みなさんこんにちは!
前回の#048に引き続き、風船治療しているときの私たちの目線についてお話ししていきます。
風船治療のときの私たちの目線
1.症状
2.心電図変化
ここまでが前回のお話しでした。今回は3と4についてお話しします(図1)。
3.その他のバイタルサイン
4.冠動脈造影 透視・撮影画像
3.その他のバイタルサイン
PCI中のバイタルサインといえば心電図に集中しがちですが、最も大切なのはやっぱり血圧です。血圧の変動は心筋虚血によって起こり得ます。心筋虚血の始まりは多くの場合、心電図の変化から起こるので、心電図を監視しておくことは血圧の変動につながるかもしれないと予測を立てるということになります。
PCIでは冠動脈の狭窄を拡張させ血管がきれいになった!と満足できるのですが、じゃ、いままで細くしていた動脈硬化はどこにいったの?
動脈硬化は少なからずとも、末梢の枝や細かい血管に流れ、詰まってしまっていることが推測されます。これによって一時的かもしれませんが、急性心筋梗塞状態に陥っているんですよね。
ということは、心筋の動きは悪くなっている状態なので、心臓の本来の仕事である血液の駆出に影響が考えられ、それによって血圧の変動が起こり得ます。
バルーンを膨らませているときだけでなく、バルーンを膨らませ終わった後でも影響が出る可能性があるのです。
血圧が下がることによって冠動脈の血流が落ちるので、心筋にダメージを受けている状況では、さらに血圧を下げてしまう要因になってしまいます。
モニタリングをしっかりして、少しの変化でも見逃さず、血圧が下がり始めたら早めにコールし、昇圧薬の準備をしておきましょう。
4.冠動脈造影 透視・撮影画像
透視画像は、ついついオペレーターのものと思いがちですが、私たちにとってもとても重要な情報です。透視画像は次のことに注意しておきましょう!
①拡張させる場所(1)
⇒風船を拡張させる以下の血管の栄養範囲
⇒栄養範囲が大きければ大きいほど何かが起こる!
⇒心電図を含むバイタルサイン・症状確認強化!
②拡張させる場所(2)
⇒風船を拡張させる場所に枝はない??
⇒大きな枝がある場合には心電図変化の起こる場所が追加される
⇒例)前下行枝(→ V2-4)治療の場合、大きな対角枝がある(+Ⅰ誘導・aVL誘導)
⇒冠動脈のカタチが私たちの視点を変える!
③拡張したあと(1)
⇒血流があるかどうか?
⇒風船を拡張したあとに血流がなくなる場合があります
⇒心電図変化や症状が持続する場合があります
また血圧が下がったりすることがあります
PVCやVT/VFなどの重症不整脈が出現することがあります
④拡張したあと(2)
⇒血管が解離している場合があります
⇒急いでステントを入れないといけない場合があります
⇒心電図変化や症状が新たに出現したり、持続する場合があります
また血圧が下がったりすることがあります
PVCやVT/VFなどの重症不整脈が出現することがあります
風船治療のときの私たちの目線いかがでしたでしょうか?
見るべき目線はたくさんあります。同時にすべてを見ることは難しいかもしれません。落ち着いて効率よく見ていくことが大切ですね。些細な変化を見逃さない、それがプロの仕事になるのかもしれません。
今回は、これでおしまい!
また、次回もよろしくお願いします。
新生会総合病院 高の原中央病院
臨床工学科 MEセンター
西日本コメディカルカテーテルミーティング(WCCM)副代表世話人
メディカセミナー『グッと身近になる「心カテ看護」~カテ出しからカテ中の介助、そして病棟帰室後まで~』など多数の講演や、専門誌『HEART NURSING』、書籍『WCCMのコメディカルによるコメディカルのための「PCIを知る。」セミナー: つねに満員・キャンセル待ちの大人気セミナーが目の前で始まる! 』など執筆も多数。