みなさんこんにちは!
今回は特殊なバルーン「パーフュージョンバルーン(Perfusion Balloon)」をご紹介します。
風船を使用すると起こること
パーフュージョンバルーンは、時には患者さんの命を救う救世主として仕事をします。
普通の風船は、風船を膨らませると冠動脈の血流は遮断され、心筋に血液が流れない状況になります。そのために、心電図は心筋虚血を示すSTが変化することもあるし、何よりも患者さんは「胸が痛い」などの症状が出てくることがあります。
風船を膨らませる時間が長ければ長いほど、その症状は強くなり持続します。
通常多くの場合、風船の拡張時間は15秒から30秒程度かと思います。病変を拡張する目的ならばこれぐらいの時間を数回すれば内腔拡大を得られることが多いかと思います。
しかし、風船の拡張は内腔拡大が目的ではないこともあります。
PCIでは予期せぬ出来事が起こることがあります。
#043の「ガイドワイヤー編③冠動脈穿孔止血法」をもう一度確認してみてください! この#043では、ワイヤパーフォレーションのお話をしました。ワイヤパーフォレーションが起こったときの対処をお話ししましたが、もう一つ方法があります。それが今回お話しているパーフュージョンバルーンを用いる方法です(図1)。
パーフュージョンバルーンの特徴
とあるパーフュージョンバルーンには、バルーンの手前(体外側)に16個、バルーン先端側(冠動脈末梢側)には8個の穴が開けられています。この穴を通じて血液が流れる構造になっています。これにより風船を膨らませても末梢に血液が流れるようになり、心筋虚血の低減を期待することができます。血流が確保できることで、長時間の風船拡張が可能になるわけです。
冠動脈穿孔のほか、急性心筋梗塞のときに冠動脈内に多量の血栓がある場合の血栓を押さえ込み、ステント内再狭窄のときに新たにステントを留置したくないときなどは、長時間の風船拡張が功を奏することもあり、パーフュージョンバルーンが使用されることもあります。
パーフュージョンバルーンは末梢に血液を流すことはできますが、通常通りの血流が得られるわけではありません。心筋虚血はじわじわと進む場合はありますので、心電図変化や患者さんの症状の変化にはいつも通り十分に注意しなくてはなりません。
ガイドワイヤーを通じてパーフュージョンバルーンは目的の場所まで運ばれていきますが、拡張した後にガイドワイヤーをパーフュージョンマーカーまで引き抜くと、より多くの血流を得ることができます。
パーフュージョンバルーンは、緊急的に使用されるものです。
ふだん物品出しをしていない人も、デバイスのことはお任せ!っていう人も、
・このデバイスはどこにあるのか?
・このデバイスはどんなサイズがあるのか?
・このデバイスはどんなものなのか?
だけでも知っておくようにしましょう!
今回はここまで!
また次回もよろしくお願いします!
ありがとうございました。
新生会総合病院 高の原中央病院
臨床工学科 MEセンター
西日本コメディカルカテーテルミーティング(WCCM)副代表世話人
メディカセミナー『グッと身近になる「心カテ看護」~カテ出しからカテ中の介助、そして病棟帰室後まで~』など多数の講演や、専門誌『HEART NURSING』、書籍『WCCMのコメディカルによるコメディカルのための「PCIを知る。」セミナー: つねに満員・キャンセル待ちの大人気セミナーが目の前で始まる! 』など執筆も多数。