書籍『予防のためのせん妄ケア』(詳しくはこちら)の著者が、臨床で役立つせん妄の基礎知識をクイズ形式で出題・解説します。





Q

下記のせん妄の解説で、正しいのはどちらでしょうか?

A:「せん妄は、急に易怒的になったり、落ち着きがなくなったり、入院前と違った行動が出現する状態である」

B:「せん妄は、ありもしないものが見えたりする精神疾患である」




正解はこちら











[ A ]

【解説】
DSM-5-TRの、せん妄の診断基準を確認しましょう。

A→〇
DSM-5-TRでは、せん妄は「注意の障害および意識の障害」であり、「その障害が短期間(通常数時間から数日)のうちに出現し、もととなる注意および意識水準からの変化を示し、1日の経過の中で重症度が変化する傾向がある」と定義されています。さらに「認知の障害を伴う」ともされています。

【患者・家族への説明の例】
「ご本人にとっては、一種の寝ぼけのような状態です」
「高齢者の方の入院や手術や治療などの影響を受けて、身体の状態が悪くなっているときに起こるものですよ」


B→×
DSM-5-TRでは、せん妄は身体因で生じる二次的な精神症状であり、精神疾患ではありません。つまり、向精神薬を投与することでは、せん妄を治すことはできないということです。

【患者・家族への説明の例】
「せん妄は、身体の状態が悪化しているために生じた一時的な精神症状なので、精神疾患ではありません」
「身体の状態が回復していけば、せん妄症状も徐々に軽減されていくかと……」


ただし、不可逆的せん妄の場合もあるので(緩和ケアにおけるせん妄など)、個人差があるので注意が必要です。



【執筆】
吉井 ひろ子
関西医科大学総合医療センター 精神看護専門看護師

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予防のためのせん妄ケア











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「せん妄予防でするべきことなんて、耳タコだよ! やっても効果がないから困ってるんじゃない!」と疲れ切っているあなた。「するべきこと」を効果的に行えるポイントを教えます。「火消し」は消すのが仕事じゃない!火を出さないことがかっこいいんだ!


発行 : 2024年10月
サイズ : B5判 168頁
ISBN-10 : 4-8404-8522-4
ISBN-13 : 978-4-8404-8522-7


目次


・はじめに
・執筆者一覧

【第1章 せん妄はなぜ予防が大切なのか】
■1 知っておきたいせん妄の基礎知識
■2 せん妄はなぜ予防が大切なのか

【第2章 今日からできる予防の取り組み】
■1 予防のための薬剤の知識
不眠時に使用する薬剤と問題点
ベンゾジアゼピン系薬剤
オレキシン受容体拮抗薬
抗うつ薬
処方薬の整理
■2 知識を実践につなげる
せん妄の診断基準の観察ポイントを押さえる
注意と意識
変動性
認知
意識と昏睡
複数の病因
■3 外来からはじめるせん妄予防プログラム
なぜ外来からせん妄予防をはじめるのか
外来でのアプローチ
入院当日に行う評価
観察と看護計画立案
せん妄ケア

【第3章 起こってしまったせん妄への対応】
■1 明日からできるせん妄の治療
抗精神病薬を知ろう
補助療法を検討しよう
せん妄のリスクがあれば、ためらわずに薬剤を使おう
■2 せん妄のときの効果的な申し送り
不眠と不穏を見分ける
それぞれのときに使用する薬剤
治療的な申し送りで伝えること
■3 多職種で取り組む効果的な対策
精神科リエゾンチームの実際
薬剤師の役割
臨床心理士/公認心理師の役割
作業療法士の役割
医療ソーシャルワーカーの役割

【第4章 明日から使える高齢者ケアのヒント】
■1 明日からできる高齢者ケア
認知症患者さんへのかかわり
かかわるときにできる工夫
■2 地域につなぐための高齢患者のケアの見直し
高齢者を地域につなぐ
フレイルの基礎知識
フレイルを悪化させないためのケア
①睡眠
②痛み
③BPSDとの鑑別
④社会機能のリカバリ
■3 「病棟別・疾患別」の家族も含めたせん妄ケア
ICUせん妄編
一般病棟編
アルコール離脱せん妄編
緩和ケア編

【第5章 社会的な視点からみたせん妄対応】
■1 拘束・抑制と患者さんの権利擁護
一般病棟と精神科病棟の比較
身体的拘束の定義
身体的拘束の法的根拠
■2 高齢者のQOL向上のためにできること
健康寿命を延ばす取り組み
退院後のQOL低下を防ぐために
患者さんの自己効力感を高める
地域への橋わたし

引用・参考文献
索引

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