みなさん、こんにちは。久しぶりの投稿になります。
先日このWEB記事が書籍になり発売されました。書籍は私の人生で初めての出版で、まるでかわいい子どもが世の中に出たような喜びと不安があります。光栄であり、恥ずかしくもあるような、そんな気持ちです。
いったん書籍としてまとまったわけですが、メディカLIBRARYでの記事はまだまだ続きます!
精神科訪問看護の場面で利用者さんへのボディタッチについて考える。
不安が強くて泣いている方や、本当に心を痛めている人が隣にいると、背中をさすってみたり、手を添えてみたくなりますよね。精神科訪問看護の場面ではどうでしょうか? 身体に触れることは少し慎重に考えたほうがよい場合があります。
よかれと思ってボディタッチをして訪問拒否になったケース
過去のケースですが、つらいことがあって泣いていた(同性の)利用者さんがいました。看護師が「つらかったね」と背中を触ったときに、「こわい」と利用者さんが言われたのです。
よかれと思って自然とボディタッチに至った看護師は、たいへん驚いて理由を確認しました。すると、「人がこわい、人が近くにいるとこわい」と説明してくださいました。詳細は控えますが、過去のトラウマによって、他者との距離に敏感になっている方でした。
そのあと、「あの看護師さんを見ると過去を思い出すのでこわくなるので、もう来てほしくない」という連絡がありました。
安全パイとしては触れない(同性の場合でも)
私は長く精神科看護をしています。精神科で勤務し始めたとき、医師から患者さんの体には、なるべく触らないほうがよいと説明を受けました。そのなかで、そっと手を肩に添えながら話を聞くこともありましたが、それは長く支援をしている方や、関係性が構築された方だけでした。
関係性が構築された方であっても、病歴、生活歴なども確認し、触られることでフラッシュバックのあるケース(たとえば性被害など)では、触れないようにしています。判断がつかないときや、初見の利用者さんの場合は、安易に体に触れないほうがよいでしょう。
感覚過敏の方もいらっしゃいますし、「触れないケア」によって避けられるトラブルもあると思います。
ただ、患者さんによれば触ってほしいと強く希望される方もいます(愛着障害など)。その場合は患者から抱き着いてこられます。しかし看護師が自分から触るということは、その方のパーソナルスペースを犯すことになり、デメリットが大きいです。
また病状によっては暴力の危険があるので、精神科看護では、腕一本分、開けることが基本姿勢とたたきこまれています。触ることもそうですが。距離をとって看護します。高齢者のユマニチュード看護の反対の位置にあるのかもしれませんね。
触れるケアをすることが、看護師の満足になっていないか?
支援する側である自分たちを見つめる話をしていきたいと思います。触れることで安心感を感じてもらうケアをアタッチメントといいますが、それは触れる側(看護師)にもいえると思っています。利用者さんに触れてケアをすることで、私たち看護師が「よい支援をした気持ち」になっていないでしょうか。ときどきは自分の看護を、「利用者さんはそれを望んでいるのだろうか?」「独りよがりになっていないだろうか?」と、振り返ることが必要だと感じています。
看護師の思いが利用者さんの思いと合致しないこともありますよね。
まとめ
〇判断に迷ったり初見の利用者さんのときは、ボディタッチは慎重に。〇触れるケアが看護師の満足だけになっていないか振り返ってみる。
訪問看護ステーションふく・ふく代表・管理者/精神科認定看護師
精神科看護に長年魅了されています。地域で水が流れるように精神科看護を浸透させたい!そんな思いで2023年8月に訪問看護事業所を立ち上げました。
訪問看護につながる手前の方にも、よくお話をしに伺います。人生をどのように過ごしたいか、希望はなにか?そんなことを会話のなかから探り、ストレングスの視点でかかわることが大好きです。精神科看護に魅了され、わくわく働ける看護師を多く育成したいと思っています。
時間があると登山をしながら日本中を旅しています。四季折々の日本の山々に包まれて至福のときを過ごしています。
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