みなさんこんにちは!
ここのところ、スワンガンツカテーテル(ガンツ)についてお話ししています。

前回まではフォレスター分類についてお話ししましたが、ガンツでわかることはフォレスター分類だけではありません。

今回は「心内圧」についてお話ししますね。

何ができるようになればいいか?

ガンツは、カテーテルを進めていくなかで、その所々で圧力を測っていきます(心内圧測定)。これにより得られる圧力波形は、その所々によって違います。まずは波形を見てどこの波形かわかるようになればいいですね。また、波形の異常を見つけることによって、心臓でいま何が起こっているのか?を推測できるようになりましょう。

それでは、心臓のそれぞれの部位の圧力を見ていきましょう。

PCWP:肺動脈楔入圧

肺動脈楔入圧(〈PC〉ウェッジ)は、肺動脈の奥のほうにガンツを進めていき、風船を膨らませます(血管内で風船を膨らませるなどして血流遮断させることをウェッジといいます)。右心室側からの血流を遮断し、ガンツ先端の圧を出します(図1)。

このときのガンツ先端の圧は、どこの圧を見ているのか? それは肺の中の細かい血管を通り抜けて、その先にある左心房の圧を見ているっていうことになります。平均圧は6~12mmHgと、とても低い圧が認められます。

でも、例えば僧帽弁閉鎖不全(僧帽弁は左心房と左心室の間の弁)が起こると、左心室から左心房へ血流が逆流してきます。そのために左心房の中がパンパンに張ってしまいます。これによってPCWPが高くなってしまうってことなんですね。

PAP:肺動脈圧

肺動脈(PA)は、右心室から肺動脈に入ってすぐのところをメインPAと呼び、メインPAから左右のPAに分かれていきます。肺塞栓など肺の状況を詳しく見たいときには、左右それぞれのPA圧を見ることになります。多くはメインPAの値を記録することが多いかと思います(図2)。

先ほどのPCWPの測定の前にはPA圧を見てからウェッジさせると思いますが、このときPA圧の“ノッチ”に注目です。このノッチは肺動脈弁が閉鎖した証拠のくぼみです。もし、このノッチが不鮮明(見えない)で山がなだらかな場合は、カテーテルや圧ライン、トランスデューサーのどこかにAir(空気)が残っているために波形が鈍っている状態かもしれません。もう一度、圧ライン全体をフラッシュしてノッチが確認できるようにしましょう。

PA圧が高ければ(平均圧で25mmHg以上)肺高血圧状態であるといえるでしょう。肺高血圧状態は肺動脈の手前の右心室にとって血液を拍出するのに負荷になり、それによって右心室圧を上げることになります。この状態は右心室から血液を拍出しづらい状況であり、右心不全であると言えます。

右心不全は全身状態に影響を与え、極めて悪い状態のときもあります。

RVP:右心室圧

右心室圧で注目ポイントは、小さな山と大きな山の間のくぼみ部分、拡張末期圧(RVEDP:エンド)です。肺高血圧や右心室の収縮力が低下している状況は、右心室内の血液を送り切ることなく右心室内に血液を残してしまうため、右心室が拡張したときの圧が高くなってしまいます(図3)。

その状態では、その後も血液が拍出しにくくなってしまいます。これがエンドが高い状態です。右心不全の状況であるということが推測されます(※ほかのパラメーターとあわせて総合的に判断する必要があります)。

RAP:右心房圧

右心房圧は、なだらかな山が2つ認められますが、平均圧が高くなるってことは右心房が張っているっていうことになります。これはうっ血しているということであり、血液循環が悪い状態であることを示します。三尖弁閉鎖不全によって三尖弁逆流があるときも右房圧の上昇が認められます(図4)。

また、心房中隔欠損(ASD)は左心房と右心房との間の壁が欠損している状態ですが、この場合、左心房から右心房へ血液が流入します。そのため、左心房圧より少し低い右心房圧は左心房圧(≒PCWP)の値に近くなるということになります。

また、ガンツから血液を採取して血ガスでSpO2を見るサンプリング検査っていうものがありますが、本来、右心房内は全身を巡った血液が返ってきますのでSpO2が低くなっているはずですが、左心房から酸素化された血液が流入することによりSpO2が高くなります。この検査によって左心房と右心房のシャント率を見て手術適応かどうかなどの診断をすることもあります。

今回は心内圧についてお話ししました。
おまけで0点の取り方のムービーを置いておきますね。

心内圧を測定するときは圧の“0(ゼロ)”を取ることが重要です。特に右心系の圧は数mmHgのズレが判断を惑わすことになりかねません。しっかり“0”を確認しましょう。

では、今回はこれまで!
ありがとうございました。

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プロフィール:野崎暢仁
新生会総合病院 高の原中央病院
臨床工学科 MEセンター
西日本コメディカルカテーテルミーティング(WCCM)副代表世話人

メディカセミナー『グッと身近になる「心カテ看護」~カテ出しからカテ中の介助、そして病棟帰室後まで~』など多数の講演や、専門誌『HEART NURSING』、書籍『WCCMのコメディカルによるコメディカルのための「PCIを知る。」セミナー: つねに満員・キャンセル待ちの大人気セミナーが目の前で始まる! 』など執筆も多数。