みなさん。こんにちは。
私の住む三重県桑名市は冬季に2~3回ほどしか雪が降らないのですが、その2~3回が結構積もります。訪問看護には車移動が必須で、スタッドレスタイヤに替えることも仕事の一環です。きちんと交換しますが、正直面倒くさい……。短気なので、最近は雪が降るとまっさきにタイヤ交換のことが頭に浮かび、冬の風情もへったくれもありません。ww
頼られてうれしいけど、でもそれって私がいないとダメになる?
利用者さんと信頼関係が築けてくると、利用者さんも徐々に打ち解けられてきますよね。それが進んでくると、「A訪問看護師さんじゃないと、話を聞かないわよ」とか「A訪問看護師さんはあの利用者さんから気に入られているから」なんてことが、でてくることもあると思います。
とくに、ほかの看護師さんとはなかなか打ち解けられなくても、自分なら話ができるという利用者さんとの関係性がうれしかったこと、みなさんも少なからずあるのではないでしょうか? やはりうれしいですよね。看護師として、信頼していただくことがやりがいにつながることは、言うまでもありません。
しかし、すべての生活の判断を「A看護師さんに聞いてから決めてみよう」と思う利用者さんもいらっしゃったりします。訪問を開始してからの期間が長くなればなるほど、「自分ではものごとを決められないのでは?」と思うような状態になったりします。たとえば、利用者さんは「A看護師さんがいないと、自分でさまざまなことを決めていけないのではないの?」という状態になっていたり、A看護師も「もしかして私が退職したらこの利用者さんはどうなるのかしら?」ということも頭をよぎります。
関係が固まる前の段階で考えること
訪問看護導入の時期に、私が管理者として考えなければいけないことのひとつに、「不適切な依存関係をつくらない」があります。
看護師のパーソナリテイにもよるのですが、「利用者さんに頼ってもらって自己肯定感が高まる傾向」のある看護師は、治療関係 というものを意識せずに、無意識に「依存させてしまう」空気感をつくることがあります。「看護師」という職業を選ぶ人は、頼られることの喜びや役に立ちたいと思う傾向があると思うのですが、これを看護師自身が知っておくのと、わからずにケアに入るのでは、まったく結果が違ってきます。
まず、「自分には少なからずそのような傾向がある」と意識して、自分と利用者さんとの関係性をチェックしてみましょう。利用者の精神的なケアを行うときに、たとえば「自立できる方向にもっていけているか」「自分がいないと困るようにしていないか?」「チームでもうまくかかわっていけるか?」「ほかの看護師にも話を振ることができるか?」 と考えてみてください。あなたと利用者さんとの関係はどうでしょうか?
うちのステーションは、迷った末、今は受け持ち制にしていません。こうした「利用者との不適切な依存関係」を無意識につくらないようにするためです。受け持ち制にしないことで、システム として避けることができます。今は2人の看護師ペア(ペアも固定ではない)で動くようにしています。もちろん受け持ち制のよさもありますが、ペアで訪問看護に行く意味も大いにあるんですよ。
関係性が固まったあとに考えること
そうはいっても、看護師も利用者さんも人間です。ぐっと距離の近い利用者さんもいらっしゃいます。それは疾患によるものもありますし、成育歴に関係していることもあります。看護師に依存形成を行ってくることもあります 。
そんなときは、ときどき違う看護師がメインで話す場面をつくります。利用者さんからは「ほかの看護師さんが来るなら、もう訪問看護をやめます」と言われることもあります。そんなときは、なぜ、いつもと違う看護師がかかわるのかを、利用者さんにも伝える必要があります。
依存自体は決して悪ではありません。たとえば、愛着問題を抱えている利用者さんは固定の関係性を望まれます。安心感を得たいという思いは、だれしもありますものね。依存から自立に向けて支援を拡大させていくことが、とても大事なんです。「依存からの拡大=子供が成長していく過程」というふうに考え、少しずつ人の幅を広げる工夫をしていきます。
回復して自立していけるイメージを訪問看護師が持つ
将来の夢に向かって(就労など)目標を掲げている利用者は多いです。また、家事を自立できるようになりたいと思っている人もいらっしゃいます。明確な目標をお持ちでない人もおられますが、大事なことは、私たち訪問看護師が「いつか訪問看護を卒業できたり、回数を減らせたりして、利用者さんが自立していけるイメージ」をもつことなんです。
回復した患者を多くみてきた精神科看護師のモチベーションは高く、また反対に回復者とのかかわりの少ない看護師はモチベーションが高くないという研究1)があるのですが、ここは逆転の発想で、「回復のイメージを最初に持っておく」ことが、利用者の今後の生活に影響を及ぼすのではないかと考えています。プラスのイメージをもって患者さんにかかわっていきたいですね。
まとめ
〇不適切な依存関係に陥っていないかを定期的にチェックする。また複数で訪問するなどシステムを工夫する。〇いったん依存関係になっても、利用者さんが自立していけるように、人間関係の拡大を考える。
〇利用者さんが回復していけるイメージを、看護師がもつ。
では今日もありがとうございました。
【参考文献】
1)矢田浩紀ほか.精神科看護師の自己効力感に関連する要因.産業医科大学雑誌.2017,39(3),229-34.
訪問看護ステーションふく・ふく代表・管理者/精神科認定看護師
精神科看護に長年魅了されています。地域で水が流れるように精神科看護を浸透させたい!そんな思いで2023年8月に訪問看護事業所を立ち上げました。
訪問看護につながる手前の方にも、よくお話をしに伺います。人生をどのように過ごしたいか、希望はなにか?そんなことを会話のなかから探り、ストレングスの視点でかかわることが大好きです。精神科看護に魅了され、わくわく働ける看護師を多く育成したいと思っています。
時間があると登山をしながら日本中を旅しています。四季折々の日本の山々に包まれて至福のときを過ごしています。