みなさんこんにちは!

前々回の#064からカテ室での血圧についてお話ししています。

今回は#064#065でお話しした血圧を用いて、どうモニタリングしていくかを考えてみましょう。

心カテ室での血圧測定

心カテ室では次の3つで血圧を測定することができると前回前々回もお伝えしました。
①カテ先圧(カテーテルを通じて持続的に測定できる観血血圧)➡#064参照
②NIBP(マンシェットによる非観血血圧)➡#065参照
③シース圧(シースの側枝にトランスデューサーを接続して測る観血血圧)➡#065参照


それぞれの圧の特徴はわかっていただけましたか?
では実際にどのようにして血圧をモニタリングをしていくのか、#064でお話しした「正確な圧を伝えられないAtoG」を確認しながら、この後の話にお付き合いください。

正確な圧を伝えられないAtoG(図1)

(A)カテーテル先端が血管壁や動脈硬化にあたってるとき
(B)カテーテルがキンク(捻れ)したとき
(C)カテーテルが冠動脈の中に入り込んでいる
(D)カテーテル内にデバイスが入っているとき
(E)Yコネが開いているとき
(F)インサーターが入っているとき
(G)造影剤が入っているとき

カテ中の血圧モニタリングの仕方

1.ベースの血圧

基本となるのはまずはNIBP(non-invasive blood pressure:非観血血圧)ですね。これがベースの血圧となります。

2.持続的な血圧モニタリングの始まり

カテーテルが体内に入ったら観血血圧が表示されます。持続的なモニタリングの始まりです。このときにベースの血圧(NIBP)と比較して差があるかどうか? どのくらい差があるのか? を確認します。

3.もし、血圧が低下したら?

カテ先の圧を見ていて血圧が低下したときに思い出していただきたいのは、上記した「正確な圧を伝えられないAtoG」です。まずカテーテル内が「AtoG」のような状況ではないかを確認しましょう。

4.みんなに状況を伝える

カテーテル内が「AtoG」のような状況でないときは、本当に血圧が下がっている可能性が高いということになります。すぐ医師とカテスタッフみんなに伝えます。

■血圧が下がっている要因を考えてみよう!
もし、直前に硝酸薬(ニトロ)を投与していたときであれば血圧は下がるものです。このとき、みんなに伝えてももちろん悪くはないですが、当然の変化といえば当然の変化です。慌てることはありません。でも、そのときに症状が出ていたり、心電図変化があったりしたときに血圧が下がったというような場合には要注意です。危険信号をみんなに迅速に発信しましょう。血圧のモニタリングは状況判断が大切です。血圧だけをモニタリングしているのではなく、他のバイタルサインも含めて複合的に判断することが大切です。

5.圧が鈍っているとき

カテーテル内が「AtoF」のような状況であれば、そのままモニタリングを続けます。圧が鈍っている状況であれば、表示されている圧より実際の血圧の方が高いと考えていいでしょう。最初に測定したNIBPを参考に鈍り出したときの圧と比較して、おおよその現在の血圧を想定します。鈍っているなりに圧が維持されていることをモニタリングします。圧がそれ以上に低下し出した場合には、迷うことなくNIBPを測定しましょう。そのときNIBPも低下していれば、すぐにDr及びカテスタッフみんなに伝えます。

6.血圧だけでなく他のバイタルも!

圧鈍りが起こっているときに、心電図変化や患者さんの症状が出てきたとき、冷汗などの様子がおかしいときにはすぐにNIBPを測りましょう。やはり状況判断が大切です。

■NIBPを頻繁には測らない!カテは観血血圧が見えてます!
NIBPは観血血圧が表示されている限り頻繁に測る必要はありません。少なくとも圧鈍りが起こっていない状況でNIBPを測定する必要はありません。訛りのない観血血圧で血圧が下がっていれば、NIBPでも血圧が下がっていて当然です。そんなことはまずあり得ませんが、観血血圧で血圧低下している状況で、NIBPが高く正常であったとしても、血圧低下に対して処置を行わないということはあり得ません。そのためNIBPを測る必要はありません。

■NIBPにより輸液が止まります!
もうひとつ大切なことは、カテ中はNIBPのマンシェットを巻いている腕と同側に点滴ラインが繋がっていることが多く、NIBPを測定するたびに腕が締まり、点滴が落ちなくなってしまい、薬剤投与も滞ってしまいます。血圧が低くなったときこそ昇圧薬などを投与しなくては、その事態を脱却することはできません。注意深く観血血圧をモニタリングしましょう。

最後に

血圧モニタリングは、さまざまな状況判断が必要になります。カテーテル内の状況を知るためには、カテの進行状況もわかっていなくてはなりません。

手技は医師がするもの!というのではなく、モニタリングするためにはカテの進行状況を確認しながら手技とリンクしてモニタリングしていきましょう。

勝手に、いきなり、血圧が下がることはほぼありません。また、何の予兆もなく、症状も含めた他のバイタルの変化もなく、血圧だけが低下することもほぼありません。何らかの侵襲を加えたために、他のバイタルとともに、血圧は低下していきます。

広い視野を持ってモニタリングするようにしましょう!


それでは今回はここまで。
ありがとうございました。

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プロフィール:野崎暢仁
新生会総合病院 高の原中央病院
臨床工学科 MEセンター
西日本コメディカルカテーテルミーティング(WCCM)副代表世話人

メディカセミナー『グッと身近になる「心カテ看護」~カテ出しからカテ中の介助、そして病棟帰室後まで~』など多数の講演や、専門誌『HEART NURSING』、書籍『WCCMのコメディカルによるコメディカルのための「PCIを知る。」セミナー: つねに満員・キャンセル待ちの大人気セミナーが目の前で始まる! 』など執筆も多数。