
みなさんこんにちは。
今回は前回に引き続き急性心筋梗塞の重症な合併症についてお話しします。
右室梗塞
右心室はおもに右冠動脈が養っています(#003、#004を参照)。その右冠動脈が詰まってしまって右心室が虚血になってしまった場合の合併症「右室梗塞」は、とても重症に陥ることが多いです。
右冠動脈閉塞による下壁梗塞の約半数が右室の虚血になります。そのうち問題となる右室梗塞の合併率は10~15%といわれていて、その予後は不良であるともいわれています。
右室梗塞による低心拍出状態発生機序は次の2つです(図1)。
1.血液が左室に届かない!
2.左室が心地よく拡張できない!
右室梗塞によって低心拍出状態が発生する機序としては、右室収縮力の低下による左室の前負荷減少。つまり右心室の動きが悪くなって左心室に十分な血液が送り出せなくなってしまっている状態であることがひとつあります。
そして右室拡張に基づく心室中隔左方偏位および心嚢内圧上昇による左室のコンプライアンス低下。つまり右室の動きが悪くなって、右室と左室の間の壁、中隔が右室から左室のほうへボテーッと膨れるとともに心臓の周りの袋心嚢の圧が上昇したために、左心室が心地良く拡張することができなくなってしまいます。この2つが低心拍出状態に陥らせます。
図1
右室梗塞の3つのサイン
右室梗塞は次の3つのサインで見極めることができます。
1.低血圧 ショック
低血圧を示す下壁梗塞は右室梗塞の可能性があります。
2.静脈怒張Kussmaul徴候
首を見ていると吸気時に頸静脈がプクッと膨れたら、それはKussmaul(クスマウル)徴候といいます。このサインは右室梗塞の可能性があります。
3.呼吸性変動血圧奇脈
観血血圧がみられている状態で血圧に注目してください。呼吸(吸気時)に合わせて血圧が10mmHg以上低下していれば、それは奇脈の可能性があります。これも右室梗塞の可能性があります。
今回、お話しした右室梗塞はとても重症な心筋梗塞といえます。まずは今回お話しした、「右室梗塞がなぜ低心拍出状態になるのか」というイメージを持つことと、「右室梗塞かもしれない3つのサイン」を見逃さないことが大切です。
次回はこの右室梗塞のときの対処についてお話しします。
では今回はここまで。
ありがとうございました。
新生会総合病院 高の原中央病院
臨床工学科 MEセンター
西日本コメディカルカテーテルミーティング(WCCM)副代表世話人
メディカセミナー『グッと身近になる「心カテ看護」~カテ出しからカテ中の介助、そして病棟帰室後まで~』など多数の講演や、専門誌『HEART NURSING』、書籍『WCCMのコメディカルによるコメディカルのための「PCIを知る。」セミナー: つねに満員・キャンセル待ちの大人気セミナーが目の前で始まる! 』など執筆も多数。




