みなさんこんにちは!

デバイスのお話をしていると思いきや、じつは看護師さんをはじめスタッフのみなさんのお仕事に直結している、というお話をしていきたいと思いますので、お付き合いのほどお願いいたします。

カテ室で使うガイドワイヤー

今回はガイドワイヤーについてお話ししていきます。カテ室で使うガイドワイヤーには、何種類かあります(図1)。

まずは、心カテするときに必ず使うであろう、0.035インチのガイドワイヤー。このガイドワイヤーは、カテーテルを血管内に進めるときに、カテーテルの中に入れて、このガイドワイヤーを先行させて血管内を通していきます。

ガイドワイヤーは水分に触れるとヌルヌルするコーティングが施されていて、血管壁を滑るようにカテーテルを目的地まで誘導していきます。

通常は「アングルタイプ」っていうものを使うことが多いかと思います。それは先端が少し曲げられた形をしているもので、特殊なものになると、上肢の血管の枝にガイドワイヤーが迷い込まないように先端が複雑な形をしているものもあります。

FFR:血流予備量比

ガイドワイヤーの中には特殊なガイドワイヤーもあります。
その一つにプレッシャーワイヤーっていうものがあります。これはガイドワイヤーでありながら、圧が測れるやつなんです。これはFFR(fractional flow reserve:血流予備量比)に使われます(図2)。

FFRっていうのは血管狭窄がどのくらいの狭窄かを知るために行われます。狭窄度合いを知るための検査には、冠動脈CTや冠動脈造影がありますが、その二つの方法とFFRは見ている視点が違います。

冠動脈CTや冠動脈造影は血管の外側から、見た目の狭窄具合を見て狭窄度を知る検査ですが、FFRはその狭窄が心筋にとってどのくらい影響があるのか? という視点で検査するものです。

川の流れを想像してみてください。
上流は勢いよく水が流れていますが、途中にある石によって、水の流れがせき止められてその下流には水がちょろちょろとしか流れていません。石がなければ川は勢いよく流れて、たくさんの水が下流にある花たちに与えられるでしょう。でも、石によって勢いが弱まってしまうと、花に十分な水が与えられなくなってしまいます(図3)。

冠動脈内の動脈硬化によってできた狭窄によって血流がせき止められ、流れが悪くなります。これは冠動脈内の血圧にも反映されるため、狭窄の末梢側は中枢側よりも血圧が下がってしまいます。末梢側と中枢側の圧力の差によって、その狭窄度合いを数値化するのがFFRです。

FFRを行うときには、冠動脈内もしくは静脈内に薬剤を投与します。これは心筋内を最も血流が流れる状況を薬剤で作り出し、その状態の圧力を測るためです。塩酸パパベリンやATP(アデノシン三リン酸二ナトリウム)、近ごろはニコランジルを使ったりもします。

安静時機能評価法

最近では薬剤を使わない方法も行われています。安静時機能評価法というもので、メーカーによって名前は異なりますが、iFRやRFR、dPRなどと呼ばれまます。これはFFRとは見ているポイントが異なりますが、評価されるものは一緒です。安静時機能評価法にて境界線の値が出たときには、FFRが追加される場合があります。

「いま、PCIを行うかどうか」については、この狭窄が本当に心筋にとってダメージがあるのか、FFRなどの機能的評価法を行って評価することを求められる症例もあります。


今回は特殊なガイドワイヤーについてお話ししました。
次回は、PCIに使われるガイドワイヤーについて、ガイドワイヤーによってどのような合併症が起こりうるのか? カテスタッフはどのような点に気をつければいいのか? みなさんのお仕事に直結するお話ができればと思っています。

では、また今度!
ありがとうございました。

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プロフィール:野崎暢仁
新生会総合病院 高の原中央病院
臨床工学科 MEセンター
西日本コメディカルカテーテルミーティング(WCCM)副代表世話人

メディカセミナー『グッと身近になる「心カテ看護」~カテ出しからカテ中の介助、そして病棟帰室後まで~』など多数の講演や、専門誌『HEART NURSING』、書籍『WCCMのコメディカルによるコメディカルのための「PCIを知る。」セミナー: つねに満員・キャンセル待ちの大人気セミナーが目の前で始まる! 』など執筆も多数。