みなさんこんにちは。
今回は重症な急性心筋梗塞についてお話しします。
急性心筋梗塞による心原性ショックの特性
急性心筋梗塞による心原性ショック、これは極めて死亡率が高い病態のことをいいます。原因は広範囲の左室収縮力低下です。
心原性ショックであるかどうかは以下の4つの点を見極める必要があります。
1.収縮期血圧90mmHg未満または平常時より30mmHg以上の血圧低下
2.乏尿(20mL/時未満)
3.意識障害
4.末梢血管収縮(四肢冷感、冷汗)
これらすべてを満たしている場合、心原性ショックであると考えられます。
ショック患者のうち、急性心筋梗塞により救急搬入された時点で心原性ショックと判断された例は約9%といわれていますが、発症後6時間以内で47%、24時間以内で74%に増加します。
ではなぜ増加するのでしょうか?
それは、来院時点で重症心不全やプレショックの診断が十分になされていないことや、バイタルがようやく代償され維持されている患者に対して、血圧低下作用のある薬剤が投与されたことなどによって血行動態破綻を招いてしまった、というようなケースが存在するからともいわれています。
つまり、いかにショックの前兆の有無を的確に把握し対応することが大切なのかを考えさせられるデータと言えるのではないでしょうか。
ショックの前兆を見極める手段として、いま一度下記のバックナンバーを読み返してみてください。
#015 大変です!ACSかも!!~救急室で手をスリスリ。足をスリスリ。プロフェッショナルの仕事です~
#016 大変です!ACSかも!!~ここをまずみる!要観察 POINT1to7~
ショックを防ぐアセスメントの重要性
ST上昇型の急性心筋梗塞後の心原性ショック患者の約10~15%では体内水分量が不足しているといわれています。また30%では胸部X線上肺うっ血所見は認めないともいわれています。観血血圧で血行動態を把握しながら、カテコラミン・利尿薬の投与、そして輸液量の調整を行うことが非常に重要です。
血圧が下がってから気づいては遅いことがあります。例えば、自尿が減ってきたのであれば腎臓に血液が十分に入っていないことが考えられます。水分量が少ない状態で利尿薬を投与してしまうと状態を悪化させるだけです。
いま、体の中で何が起こっているのか? どういう状態なのか? をしっかりアセスメントすることが非常に重要です。また、知っておかなくてはならないことは、例え血圧が90mmHg以上あったとしても腎臓に十分な血液が流れていない状況は、それはショックの状態と言えるということです。「組織の低灌流状態をショックという」ということを忘れてはなりません。
あなたの観察力が患者のショック状態に陥ることを防ぐかもしれません。またプレショックの状態から這い上がらせることができるかもしれません。
今日はここまで。
ありがとうございました。
新生会総合病院 高の原中央病院
臨床工学科 MEセンター
西日本コメディカルカテーテルミーティング(WCCM)副代表世話人
メディカセミナー『グッと身近になる「心カテ看護」~カテ出しからカテ中の介助、そして病棟帰室後まで~』など多数の講演や、専門誌『HEART NURSING』、書籍『WCCMのコメディカルによるコメディカルのための「PCIを知る。」セミナー: つねに満員・キャンセル待ちの大人気セミナーが目の前で始まる! 』など執筆も多数。