適度な距離を保つ
ジェイドナビ・ジン/文・絵
深川明日美/訳
リトルモア 2007年刊
定価 1,700円+税
おかあさんをなくしたコハリネズミは、「あなたを抱きしめてくれる人がともだちよ」というおかあさんの言葉を胸に、友達を探す旅に出ます。しかし皆コハリネズミのトゲを怖がり、抱きしめてくれません。涙も出ないほどの気持ちで暗くて冷たい下水溝に入り泣いていると、目が見えないネズミのおじいさんに出会います。コハリネズミは泣き止み、そしてしばらくして、ネズミのおじいさんに旅のことを話し、お願いします。
* * * * *
「抱きしめてくれる?」
「いいとも。さあ、おいで。ゆっくりおやすみ」
ネズミのおじいさんは、コハリネズミをギュッと抱きしめました。
でも、コハリネズミのトゲは
ネズミのおじいさんのからだを つきさしてしまいました。
ネズミのおじいさんは、そのときになって、
抱きしめた子がハリネズミだったことを知りました。
* * * * *
コハリネズミはおじいさんの腕の中で眠りに落ち、そしてネズミのおじいさんは亡くなってしまいます。
誰もがハリネズミのトゲのようなものを持ち、それが他人を侵入させない境界線となっているのかもしれません。
夫婦の距離
私は毎年2回、夫と二人で京都の法然院を訪れています。横並びで座り、住職の法話を聞きます。法話中は、同じ空間にいながら、違う考えを持つ個々が存在すると感じます。法話を聞いたあとは互いのとらえ方について話します。住職という第三者が夫婦の間にいることで、「互いにわかりあえなくても仕方がない」という適度な距離が保てるのです。
私は夫婦であっても、二人の関係とはまた違った場を持つことが大切だと考えています。それぞれが違う人と出会い、いろいろな考えや意見に触れることができるからです。二人だけの価値観に、第三者の価値観が加わることで、親密になりすぎることがなく、閉塞的な関係を防ぐことができます。自分と他者との関係には適度な距離が必要なのです。
考えてみましょう
【問1】行動や言動と、裏にある真意・背景が違っていた経験やエピソードを教えてください。
【問2】あなたと家族との関係や距離を教えてください。
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オフィスJOC(Japan Okan Consultant)代表
心といのちの専門家(オカン)
看護師40 年、看護部長を17 年務めた後、人材育成・相談業務を中心に活動。自殺防止の電話相談では10 年間で約1,800 人の悩みを聞いてきた。またワークショップデザイナーとして対話の場づくりを約3,000 人に実践。2019 年にはオフィスJOC を起業し、「ケアする人をケアする」「がんばリーダーを応援する」「対話の場をつくる」をコンセプトに、日本を元気にするための活動を行っている。現在は全国の医療・介護系の研修をオンラインとリアルの両方で開催。2020 年からはオカプロ(オカン力プロフェッショナル)養成塾のほか、塾生たちとの「オカン対話Café」「がんばリーダー育成講座」をスタート。主な著書に『リーダーのための育み合う人間力』(医学書院)、『ケアする人をケアする本 医療スタッフのための人間関係力』(gene)などがある。