このたびメディカのセミナーオンライン『新生児呼吸管理のすべて』をリリースいたしました。
講師の中西秀彦先生(北里大学医学部附属新世紀医療開発センター 先端医療領域開発部門新生児集中治療医学教授)にこの動画に込めた“思い”について語っていただきました。

――動画中に、中西先生ご自身による手書きイラストがふんだんに登場して理解を助けてくれます。絵の上手さもさることながら、お風呂や電車など例えが本当にわかりやすいです。どういうときに、例えの発想を思いつかれるのでしょうか?

学生や研修医を指導するにあたり、言葉だけの説明ではなかなか伝わりにくいことも多々あります。ときに教科書を読んでみても、いまいち病態が理解できないことも多く、専門用語ばかりで説明されると、なぜ、もう少しわかりやすくかみ砕いて説明ができないのだろうかと思うことは、医師になってからもありました。若手医師、看護師らが忙しい業務の中で字面ばかりの教科書をじっくり読むことも大切なのかもしれませんが、もう少し短時間でさくっと理解できるような資料がないかと考えたときに、「イラスト」は時に威力を発揮します
特に、学生に講義をしているとわかりますが、難解な言葉ばかりだと、はっきり言って誰も興味をもってくれません。興味がないということは、将来新生児医療を選択してくれる人材の確保にも関わってくることなので、大変深刻です。というと、やや大げさですが。。。こういった経緯が、イラストを描くきっかけでした。

今回のイラストの多くは、もともとメディカ出版で私が連載していた原稿の中で使われていたものです。当初、私が疾患についてイメージしたイラストを担当編集者に送って、それをもとにプロのイラストレーターが本番用に新たにイラストを作成するはずだったのですが、私のつたないイラストに登場するキャラクターの表情が良いのでそのまま掲載しては、との編集者のアイデアから生まれたものです。おかげで、そこから毎月2年間にわたり、締め切りに追われながら大変苦労しましたが、多くの疾患キャラクターが誕生しました。昔から、物を何かに例えたり、日常生活の中でも、人間でないものにその時の状況を想像して、セリフをつけたりすることが好きだったように思います。

病態を擬人化することは楽しい作業です。例えば、肺水の吸収過程は、出生に備えて、胎内でのホルモン分泌の変化や肺胞上皮細胞の機能変化などによって、出生前から準備されたものですが、この“準備”という過程を想像すると、肺胞の一つ一つが、出勤前の準備のためにシャワーを浴びて汗を流す新人社員に思えました。新生児の生後の適応過程や、疾患の病態は、とても理にかなっていて、人間の神秘を感じさせてくれます。どの過程にも意味があって、自身がその中の一員になったと想像したときに、簡単にイラストのイメージがつきやすかったです。

――1作目の「新生児のからだのみかた」がたいへん好評をいただいております。2作目の「新生児呼吸管理のすべて」は、1作目を視聴してからの方が理解しやすいでしょうか?どちらから視聴しても問題ないでしょうか?

特に問題はありません。
今回は新生児呼吸管理について特化した内容のセミナーなのですが、やはり、最初の導入部分の講義として、生理的特徴の理解は重要なので、前回の「新生児のからだのみかた」の中でも解説した呼吸関連の解剖学的特徴や機能的特徴についての解説も挟んでいますので、今回のセミナーを聴講するだけでも学習することができます。前回のセミナーを見ていただいた方には、繰り返しにはなる部分もあるのですが、そこは改めて「復習」として視聴していただけると幸いです。

もちろん今回のセミナー内容は、呼吸関連に特化した内容ですので、もし他の全身状態のことも知りたいのであれば、たくさんのイラストを盛り込んでわかりやすく解説しております1作目の「新生児のからだのみかた」もご視聴いただけますと幸いです。

――医師向けに指導されることが多いと存じますが、看護師向けに講義される際に、気をつけていらっしゃることがあれば教えてください。

日本の新生児医療を支える大部分は、看護師の観察力だと言っても過言ではないと私は思っています。担当している児がいつもと違って何かちがう、と感じることがきっかけで、早期診断につながり、児の状態改善につながったことが多々あります。それほど、すごい貢献をしているわけです。ただ受講してくださる方には、新人看護師も多くおられますし、自身の意志とは別に突然新生児部門に配属になった方もおられます。その場合、どうしても普段の臨床現場の中では、萎縮してしまったり、指示受けに奔走したり、本来NICUで感じてほしい「新生児医療のすばらしさ」を忘れがちになってしまっているのではないかと思います。そこで、心がけていることは、「新生児医療を支えているのは、あなた方なのですよ」と、自身の仕事に誇りを持ってほしいということを伝えるようにしています

そして、医師と協働していくためにも、ただ単に「何となくおかしいです」というだけの報告ではプロではないので、講義では、基本的な病態解説、鑑別疾患だけでなく、医師に正しく報告するためにも、どのような情報を提供すべきかということや、その情報をもとに医師がどのように検査を進め、治療を進めるのかという、その先のことも伝えるようにしています。そうすることで、自身の観察力から得た病状報告が、どのように役立っているのか理解し、自信へとつながってくれるものと期待しています。

――最後にこの動画の受講者(NICUナース)へメッセージをお願いします!

いつもご視聴ありがとうございます。
日々の臨床に直結できるように、できるだけわかりやすく、イメージが付きやすいように解説していますので、現場でのケアに生かしていただくことができれば、セミナー講師としてこれほど嬉しいことはありません。
コロナ禍のため、ライブとは異なり直接みなさまのお顔をみることができず、質問にも直接お答えすることができなくて、残念ですが、オンラインセミナーならではの、利点もたくさんあると思います。
視聴していただきましたら、いろいろコメントをいただけるとありがたいです。
それを基に、内容をさらに強化して、またアップデートしたセミナーを提供させていただきたいと思います。

中西秀彦
北里大学医学部附属新世紀医療開発センター
先端医療領域開発部門新生児集中治療医学教授





『新生児呼吸管理のすべて』

▼プログラム 【収録時間:約240分】
①まずはおさらい! 新生児の呼吸生理
●胎児期から新生児への変化
●呼吸確立に必要な生理適応
 ・呼吸様運動 ・肺の構造の成熟 ・肺の機能の成熟
●成人と何が違うのか?

ここでは、児が子宮内環境から子宮外環境にどのように適応していくのかを、イラストや動画を交えて解説します。呼吸管理やケアを実行するためにも呼吸生理を学びましょう。

②スラスラ読める 血液ガス所見
●アルカリ血症と酸血症
●アルカローシスとアシドーシス
●pHの変化
●アニオンギャップって?
●代償性反応とは?

血液ガス分析結果は、児がわれわれに示す訴えそのものです。あなたが新人ナースであっても、これらの結果を正しく評価して、適切な呼吸管理やケアをできなければなりません。ここでは、血ガス所見がスラスラと読めるようになるコツをわかりやすく解説します。

③イラストと図解で納得! いろいろな呼吸管理方法と人工呼吸器モード
●代表的な新生児呼吸管理法
 ・酸素投与 ・呼吸促進薬 ・サーファクタント投与 ・一酸化窒素吸入療法 など
●人工呼吸器モード
 ・IMV ・SIMV ・A/C ・VTV ・HFO ・n-CPAP ・HFNC
●グラフィックモニター

ここでは、人工換気、人工呼吸器のしくみについて、イラスト・図解を交えて解説します。苦手意識を克服しましょう!

④どうする? 何する?新生児呼吸疾患これだけは
●呼吸窮迫症候群(RDS) ●新生児一過性多呼吸(TTN)
●胎便吸引症候群(MAS)
●エアリーク症候群
●肺低形成
●未熟性無呼吸発作
●慢性肺疾患(CLD)
●人工呼吸管理中に急にSpO2が低下したら?

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