みなさん。こんにちは。
前回は、訪問看護師と利用者さんとの依存をテーマに書きました。今回はそれに関連した「あるある場面」です。そう、「〇〇看護師さん固定でお願いします」と言われた場合。管理者はどのように考え、対応すればよいのか? またスタッフはどう受け止めればよいのかについて、取り上げてみたいと思います。
落ち込む?喜ぶ?
私たち訪問看護を提供する側は、利用者さんが安心して支援を受けられるよう、配慮することは大事なことです。でも訪問看護を継続していくと、利用者と看護師の相性ってあるんですよね。
管理者にこっそりと、「あの……言いにくいのですが、〇〇看護師さんだけに来ていただくことはできませんか?」と言ってこられる利用者さん、いらっしゃいますよね。当ステーションは受け持ち制ではありませんが、受け持ち制の場合は、「今の看護師さんでもいいんですが、管理者さんに決まってきてほしい」と言われたりしませんか?
指名されたスタッフは、がんばりが認められた気持ちもあって喜ぶこともあるでしょう。反対に「あの人はちょっと……」と言われたスタッフはたいへん気落ちして、しばらく引きずるかもしれません。よくわかりますよ……。悲喜交々ですよね。
そのとき、管理者のあなたはどのように対応されていますか?
どう対応していますか?
このテーマは病棟勤務のときもありました。受け持ち看護師と合わないから変更してほしいと言われること。
病棟師長をしていたときは、基本的には受け持ち看護師の変更はしませんでした。看護師も一生懸命、ケアをしていますし、相性のよい悪いは人間関係の観点から避けられないものであり、それは仕方がないという考えからです。また、患者さんに向き合って受け入れてもらうためにスキルアップしてほしいという、看護師の成長を期待するという側面もありました。
しかし訪問看護では違ってきます。病棟の場合は、患者さんは入院して「そこにいらっしゃる」状態。しかし訪問看護は「おじゃまさせていただく」という立場。ドアを開けてもらえないと、家に上がらせていただけないと、ケアにつながりません。介入を拒否されるとスタート地点にすら立てないわけです。
もし看護師を固定してほしいと言われた場合、私はまず、なぜなのかを聞くようにしています。理由によっては改善できるからです。またそれは、当ステーションの看護の質の向上につながるありがたい意見だと思うからです。
ただ利用者さんの病状によって、毎回違う看護師が来ると落ち着かないなど不利益がある場合もあるので、そのときは対応を検討します。2~3人ほどの看護師でゆるやかな固定としたりしますが、「完全に1人に固定することはできない」と説明します。前回記載させていただいたように、弊ステーションのモットーは「チームでかかわる」です。これは利用者さんにもしっかりとお伝えていきたいことです。今まで、この説明で納得していただいています。
対人関係は練習
看護師も利用者さんも、いろいろな人とかかわることが対人関係の練習になりますよね。苦手な人はなぜ苦手なのか、細かく思考をばらして自分の気持ちを丹念にほり下げ、丁寧に理由を探っていったりすることが、看護師にも利用者さんにも必要になってきます。もしかしたら自分のイヤなところと似ているからだったり、きらいな家族と似ていたり。自分の正義感に合わないからイヤだったりなど、さまざまな理由があるでしょう。
受け持ちを完全に1人に固定するのは、当ステーションのモットーとは反するのでしていませんし、看護師も利用者さんも対人関係を練習する機会にしてほしいと思っています。
まとめ
〇理由は必ず確認する。なるべく固定にはしない。その理由もきちんと説明する。〇どうしても固定してほしいという希望があったら、訪問看護の場面では、ゆるやかに2人から3人ほどの看護師で固定する。
〇対人関係は練習!
訪問看護ステーションふく・ふく代表・管理者/精神科認定看護師
精神科看護に長年魅了されています。地域で水が流れるように精神科看護を浸透させたい!そんな思いで2023年8月に訪問看護事業所を立ち上げました。
訪問看護につながる手前の方にも、よくお話をしに伺います。人生をどのように過ごしたいか、希望はなにか?そんなことを会話のなかから探り、ストレングスの視点でかかわることが大好きです。精神科看護に魅了され、わくわく働ける看護師を多く育成したいと思っています。
時間があると登山をしながら日本中を旅しています。四季折々の日本の山々に包まれて至福のときを過ごしています。