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医療現場で当たり前に使っているカタカナやアルファベットの業界用語、「多分英語だからそのままでも外国人患者さんに通じるかも!」と思っていませんか?
じつは、医療現場は通じないカタカナ英語や英語以外の外来語、おかしな造語が飛び交っています。
そんな業界用語に注目し、外国人患者さんに通じる正しい英語の発音やそのポイント、現場で困ったときに使えるフレーズを紹介します。

本日のカタカナ英語:アイテル

「アイテル様の排液が出ています」
看護師さんなら「アイテル=膿」という意味で使ったことや聞いたことがあるのではないでしょうか。創部や傷口からのアイテル様の排液は、感染による炎症反応の1つです。

「アイテル」はカタカナだし、そのままでも通じる英語なのでは、とみなさんは思っていませんか?

「アイテル」は、ドイツ語で「膿」を意味する「Eiter」が由来です。

「アイテル」は、英語で「Pus」です。
最初の「パ」にアクセントを置いて「パス(pʌ́s)」が英語に近い発音です。
「アイテル様の排液」と言いたいときは「pus-like discharge」が使えます。

医療現場では、「化膿性」という意味の「purulent」も使われます。
例えば、「化膿性髄膜炎」は「purulent meningitis」、「化膿性乳腺炎」は「purulent mastitis」です。
最初の「ピュ」にアクセントを置いて「ピュアルレント(pjúərulənt)」が英語に近い発音です。

また、組織などに膿がたまっている状態の「膿瘍」は、「abscess」です。
例えば、「腹腔内膿瘍」は「intra-abdominal abscess」、「扁桃周囲膿瘍」は「peri-tonsillar abscess」です。
最初の「ア」にアクセントを置いて「アブセス(ǽbsès)」が英語に近い発音です。

「膿」や「化膿」は、日常生活でも使いますよね。
例えば、ニキビなどは「潰したら白いやつ出てきた」とか「また膿んでいる」など「膿」の表現はさまざまです。
英語圏でもつねに「pus」が使われるわけではなく、「thick yellow discharge(黄色くてベタベタした液)」や「whitish sticky stuff(ネバネバした白っぽいやつ)」など「膿」の表現はさまざまです。
もしかすると、英語圏ならではのユーモアあふれる表現に出会えるかもしれませんよ。

•Please let us know if you notice pus- like discharge from the surgical site.
(創部から膿のような排液があったら教えてください)





30歳を過ぎてからアメリカで看護師をめざした私は、偉人たちの言葉や名言に何度も背中を押してもらい、一歩ずつ前に進む勇気をもらいました。
人はみな、多かれ少なかれ何かに悩んでいます。
そんなときに立ち止まってほしい言葉を紹介します。


起業家、100 Days of Rejection Therapyの生みの親「ジア・ジアン(Jia Jiang)」の言葉です。
みなさんTED TALKSをご存じですか? 世界各国の著名人・知識人によるスーパープレゼンテーションを無料で視聴できるサービスです。プレゼン内容は多岐にわたり日本語訳も充実しています。
TED TALKSのなかでとくに印象に残ったプレゼンが、今日紹介するJia Jiangの「100 Days of Rejection Therapy」です。
ザックリ言うと、100日間拒絶されるためのお題を立てて人から拒絶されることでメンタルの抗体を作り上げる、というセラピーなのですが、このプレゼンがおもしろくて何度も視聴しています。
そのプレゼンのなかで使われているのが今日の言葉です。
私自身、相手から「NO」と言われないように、空気を読んだり自分を犠牲にして状況を丸く収めようと頑張ったりする傾向があります。気を使いすぎて疲れてしまい、自分の行動に「何もそこまで……」と思うこともしばしばです。
そんなとき、今日の言葉は自分を取り巻く“拒絶されたくない”という空気をフーっと吹き飛ばしてくれる気がして気に入っています。

“別に相手から拒否されても、嚙まれたり刺されたりするわけじゃない。ましてや、その相手に職を奪われるわけでもない。相手は自分の意見を言っているだけなのに、何をそんなに恐れる必要があるのだろう……”
そう思うと、拒絶されることにビクビクしている自分がバカバカしく思えてきます。
Jia Jiangは拒絶される経験のなかで発見した、相手の「NO」を「YES」に変える魔法の言葉も伝授してくれています。

この続きはまた次回紹介しますね。

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佐藤まりこ
生まれも育ちも北海道。しかし、寒いのが苦手で大学卒業とともに上京し大学病院に勤務。さらなる暖かさを求めて2009年、米国・ロサンゼルスに留学。2010年、California RN(Registered Nurse) Licenseを取得するが就職先が見つからず無念の帰国。2012年、駐在妻として米国・オレンジカウンティーにカムバック。2013年、Refresher/Reenter-Update Education Programで総合病院の急性期病棟実習を修了。その後、念願のRNとして内視鏡センターに勤務し充実した日々を送るが、2016年、夫が日本に帰りたいと言い出しふたたび無念の帰国。帰国後は、子育てに奮闘しながらも幸せな田舎暮らしを謳歌し大学病院に勤務中。
幸せな時間は、「川の字で寝る休日のお昼寝」。