
体育館はドアが閉まっているため、どんな人が中にいるのかわかりません。怖かったらどうしようと思いつつ、ここまできたからにはとりあえず中に入ろうと自分を奮い立たせます。
ガチャ
先輩たちの視線が私に向けられます。
私は息を潜めます。
緊張する間も無く、次の瞬間にはハイテンションの先輩の姿がありました。
先輩「えーー! 1年生来てくれたよ!! やばい嬉しい!!」「バレーボールやったことある? なくても大丈夫だよ! 僕も未経験者だから!(笑)」
この先輩は後に部長ということが判明するのですが、この時はめちゃくちゃテンションが高くて、ぴょんぴょん跳ねながら嬉しさを表していました。そのジャンプ力から身体能力の高さが伺えました。
これまでの緊張が嘘みたいにほどけていきます。
毎回練習に来ている先輩はおもに 3人。気が向いたら来る人が数人いるようです。
それに私たちよりも早く体育館に来ていた同級生らしき人がいました。この子が後に私のコミュニティを広げる鍵となるとは、このときは思ってもいませんでした。
こうして私はバレーボール部に入部することになったのです。
5年一貫の看護高校卒業後、林業学校に進学。現在は、病院と皮膚科クリニック のダブルワークをしながら、発達障害を持っていても負担なく働ける方法を模索中。ひなたぼっこが大好きで、天気がいい日はベランダでご飯を食べる。ちょっとした自慢はメリル・ストリープと握手したことがあること。最果タヒ著『君の言い訳は、最高の芸術』が好きな人はソウルメイトだと思ってる。ゴッホとモネが好き。夜中に食べる納豆ごはんは最強。