こんにちは!
前回#015では、ノリア・スティーブンソン分類(Nohria-Stevenson分類)についてお話ししました(図)。
今回は、手と足をスリスリしたあとにみてほしいズバリPOINT1to7についてお話しします。
見逃してはならない7つの指標
【POINT 1】意識状態の確認
意識状態の確認をしてください。もし傾眠傾向にあれば要注意です。心臓から血液が十分に拍出されておらず、脳に血液が十分に届いてない場合があります。
【POINT 2】頻脈
心拍数はどうでしょうか? 心拍数と血圧、心臓からの血液の拍出は密接な関係があります。心拍数が100回/分以上の頻脈であった場合には要注意です。拍出する血液の量が少なくなってしまったために、心臓が動く回数を上げて送り出す血液量を補っているのです。
【POINT 3】小さい脈圧
血圧を測りましょう。血圧の上と下、収縮期圧と拡張期圧の差が30mmHg以下であれば要注意です。十分に血液が拍出できていないサインです。
【POINT 4】尿量低下
尿の量は血行動態の把握に重要です。心臓から拍出される血液の量が少なく、腎臓にまで血液が届かず尿が作りにくくなります。
これら、POINT1-4は心臓から血液が十分に拍出されているかどうかの指標となります。これが良くない状態であった場合には、低心拍出症候群(low cardiac output syndrome:LOS )である可能性が高いと言えます。
【POINT 5】起坐呼吸・息切れ
呼吸状態を確認しましょう。臥位で症状が増悪するため、患者さんみずから座位になりたがる起坐呼吸。これは、心臓からの拍出がうまくいかず、心臓に返ってくる血液が多くなって右心系や肺に血液がうっ滞してしまうことから起こるもので、心臓に血液が返りにくくするために上体を起こしたくなるのですね。
息切れも心不全症状の一つですね。
【POINT 6】頸静脈怒張
うっ滞は、首の静脈でもみることができます。首の静脈をみてみるとプクッと膨れた状態が頸動脈怒張です。心臓に返ってくる血液が渋滞してしまっているために、首のあたりの静脈まで渋滞が伸びて静脈がプクッと膨れてしまうのですね。
【POINT 7】浮腫
浮腫もうっ滞により起こる現象です。うっ滞した血液が、血管やリンパ管外に染み出し、皮下組織(間質)に過剰に貯留することを浮腫と呼びます。
これら、POINT5-7は心臓の動きが悪く、心臓に返ってくる血液のうっ滞から起こるうっ血所見です。うっ血性心不全に認められる症状を見逃してはなりません。
重症を見極める第一歩
患者さんの手足をスリスリしながら
暖かいか? 冷たいか? Warm or Cold
乾燥しているか? 湿っているか? Dry or Wet
Wet and Cold は超重症なサインです。
あわせて
【POINT 1】意識状態の確認
【POINT 2】頻脈
【POINT 3】小さい脈圧
【POINT 4】尿量低下
【POINT 5】起坐呼吸・息切れ
【POINT 6】頸静脈怒張
【POINT 7】浮腫
を観察!
救急・急変では、迅速な判断が必要になります。
道具がなくとも、検査ができていなくても、目の前の患者さんが重症かどうかを見極め、このあと起こりうる事態に備えなくてはなりません。
重症患者さんを看る、第一歩目は貴方の「手」と「感覚」です。
では、今回はここまで。
ありがとうございました。
新生会総合病院 高の原中央病院
臨床工学科 MEセンター
西日本コメディカルカテーテルミーティング(WCCM)副代表世話人
メディカセミナー『グッと身近になる「心カテ看護」~カテ出しからカテ中の介助、そして病棟帰室後まで~』など多数の講演や、専門誌『HEART NURSING』、書籍『WCCMのコメディカルによるコメディカルのための「PCIを知る。」セミナー: つねに満員・キャンセル待ちの大人気セミナーが目の前で始まる! 』など執筆も多数。