みなさんこんにちは!

前回までは血圧モニタリングのお話をしてきました。今回は、その流れで心電図の具体的なモニタリングする目線のコツ・ポイントについてお話ししていきたいと思います。

心電図のモニタリングで大切なこと

心電図をモニタリングするときにまず大切なことは、「心電図をめっちゃ見る」ではなく「カテの進行状況を見る」ということです。

心電図はなーんにもしていないのに勝手に変化したら、それはそれでたいへんです。カテ中の心電図の変化はたいていの場合、心臓に対して何かがイタズラしたからその影響で変化してしまうのです。そのイタズラ(本当はイタズラではなく必要なことをしているんですけどね)は、どんなことをしているのか?ということを知れば、心電図のどこがどのように変化するのか予測をつけることができます。

12個の波形を一つ一つ、そして一拍一拍、同時にモニタリングするのは、おそらくお釈迦さんでも難しいでしょう。でも、一つ一つの変化を見逃してはならないんです。そのためには、ある程度の予測を立ててモニタリングをすることが大切です。

では、心電図を変化させるイタズラについて考えてみましょう。

心電図を変化させるカテの手技

心電図に変化が起こるカテ中の手技には以下のものがあります。今回は①と②について詳しく解説します。

①カテーテル挿入による冠動脈解離
②左心室へのカテーテル迷入
③冠動脈へのAir注入
④造影剤投与による血液不足
⑤カテーテルによる血流遮断
⑥ガイドワイヤ先端による血管穿孔
⑦IVUSでも血流途絶
⑧バルーン拡張による血流遮断
⑨薬剤投与による心電図変化
⑩削るデバイスによる心電図変化
⑪痛み・苦痛による心電図変化

①カテーテル挿入による冠動脈解離

カテーテルは生体にとっては硬い異物。入口の見えない冠動脈を求めて、透視下でカテーテルを操作して、カテーテルの先端が冠動脈入口付近をさまよいます。そのカテーテル先端によって冠動脈の入口や上行大動脈を傷つけ、解離を起こしてしまうことがあります。

解離は一カ所傷つけると、その部分だけでなくピキピキピキと解離が伸び(解離の伸展)、血管全体的に一瞬で広がっていきます。冠動脈が解離すれば、血管の縦方向のみならずスパイラル状にグルグル巻くようにして末梢まで解離が伸展してしまいます。そうすると一瞬で冠血流がなくなり、心筋虚血を起こしてしまいます。

これにより心電図は変化していきます。右冠動脈にカテーテルを挿入しているとき(エンゲージ)はⅡ・Ⅲ・aVF、左冠動脈にカテーテルをエンゲージしているときはaVLと、胸部誘導を中心にSTの変化について観察します。

ただ、心電図だけ見ていては、いつ変化するかもわからないし、いま変化するときなのかどうかはわかりません。まずは透視を見て、カテーテルの先端が冠動脈の入口付近に到達すれば、引き続き透視でカテーテル先端の挙動を見ながら心電図の注目すべきところに目をやります(図1)。

②左心室へのカテーテル迷入

カテーテルを冠動脈にエンゲージするとき、最初はカテーテルの中にガイドワイヤーを入れてカテーテルを心臓の近くまで挿入していきます。そのときには、ガイドワイヤーを先行させてカテーテルを進めていきますが、そのガイドワイヤーの先端が左心室に迷い込んで入ってしまうことがあります。そのガイドワイヤーが左心室の心筋を突っつくので心室期外収縮(PVC)が出ることがあります。

カテーテルは、その後ガイドワイヤーを抜き、圧ラインに繋がれます。圧ラインからはカテーテル先端の圧波形が出ます。カテーテル単体になってもカテーテルが左心室に迷入することもあります。その際には、圧波形が左心室の圧波形へと変わります。左心室の圧波形に変われば、カテーテルが心筋を突いてPVCが出る前に、すぐに施行医に伝えて不整脈を防ぎましょう!

ルーチンのときにガイドワイヤーやカテーテルによってPVCが出ても、滅多にそれ以上のことが起こることはありませんが、急性心筋梗塞などの緊急症例ではそのPVCによって心室細動(VF)に移行する可能性が高くなるので、特に緊急カテーテルでは施行医にPVCが出たこと、圧波形が左心室波形になったこと伝えてください。


さて、今回はカテ中の手技によって起こりうる心電図の変化についてお話ししました。まだまだ手技によって起こりうる心電図変化があります。次回以降にお話ししていきます。

今回はここまで。
ありがとうございました。

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プロフィール:野崎暢仁
新生会総合病院 高の原中央病院
臨床工学科 MEセンター
西日本コメディカルカテーテルミーティング(WCCM)副代表世話人

メディカセミナー『グッと身近になる「心カテ看護」~カテ出しからカテ中の介助、そして病棟帰室後まで~』など多数の講演や、専門誌『HEART NURSING』、書籍『WCCMのコメディカルによるコメディカルのための「PCIを知る。」セミナー: つねに満員・キャンセル待ちの大人気セミナーが目の前で始まる! 』など執筆も多数。