学習環境が大きく変わった時期を過ごしてきた新人さんを迎える春。「伝えたのに……」と落ち込む瞬間こそ、相手に何が見えていたかを一緒にふり返るチャンスです。内藤知佐子先生と瀧澤紘輝先生が、がっかりの正体から9つの教え方、現場ですぐ実践できるかかわりまで解説するセミナーをリリースしました。本記事でポイントを先取りします。
Q1|はじめに
――それでは、自己紹介と今年の新入職シーズンで注目している変化を1つ教えてください。
内藤:愛媛大学医学部附属病院の内藤知佐子です。今年の注目は、もうまさに、がっつりコロナ世代ですね。中学、高校のときに、コロナ禍を過ごした世代が入ってきます。今までとはまた違う変化が出てくるのではないかと注目しています。
1つ前の世代では、実習が十分できていない世代で、「実習の大事さ」がわかってきたという特徴がありました。同じコロナ世代でも、今回は中学・高校時代にコロナを経験している世代なので、またちょっと違う現象が出るのではないかと考えています。
瀧澤:西神戸医療センターの救急看護認定看護師の瀧澤紘輝です。救急の現場で教育にかかわりつつ、院内全体の教育も担当しています。今年、注目しているのは、教育現場にAiが進出し始めていることです。昨年度、大学4年生の講義に行って感じたのですが、今年の新人がどのように学んできたか、どんな学び方をしているかが変わってきている点に注目しています。
Q2|“いまどきの新人”の実態
――新人の学び方の変化を、特徴的なエピソードを交えて教えてください。
瀧澤:学び方は確実に書籍から動画に切り替わっています。自分たちが新人だったころは、休憩中に参考書や教科書を開いて「知りたいことがなかなか見つからない」ような本を読んで、理解を深めようとしていました。けれど今は、休憩室でタブレットやスマホを広く使っています。
「何を見ているのかな?」って覗くと、Instagram だったり、メディカ出版が提供するFitNs.(フィットナス)のようなサブスク学習サービスで勉強している人もいます。
(自分たち)病院側も、そういった動画学習ツールやコンテンツを準備する必要があります。例えば、eラーニングを使って、院内マニュアルを動画化するとか、教育のオプションとして、動画による学びを共有しているところもあります。
午前中の仕事で、「これがわからなかったからちょっと調べとこかぁ」と新人スタッフに言うと、病棟に置いてあるタブレットで検索をしている様子が見られます。夜勤のときに、その検索履歴から「このタイプで調べたか……」「これいいところ(キーワード)から引いてるなぁ」と学び方の傾向を把握することもあります。管理者目線で、どういう学び方をしているのか、日々気になっています。書籍の紹介をするよりは、動画コンテンツを紹介する方が刺さるのではないかと感じています。
Q3| “がっかり”の正体とは
――セミナーでは「指導者のがっかり」と「新人のがっかり」に注目してセミナーが進んでいきます。がっかりの正体について教えてください。
内藤:指導者向けの研修で「がっかりしないために」みたいなことを説明するときに「期待をしないことです」ってよく言われがちです。でもがっかりの正体を突き詰めると、相手に対する期待――「新人が育ってほしい」という期待だけでなく、そこには、意外と自分への期待も含まれています。「自分の指導がうまくいってほしい」という思いがあって、結果が見えないと腹が立ちます。
その結果の所在を新人に求めるのはお門違いです。がっかりの正体は、実は「自分の指導がうまくいってない自分にがっかりしている」ということです。そこの責任をいかに自分が持てるか、これが指導者として伸びるか伸びないかの大きな分かれ目だと感じています。
――それは指導者自身に返ってくる話で、受けとめるのは酷なところがあります。
内藤:酷なんです。正直、誰かのせいにしているときが一番楽なんです。
――環境であったり、人がいなかったり、時間がない。
内藤:そうです。脳は負荷が嫌いなので、基本楽をしたいところがあります。そうやって責任を転嫁することで、脳を安楽な方向に導きがちです。でも互いの成長を目指すなら、厳しい部分にも目を向ける必要があります。
これは指導者だけの話ではありません。学習者としても覚悟が必要です。「自分の今の課題は何ぞや?」を自覚して、先輩から言われた一つひとつを吸収して次に生かすという心構えがないと、なかなかうまくいかないんだろうなって思います。
Q4|解決の軸は?
――セミナーでは「がっかりしない・がっかりさせない9つの教え方」を解説していますが、あらためて実践的なポイントを教えてください。
瀧澤:大事にしてほしいのは、それこそ今の内藤先生の話じゃないですけど、指導者が指導者目線だけで物事を見ないことです。
指導者と学習者が同時に、同じベッドサイドへ行っても、指導者は知識や経験があるため、患者さんの、多くの情報が見えます。学習者には同じものが見えていないことが多いです。ある場面を振り返るときに、学習者にはどんな世界が見えていたのかという「学習者の体験世界」を指導者が体験してほしいと思います。
そして、指導者の皆さんに、さらにお願いしたいのは、一緒に現場に行ったなら、自分の「見たこと」「考えたこと」「すること」を、すべて思考発話(思考を言語化)してほしいです。患者さんの前で「こういう理由でこれを見るのが大事なんだよ」と話すと、患者さんから「だから、看護師さん毎回毎回それを聞くんかぁ」と言われることもあります。患者さんも(ケアに)参加してくれるようになり、「そんな症状が出たら、すぐナースコール押すわなぁ」といった反応をいただけることもあります。
先輩たちが考えて指導している姿を患者さんも見ています。「こんなに一生懸命ケアしてくれているんだ」と捉えてくれることもあります。ですから、学習者の体験世界を感じることと、先輩が思考発話することをぜひ実践してほしいです。
――ありがとうございます。それでは、内藤先生お願いします。
内藤:私はやっぱり、伸びると信じることが大事だと思います。それだけでなく、小さな成長に目を向けられるようになると面白くなってきます。
本当に小さな成長です――。私たちは昨日言ったことが今日できてないことの方に目が向きがちですが、昨日言ってなかったことが意外と今日できていることもあります。そういう小さな成長に目を向けて、「当たり前を、当たり前にしない」ということが大切です。
そして、小さな成長に目を向けられるようになるために、9つの教え方で最後にお話しした「感謝の心」が重要です。すべては出会いで、いろんな人との出会いの中で、私たちも成長してきました。目の前に今いる新人さんは、自分を成長させてくれる存在です。そこに感謝の気持ちを持って、いろんなハプニングが起きても「そう来たかぁ」で受けとめながら指導を進められるといいと思います。
Q5|最後にメッセージ&エール
――春から指導係になる方へ、エールをお願いします。
瀧澤:「教える」と聞くと気が張ってしまい、自分の一つひとつの言動が、もしかしたら相手を傷つけてしまうかもしれないと、ネガティブに捉えてしまう指導者も多いと思います。
でもその逆です。あなたのひと言ひと言が、後輩の成長の糧になっていることもあります。相手を信じ切ることです。ここに尽きるかなと思います。
どうしても挫けそうになったときは、一人で抱え込まないでください。教育係もいます。主任も師長もいます。一人で育てているのではないことを周りに伝えて、ヘルプを出してほしいです。
そして、師長・主任さんには、本当に指導者が一番つらい思いをしていることも多いので、タイミングを見て声をかけてほしいとお願いしたいです。
内藤:プリセプターになりたく
なくて
なる人も多いと思いますが、それでもやはりご縁です。どんな気持ちで過ごすかは自分次第です。やらされ感たっぷりで過ごすのも自分次第、やってみようと挑戦するのも自分次第です。せっかくなら「やってみよう!」という気持ちで一年間過ごしてほしいと思います。
指導するときには、看護と一緒で、知識とスキルが必要です。足りない部分は、今回のセミナーの中でたくさん盛り込みました。セミナーを参考に、一つひとつ乗り越えていってください。辛くなったらまたこの動画見て、一緒に一年間やっていきましょう。応援しています。
愛媛大学医学部附属病院 総合臨床研修センター 助教
2008年新潟県立看護大学大学院看護学修士課程修了。2010年京都大学医学部附属病院内総合臨床教育・研修センター助教、2020年京都大学大学院医学研究科研究員などを経て、2022年から現職。「愛のある学びの循環」をモットーに、教育の魅力を医療者に伝える。
神戸市立西神戸医療センター 看護部 主任/救急看護認定看護師
2014年救急看護認定看護師資格を取得。現在は救急病棟の主任として、臨床と教育の両輪で看護師の成長を支える。「できない」を責めず「できる芽」を見つけて育てるかかわりをモットーに。明日から現場で試したくなる学びを届ける。
~がっかりしない、がっかりさせないために~
▼プログラム
1.指導者・新入職スタッフの嘆き(7分)
「教える立場」「教わる立場」それぞれの嘆き。新人指導がうまくいくために、私たちに必要なのはいったい何か?!
・指導者の嘆き~教える立場の「がっかり」とは?
・新入職スタッフの嘆き~教わる立場の「がっかり」とは?
・本セミナーの目指すべきゴールは?
2.私の病院だけじゃなかった、今どきの新入職スタッフの実態報告(8分)
現場でまさに新人指導にかかわっている瀧澤先生から、今どきの新入職スタッフの実態を報告します。
・学びの「インフラ」が変わった
・学びの「道具と作法」が変わった
・実習の「反面教師」から「看護のリアル」へ
・「失敗への恐怖」と「公開処刑」への警戒
3.がっかりしない・がっかりさせない9つの教え方 前編(19分)
がっかりしない・がっかりさせない9つの教え方を解説します。できていることもあるかもしれません。自分の課題を見つけて、取り組んでいきましょう。
・なぜ、人はがっかりするのか
・①利他主義
・②学習者は必ず伸びると信じる
・【あるある寸劇1】リフレーミング
・③強み・興味関心を捉えて関わる
・④理想=ゴールを具体的に学習者と共有する
・【あるある寸劇2】打ち合わせのコツ
4.がっかりしない・がっかりさせない9つの教え方 後編(17分)
・⑤現実を予想し、対応策を考えておく
・⑥未来肯定型で伝える
・【あるある寸劇3】未来肯定型で伝える
・⑦「そうきたか、斬新~★」で受け止める
・⑧PNP(承認 + リクエスト or ミッション + 承認)で成長を促進
・【あるある寸劇4】PNPで成長を促進
・⑨感謝の心
5.ワクワクする未来の新入職スタッフ教育(12分)
ここまでの講義で、現場の新人たちも変わってきたことがわかってきました。さらに「9つの教え方」だけでは補えないところを解説します。
・タイパ・コスパを意識した指導方法
・課題レポート、下書きはAIでもOK!
・「なぜ?」を掘り下げてくれる伴走者
・「正しい情報の見極め」という新しい教育
・「考えないスタッフが増える」は本当なのか?
・指導者のモチベーションを上げるコツ
6.ゆるっとお悩み相談室(17分)
講義を振り返りながら、みなさまのお悩みに回答します。
・教えているのに新人が成長できないと指導者側がバーンアウトする問題
・世代間の相互理解の深め方
・患者の興味関心に気づくための働きかけ方
・手をかけること、手をかけなくても育っていく秘訣
・私たち指導者は「教育する」ということを学ぶ機会がないという問題
・講義のまとめ
▼受講申し込みはコチラから
