このたびメディカのセミナーWEB講義『外来8割? 分娩2割? 上手な妊婦健康診査』がリリースされました。2012年からスタートした本セミナーは、「産婦人科診療ガイドラインー産科編」が改訂されるたびにアップデートを繰り返してきた人気シリーズです。「産婦人科診療ガイドラインー産科編2020」に対応した最新版になります。リアルセミナーを“ほぼ全部”収録したロングバージョンでどうぞお楽しみください。
今回、講師でございます松岡 隆 先生に(昭和大学医学部産婦人科学講座准教授)この動画に込めた“思い”について語っていただきました。

――タイトルの「外来8割分娩2割」が印象的です。ここに込められたメッセージをまず教えてください。

我が国の妊婦健診は諸外国に比べ、手厚い(健診頻度、超音波検査の回数)と言われています。また、妊婦さんの知識レベル・理解も高いことも相まって、妊娠初期から緻密な周産期管理が可能となっています。
どんなことにも例外や突発的なことが発生しますが、難しい症例であっても評価が十分であれば、落ち着いて対応することができます。妊娠期間の十月十日を妊婦とともにどう過ごすかで、最後の最大なイベントである分娩を無事に終え、その後の育児が決まるという意味を込めて作ったスローガンです。

臨床は流れています。目の前の事象は、その前に何かがあって起きていることがほとんどです。今日の皆さんの判断、行動が少なからず、最後の部分に影響を与えると肝に銘じ、大変だと思いますが、日々の健診業務を行って欲しいという願いも込めています。

また、形式的業務をただ効率のみを目指してこなすだけでなく、より“質の高い妊婦健診”は安全性だけでなく患者満足度も向上すると思います。「質が高い」というのは、「ただただ丁寧に時間をかける」という意味ではありません。評価により“業務のギヤ”を変えることで力の入れ具合(本当の意味での効率化)を調整できる業務(=できる助産師)につながると思います。
そう考えると、「外来8割分娩2割」ではなく、本当は「外来9割分娩1割」なのかもしれませんね。

――講義の中で話されている「妊婦健診は異常をピックアップするのではなくて、正常であることを確定すること」という考え方、「正常化バイアス(正常にしてしまう)に負けない」ことの難しさもよくわかりました。これら以外で先生が日常診療で心がけていることがあれば教えてください。

外来診療で気をつけているのは時間配分です。最初にもお話したように、「質が高いケア」は「時間を掛けるケア」ではありません。ケアが必要なところに時間をかけることが質の向上につながります。しかし、外来業務は制限された時間の中で行われています。なので、掛けるべきときに掛けられるように外来診療を行うようにしています。
平等なケアとはすべての妊婦さんに同じ時間をかけることではありません。平等なケアとは同質の医療を提供することで、不要に時間をかけ大事なときにケアがおろそかになってしまうのは本末転倒だと思っています。なので、時にさっぱりと終えることも大事です。

エピソードを紹介します。紙カルテの時代の話です。ある妊婦さんが、必要項目以外の自由記載の部分を指差して「先生、私のカルテには何も書いてくれないんですね」と言いました。そこで、私は「〇〇さん、良いところに気がつきましたね!〇〇さんは、あまりにも経過が良いので書くことがないんですよ。このような白いカルテを見るとホッとします。」と説明しました。「なるほど、私は順調なんですね。」「そうです。とても順調です。」つまり、時間を掛けられていない事がその人にとって良い事なんだということを説明、理解してもらったわけです。
いつも、こんな風に上手くいくとは限りませんが、「なにかあったら、しっかり診てくれるんだ」という安心感があれば、さっぱり終わる健診もサッと帰れると喜ばれることになるのではないでしょうか?

――医師ではなく、助産師向けに講義されるときに、心がけていることはなんですか?

ありきたりの表現ですが、チームである事を意識しています。プレーヤーはそれぞれ役割があります。助産師には助産師だからこそできることがありますし、医師がそれに変わることはできませんし、逆も同じです。なので、講演時に使う「主語」には「You」ではなく「We」を使うことが多いです。

もう一つ、あまり大きな声では言えませんが、医者の使い方(コツ)をちょこちょこ話すようにします。色んな医師が外来に来ますよね。ベテランから若手まで、慎重派からおっちょこちょいまで。「上手くまわる外来は医師でなく、外回りのスタッフで決まる」が信条です。【動画1】総論の当直師長さんの話はその典型だと思います。もう一度見てみてくださいね。

――最後にこの動画の受講者(助産師)へメッセージをお願いします!

妊婦健診はマニュアルさえあれば正直誰でもできる業務なのかもしれません。また、業務量が多いと、こなすことでいっぱいで考えて行動することが難しくなってしまうかもしれません。病棟業務と外来業務は長期決戦と短期決戦のような違いがあります。
病棟では、時間をかけて信頼関係や方針決定、ケアができます。なんだかんだで、明日やることで間に合う場合があります。しかし、外来業務はその時その時に判断が求められます。その判断により大きく方向性が変わることが少なくありません。明日で間に合うではなく、やっておけばよかったと後悔することになりかねない業務です。
そんなこと言われたら、気が抜けないし疲れちゃうという意見もあるかもしれませんね。妊婦健診に対して、ルーティンワークに疑問を感じている、なんか上手い方法はないのか、ちょっと曖昧にしていることに不安がある、そんな皆さんにぜひ、視聴していただいたい動画です。動画視聴の後には、自信を持って健診を行える(行動変容)、そんな内容を目指して収録いたしました。
それではどうぞ!

松岡 隆
昭和大学医学部産婦人科講座 准教授
筑波大学をご卒業後、昭和大学医学部にご入局。同産婦人科学講座 講師、医局長を経て2014年より昭和大学医学部産婦人科講座 准教授。周産期医療を専門とされながら、超音波検査のスペシャリスト。

申し込み受付は2022年5月31日まで!

『外来8割? 分娩2割? 上手な妊婦健康診査』
産婦人科診療ガイドライン-産科編 2020対応版


▼プログラム 【収録時間:約230分】
1. 妊婦健康診査 総論
2. 検査項目 ~適切な時期に適切な血液検査を行う、その意味を知りましょう~
3. 子宮内胎児発育不全の発見と管理
4. 妊娠高血圧症候群の注意点
5. 精神疾患とその対応
6. 出血診断アルゴリズム

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