みなさん、こんにちは。私は真夏になると高山(標高3,000mほど)にテントを持っていき、山に籠るという生活を、ここ数年送っています。すごく涼しくて、下界が40℃近い日でも15℃ほどなので寒いくらいなのです。
私にとっては、自然に包まれて静かに過ごす、愛しい時間です。

しかし最近は、よくも悪くも携帯電話の電波がバンバン入る山域が多くなり、いつでもどこでも連絡がついてしまいます。以前、山頂でおにぎりを食べていたら、仕事の電話が入ってきました。まあ、いいんですよ。いいんです……、でもなあ、という感じ。経営者はなんだかダメですね……。ずっと力を入れて生きてしまいそうです。

さて今日のテーマは「遠くから自分を眺めてみよう」です。

自分ってどんな感じで利用者さんの前にいるのかな

訪問看護では、みなさんはどの位置に座っていますか? 利用者さんと向かい合いますか? それとも隣? いっしょに片づけをしながらの会話とか?
これは場面によって、要望によって、また関係性によっても変化していきますよね。
そんなとき、ふとチェックしてほしいのです。「自分はどこにいるのか」「どんな表情をしているのか」

なんだか煮詰まるときってないですか? パワーゲームのような、お互いに意見を押し通そうとするやり取り。たとえば、ちょっと極端な例ですが、「この薬を飲んだほうがよい」「いや、飲まない」というようなやり取りが続いてしまったり。ふだんだったら、「なぜ服用したくないの?」や「今だけ飲みたくないのか?」「支援者が変わったら服用できるのか」など、細かな背景の聞き取りをするのですが、そんな余裕もない状況です。

今までの記事で、看護師である自分自身ではなく、目のまえにいる利用者さんに矢印を向けてほしいと、何度かお伝えしてきました。しかし真剣に患者さんに矢印を向けて話をしていると、看護師である自分が、どんな感じで患者さんに向かい合っているのかが、だんだんとわからなくなってきるときがあります。

そんなときは部屋の上のほう、天井あたりに「目」を取り付けて、やり取りをしている自分と利用者さんの雰囲気を見るというイメージをします。あくまでイメージですよ(笑)。支援者が煮詰まらない状況にいると、余裕が出てきて、状況を把握できてからアサーティブ(相手を尊重した自己表現)なやり取りができるのを感じます。

俯瞰するとよいこと

利用者さんに真剣に矢印を向ける、その向けている自分と利用者さんを天井から見る。こうすると、なにがよいのか? 一方方向の矢印ではなく、全体をぼんやりとうかがうという感覚が生まれるからでしょうか、私は「空気が少しゆるまる」ように感じます。気がゆるまったような表情になって、少しリラックスした雰囲気になります。これは非常に大事です。リラックスすると、利用者さんとの沈黙の場面でもアセスメントがしやすくなるし、支援者に余裕ができて空気が柔らかくなります。お互いが楽な感じで話ができると思います。

一呼吸置くために全体をぼやっと見る手段が、天井からの目なんですね。全身の力が抜けて、「間」が得られるような気がしています。真剣に矢印を向け続けるためにも、逆に少しの「間」というものを意識してみてください。ご自分の表情が変わっていくのを感じられると思いますよ。

俯瞰のついでに鏡を見てみる

みなさんは自分が話をしているときの表情を、見たことはあるでしょうか? 特別な機会がない限り、見たことはないと思います。利用者さんへの対応で、自分では笑顔のつもりが実は無表情に近いってことも多くあります。一度、鏡の前で自分が話をしているときの顔を見てみることをお勧めします

コロナ禍で一気にマスク生活になったとき、私は訪問看護の研修で、「(マスク生活のなかで、私たち訪問看護師は)目で勝負しないといけない!」と話をしてきました。とくに私は、初回訪問をして初対面で利用者さんと契約を結ぶ立場なので、「怖くないですよ」「あなたの味方ですよ」と安心していただけるように、第一印象には特に気をつけています。もちろんその後もそうなんですが、初回訪問はとくに、「目で笑って行く」ことを心がけてきました。

笑顔って、口元だけ笑っていても相手に怖い印象を与えると思うんです。「目で笑う」というのは、目を細くしてにっこりと目じりを下げて微笑みかけるという感じです。「感じの良さ」を練習したり、目元で笑う練習などを繰り返したりして、利用者さんの自宅にうかがう……。病院勤務のときには考えられません。

訪問看護は専門職でありながら、営業職でもあると思っています。ぜひご自身の表情もチェックしてみてくださいね。





社本昌美
訪問看護ステーションふく・ふく代表・管理者/精神科認定看護師
精神科看護に長年魅了されています。地域で水が流れるように精神科看護を浸透させたい!そんな思いで2023年8月に訪問看護事業所を立ち上げました。 訪問看護につながる手前の方にも、よくお話をしに伺います。人生をどのように過ごしたいか、希望はなにか?そんなことを会話のなかから探り、ストレングスの視点でかかわることが大好きです。精神科看護に魅了され、わくわく働ける看護師を多く育成したいと思っています。
時間があると登山をしながら日本中を旅しています。四季折々の日本の山々に包まれて至福のときを過ごしています。