来る6月29日に第3回中医学検定が開催されます。中医学検定の発起人であり、医師や看護師、医学生を対象とした講義など、中医学を広めるために精力的に活動を行っている今中健二先生をお迎えしまして『「中医学検定」【2級】【3級】受検対策ワンポイントセミナー』を開催いたします。
講師をおつとめいただく今中健二先生(中医師/神戸大学大学院非常勤講師/中国医学協会会長)に、中医学検定やセミナーについてお話を伺いました。
――中医学検定とはどういうものなのでしょうか?
今の日本では中医学をオープンに学べる場が少ないので、中医学を包括的に学べる機会を作ろう! という発想から生まれた検定になります。
たとえば鍼灸学校に行けば東洋医学について勉強できますし、鍼灸師という国家資格も取得できます。とはいえ、働きながら学校に通うのはなかなか難しいという方が多いのではないでしょうか。それから、中医学の中には漢方薬もありますが、これは製薬企業さんが医師を対象に紹介する機会も多いので、なかなか私たちの目に留まりにくいです。しかも、すべての漢方薬を学ぼうとすると、膨大な時間が必要になります。「目の前の患者さんにどの漢方薬を使ったらいいのか」そこにたどり着くまでに、かなり時間がかかってしまいます。
他にも薬膳料理という切り口もあります――そういったものの中には、いろんな情報が小出しになってしまうところもあり、なかなか体系的に学ぶのが難しいです。
だからこそ、まずは中医学をざっくり全体的に学ぶための入口として、「中医学検定」を作りました。そして、今は私自身もセミナーを通じて教えています。また、私だけではなく、他の先生方もいろいろな形でセミナーを開催されています。
ただ、その中には学んだ後、「本当にこの知識・技術を患者さんに使っていいのかな?」と不安になる方もいらっしゃいます。そこに一つの基準となるハードルというか、自信につながるものを設けたほうがいいという意味でも、「検定」という仕組みは必要だと思っています。
修了検定のようなものは各セミナーにもありますが、それだけだと、やっぱり偏った学びで終わってしまうこともある。だからこそ、誰でも受けられる標準的な「物差し」になるような検定があったほうがいいだろうと思って始めました。
この中医学検定に合格すれば、「あ、この人は一定のレベルに到達しているんだな」とまわりにもわかりますし、ご自身も看護の現場などで自信を持って提供できる、一つの目安になるんじゃないかと思っています。
――実際、この中医学検定は、どういった職種の方が受験されることが多いのでしょうか?
中医学を学ばれている看護師さんはもちろんですが、薬剤師さん、登録販売者さん、そして医師もいらっしゃいます。あとは、セラピストの方の参加も非常に多いです。
中医学を取り入れている職種の方というのは、薬膳料理の先生や、運動養生をされている気功の先生だったり、あるいは経絡(けいらく)治療などを行っているセラピストさんだったりと、実にさまざまです。「自分の中医学の知識・技術が、どのレベルに達しているのかを確認したい」という思いで、この検定を使っていただいているようです。
――2級と3級の違いは?
2級、3級とありますが、将来的には1級も出てくる予定です。
まず3級についてですが、こちらは基礎理論を中心とした内容になっています。やはり医学の世界なので、まずは人の体の基本的なしくみ、たとえば「気・血・津液(しんえき)」といった生理学的な部分から、「五臓六腑の働き」についても学んでいきます。
それから、「経絡(けいらく)」という、少し聞き慣れない言葉も出てきます。これは、臓腑(ぞうふ)をつなぐエネルギーの線のようなもので、さらに、「病気の原因は何なのか?」というところまでが、3級で学ぶ基礎理論の範囲になります。
次に2級ですが、こちらは「診断学」の分野に入ってきます。これは西洋医学でも同じですが、基礎理論を学んだあとに診断学を学ぶという流れがあります。
中医学では、診断の方法として「舌を見たり」「脈をとったり」する技術があって、そこから得た情報をもとに「体の中で何が起きているのか」を推理していきます。
この「現象を紐解いていく」という作業が、「弁証(べんしょう)」という診断方法論につながっていて、2級では、診断の技術や情報を集める力「診法」と、それらから包括的に考える「弁証」の考え方、をしっかり学んでいきます。
そして、将来的に設けられる1級では、治療学の領域に入り、「この病状にはどの漢方を選ぶか?」「どのツボを使うか?」といった実践的な内容が含まれてくる予定です。
現段階では、基礎理論を学ぶ3級と、診断力を深める2級といった違いがあります。
――3級のレベル感の目安はどんな感じですか? 受けてみようかなと思ったら、受けてもいいものですか?
まずは「受けてみる」っていうのが、私としては一番おすすめです。
そもそも医学って、「なんのために学ぶのか?」というところがとても大事で、その目的に立ち返ってみると、それはやっぱり「困っている患者さんを笑顔にすること」だと思うんです。それって、みなさんが看護を志したときの、根っこの部分と同じだと思います。
自分の「看護力」って、どのくらいあるんだろう?
患者さんのことを、どれくらい理解できているんだろう?
そういう「今の自分の実力」を知るために、試験ってあると思うんです。中医学や漢方を学んでいて、「ある程度できてる!」って自信があっても、試しに試験を受けてみたら50点だった……ということもあるわけです。となると、自分は今、もしかしたら患者さんのことを50パーセント分しかわかってないのかもしれない、という気づきにもつながります。なので、自分の現在地を知るという意味でも、受験してみるのはとてもいいことだと思います。
ちなみに、合格するのはけっこう難しいです(笑)。中国の医師国家試験と同じくらいのレベルで問題を作っているので、合格率も低い。でも、去年より点数が10点上がったら、自分のレベルもそのぶん上がっている。そういった意味で、継続してチャレンジされている方も多いんですね。
ですので、興味を持たれた方は、ぜひ「今の自分」を知るためにも、気軽に受けてみてはいかがかなと思います。
――最後に、セミナーの受講を検討されている皆さまへメッセージをお願いします!
「検定」と聞くと、つい「合格すること」が目的になりがちなんですけれども、中医学看護の学びを通して、患者さんの療養環境をどれくらい変えられるか? 患者さんへのアプローチをどう改善できるか? 患者さんをどれくらい理解できるか? その成長の目安をはかるものとして、この検定を上手く活用していただけたら嬉しいです。
患者さんは、昨日よりちょっと元気になっただけでも感謝してくれますが、でも「もっといい看護ができたんじゃないか」「もっと深く患者さんを理解できたんじゃないか」と反省することもあると思うんです。
もちろん、皆さん100点を目指してお仕事をしている中で、誰かがテストをして点数をつけるというのも難しい。だからこそ、この検定を「模擬的なテスト」として活用して、臨床現場での自分の「成績確認」に役立てていただくのも、一つの方法じゃないかなと思います。
また、この検定をきっかけに、中医学に少しでも興味を持っていただいて、さらに学びを深めていってもらえたら嬉しいですね。実際、中医学の学びって、一度はじめたら年をとってもずーっと学習は続いていって、永遠に終わりがない(笑)。でも、「医療の選択肢をもう一つ広げよう」という覚悟を持っていただけた方は、ぜひ中医学の扉を開けて、その世界に触れてみてください。

今中健二
中医師・神戸大学大学院非常勤講師/中国医学協会 会長
ライブ配信(アーカイブ配信付)
「中医学検定」【3級】 受検対策ワンポイントセミナー
配信日:5月31日(土)10時~12時
受講料: 5,500円(税込)
▼プログラム
1)中医学の基礎
・黄帝内経、整体観念、弁証論治、証とは
2)陰陽五行
・対立と制約、互根互用、平衡、転化
・陰陽可分
・五行学説
3)気、血、津液
4)蔵象
・臓と腑、昇降出入
5)経絡
6)病因病機
・六気(淫)と七情
・天、地、人 三因原則
7)講義のまとめと質疑応答
・中医学を学ぶときのコツ
・検定対策の学習の方法
・受講者からの質疑応答
※ZoomのQ&A機能より受け付けます

ライブ配信(アーカイブ配信付)
「中医学検定」【2級】 受検対策ワンポイントセミナー
配信日:5月31日(土)13時30分~15時30分
受講料:5,500円(税込)
▼プログラム
1)診法
・四診(望問聞切)
・舌診
・脈診
2)弁証
・八綱弁証
・気血津液弁証
・臓腑弁証
・経絡弁証
3)診断原則
・四診を用いた弁証
4)講義のまとめと質疑応答
・中医学を学ぶときのコツ
・検定対策の学習の方法
・受講者からの質疑応答
※ZoomのQ&A機能より受け付けます
「中医学検定」【2級】 受検対策ワンポイントセミナー
配信日:5月31日(土)13時30分~15時30分
受講料:5,500円(税込)
1)診法
・四診(望問聞切)
・舌診
・脈診
2)弁証
・八綱弁証
・気血津液弁証
・臓腑弁証
・経絡弁証
3)診断原則
・四診を用いた弁証
4)講義のまとめと質疑応答
・中医学を学ぶときのコツ
・検定対策の学習の方法
・受講者からの質疑応答
※ZoomのQ&A機能より受け付けます

講師の著書のご紹介

体質を知り、症状緩和・体質改善・身体管理に生かせる!
Q&A形式でやさしく学んで合格ゲット!
3級の基礎理論では生理・病理に関する「整体観念」を中心に、重要な「陰陽五行学説」等中医学の基本を、2級の診断学では診断・治療に関する「弁証論治」を中心に、中医学独特の評価・処置法等を問題形式でわかりやすく解説。中医学を学ぶ全ての人に役立つ。


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生薬のはたらきがマンガで楽しく学べる
漢方薬を処方することの本来の目的は、症状を引き起こしている原因そのものを改善すること。そのためには漢方薬の効能とともに病気になるメカニズムを知り、臓腑の働きを調整することが重要である。本書は入門者にも覚えやすいよう、マンガでわかりやすく解説する。


体質を知ると病気がわかる
WEB動画付き/東洋医学が今までの本で理解できなかった人のために/舌診をアセスメントに活かす
患者さんの笑顔のために知れば役立つ中医学
中医師免許を持つ著者が、弁証理論・整体観念や陰陽五行学説など中医学の基本から、中医学的診断による病状観察など現場で使える体質診断を解説。さらに舌診、顔色や患者の体質に合わせた診断法、そしてそれに合わせた環境処置としての食事や温度調整など、実際のケアに役立つ知識が満載。
