みなさん、こんにちは。
精神科訪問看護の現場では、しばしば保清について悩まれる場面があると思います。「お風呂に入ってほしいけど、拒否が続く……」「家族にも入れてくださいとお願いされるけど、なかなか入ってくれない。どうしよう……」と悩み、つらい経験をしたことはありませんか? 私もありました。
今回は、そんなときに、どのように考えて支援をすればよいのかを考えました。
はじめに:なぜ「入浴」がこれほど高いハードルになるのか?
精神科訪問看護において、入浴や更衣といった保清行動の停止は、単なる「だらしなさ」ではなく、病状の悪化やエネルギーの枯渇を示す重要なサインです。 私たちはつい「清潔=善」という価値観でうながしてしまいがちですが、利用者さんにとっては「高い山、エベレストに登るほどの重労働」である可能性を、まず認識することから始まります。
アセスメント:動けない理由を4つのポイントで考よう
「入浴できない」という現象に対し、以下の4つの側面からアセスメントを深めます。
①エネルギー欠乏(うつ症状)
服を脱ぐ→浴室へ行く→体を洗うという工程が多すぎて脳がパンクしている。
②感覚過敏・違和感
お湯が肌に触れる刺激が痛い、シャワーの音が怖い、服を脱いだときの「自分自身の境界線の喪失感」などの感覚的問題。
③セルフケアの優先順位低下(精神病症状)
「自分はどうでもいい」という自己卑下や、セルフネグレクトに近い状態。
④身体的要因
低栄養や向精神薬の副作用など(ふらつき、起立性低血圧)による転倒への恐怖心。不安。
具体的な支援を考える
① 「入浴」を分解し、スモールステップを提案する
「お風呂に入りましょう!」は目標が大きすぎるので……
•「今日は着替えだけしませんか?」
•「足浴だけでしましょう。温まりますよ」
•「蒸しタオルで顔を拭くだけでもさっぱりしますよ」
② 環境調整をする
本人のやる気を待つのではなく、環境を整えます。
•浴室をあらかじめ温めておく(温度差による疲労軽減)。
•好きな音楽を流す、お気に入りのタオルを用意する(快刺激)。
•訪問時間を入浴に合わせて調整し、看護師が「そばにいる」という安心感を提供する。
③ 言葉かけの技術:命令から共感、そして「提案」へ
•NG
「病気が悪くなるから入りましょう」「臭いますよ」(羞恥心を傷つけ、拒絶を生む)
•OK
「お体が重そうですね。少しでも軽くなるお手伝いをさせてください」
「さっぱりすると、少し眠りやすくなるかもしれません」
④待つことの勇気
看護師が「なんとかしてあげたい」と焦れば焦るほど、利用者は「できない自分」を責めてしまいます。私が今回伝えたいのは、「今日洗えなかったこと」を失敗ととらえないことです。訪問の30分間、いっしょに横に座っているだけでも、それは「ともに過ごせた、孤立を防ぐ」という立派な看護介入だと思います。
まとめ
〇スモールステップで提案していく。〇入浴できない=失敗ととらえない。
〇共感的な姿勢で支援を継続する。
訪問看護ステーションふく・ふく代表・管理者/精神科認定看護師
精神科看護に長年魅了されています。地域で水が流れるように精神科看護を浸透させたい!そんな思いで2023年8月に訪問看護事業所を立ち上げました。
訪問看護につながる手前の方にも、よくお話をしに伺います。人生をどのように過ごしたいか、希望はなにか?そんなことを会話のなかから探り、ストレングスの視点でかかわることが大好きです。精神科看護に魅了され、わくわく働ける看護師を多く育成したいと思っています。
時間があると登山をしながら日本中を旅しています。四季折々の日本の山々に包まれて至福のときを過ごしています。
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