みなさん、こんにちは。
訪問看護をやっていて日々とても楽しいのですが、気候には悩まされます。私の地元の三重県桑名市は先日、40℃という最高気温を叩き出しました! 車で訪問をしているので運転中も強い日差しで頭がくらくらすることもしばしば……。みなさんも水分補給などをしっかりされて元気に仕事をしていきましょう!

ということで今回はいよいよ表題の「沈黙のとき、どうすりゃいいのーー!」の沈黙の場面についてお話していきたいと思います。

私たち看護師が苦手な場面の一つ「沈黙」・・・なぜ苦手なのでしょうか?

同僚たちと話をすると、「利用者さんが黙ってしまって、どうしよう!?ってなるんですよ」「訪問看護で一対一の場面でずっと黙っていられるとしんどくて。ついつい先に話を展開してしまいます」などの声を多く聞きます。

訪問看護が会話ありきの空間だと思って訪問して、そこで沈黙になるとつらいですよね。しっかりと対話をしてケアをしていきたいのに話が続かない、なんならなにも話さず動かず、静かになってしまう……! 焦る! ああ、どうしよう……という経験が、みなさんにもあると思います。

でも少し考えてみてください。ここまでの意見、すべて看護師サイドだけの気持ちですよね。かつての私もそうでした。

では利用者さんはどんな思いで沈黙しているのでしょうか?

沈黙の意味を考える

もし、ご自身が訪問看護を受ける立場だったら……?と考えてみましょう。体調が悪いときはどうでしょう? 考えごとをしているときはどうでしょう? 悩んでいる渦中にいるときはどうでしょう?

訪問看護師が来ていろいろと質問をされても、答えることもままならないこともあると思います。それでも話ができる人がいるかもしれません。しかし、話ができない人もいるということを知っておくだけで、沈黙の受け止め方が違うと思います。

あと、ここからがけっこう重要なのですが、その人は頭のなかで「なにかと話をしているのかもしれない」と考えてみることが大事です。看護師としては「ああ、なにも答えてくれないな……。自分のことを受け入れてもらってないのかも」と悲しい気持ちになることもあるかもしれません。しかし、もしそのとき、なにかと誰かと会話をしていたら、あなたの存在はいったん置いておかれていることもありそうです。

たとえば、「昨日の夜、眠れましたか?」と看護師が聞いたとします。利用者さんが「はい…………」と答えた後に、「昨日って寝てたっけ?」「いや寝てないよ、ゲームおもしろかったよな」「ああ、あれな! おもしろかった」と頭のなかで楽しい会話をしていることもありそうです。逆に怖い幻聴に悩まされていることも考えられます。

いろいろな要因があると思うので、「沈黙」=「看護師の自分自身を受け入れてもらっていないんだ……」と考えたり、「沈黙にさせてしまうと、看護師としてスキルがないんだ」「もっといろいろ聞かないと!」と、焦る必要はないということが、いちばんお伝えしたいことです。

どんな気持ちで沈黙を味わえばいいの?

これは私のしていることですが、私が訪問看護としてうかがっているときも、沈黙になることがしばしばあります。そんなとき、利用者さんの表情や、それまでの声や話の流れなどをすべて思い返します。これは、前回書いた「視覚や聴覚を使って矢印を全集中する!」をすることでもあります。

そのときは、こちらも自然と沈黙しています。このときのコツは、慌てないし、なんなら、あえてリラックスしようとします。そしてリラックスします。このリラックスが利用者さんに伝わるので、その場の緊張感が緩和します。

沈黙の場面では、「私の質問の仕方が悪かったのかしら?」と自責的に考えてしまいがちですよね。でもそうなると、矢印は目の前の利用者さんではなく、看護師である自分のほうに向いています。私たちがやることは矢印を相手に向けること。これだけです。

こうすると、沈黙も意味のあることだろうというふうに、落とし込めます。なぜ沈黙なのかなー。誰かと話をしているのかなー。なんてのんきに待ってみましょう。すると、ふと利用者さんのペースで話が始まります。

弊社のスタッフからも、「沈黙の理由を考えていたら、急に利用者さんから会話がまた始まりました」という声を、何回も聞いています。

すべてに意味がある

言葉、動作、表情、沈黙。利用者さんのすべてに意味があると思います。

私たち看護師は「観察」が大事ですよね。その人をアセスメントするとき、ストレングスで見ていくときなど、多くのことを考えるときは、まず「観察」します。沈黙の場面でも困らず、それに意味があるととらえていく練習ができると、自分のものになってきます。

「矢印を自分ではなく、目の前の利用者さんに向けていく」。これをたまに思い出してみてください。





社本昌美
訪問看護ステーションふく・ふく代表・管理者/精神科認定看護師
精神科看護に長年魅了されています。地域で水が流れるように精神科看護を浸透させたい!そんな思いで2023年8月に訪問看護事業所を立ち上げました。 訪問看護につながる手前の方にも、よくお話をしに伺います。人生をどのように過ごしたいか、希望はなにか?そんなことを会話のなかから探り、ストレングスの視点でかかわることが大好きです。精神科看護に魅了され、わくわく働ける看護師を多く育成したいと思っています。
時間があると登山をしながら日本中を旅しています。四季折々の日本の山々に包まれて至福のときを過ごしています。