# 心カテ中、何に気をつければいいかわからない
# 心カテ前の患者さまを安心させたい
# 患者さまからの心カテについての質問に答えられない
# この患者さまはカテ室でどのようなことをされてきたのか?
# カテ終わり 術後合併症?!


こんにちは!
今回も心カテについてお話ししていきますね!
前回は穿刺部位のお話をしました。さて、いよいよ心カテが始まります。

局所麻酔

注意するポイントは次の2つです。
・キシロカインショック
・迷走神経反射

1.キシロカインショック(アナフィラキシーショック)

キシロカインショックとは、薬剤によるアレルギー性の反応のことです。キシロカインショックの発生頻度は1%未満、10万人に1例程度で、キシロカイン(リドカイン)は比較的安全性の高い薬剤といわれています。

症状は、発疹や掻痒感(かゆみ)が起こり、頻脈・血圧低下が認められ、場合によっては咽頭浮腫による気道閉塞や、最悪の場合は心停止に至ることもあります。いわゆるアナフィラキシーショックの状態です。

キシロカイン投与後2分程度で初期症状である皮膚反応が起こることが多く、10分を超えたあたりからさらに重症症状を認めることが多いといわれており、より早期に発見することがとても重要です。

対処としては、まずはショックに対してアドレナリンの投与、ステロイドの投与・点滴によるウォッシュアウトを迅速に行います。また、この後に起こりうる重症化に対応するため、バッグバルブマスクをはじめ救急処置物品の準備をしておくこと、そして血圧低下などに備えて昇圧薬の準備をすることが重要です。

キシロカインショックと思われていた症状が、実はリドカインそのものが原因ではなく、バイアル(瓶)に入っている防腐剤等の添加物が原因となっていることもあるのではないかといわれています。最近では防腐剤の入っていないバイアルもありますが、ポリアンプの製品もあるので、これを使うと防腐剤の影響は防げますね(図1)。

2.迷走神経反射(通称:ワゴッた)

心カテにいまから挑むとき、多くの患者さまはとても緊張されています。また、局所麻酔の痛みが出る場合もあります。これにより迷走神経反射(vaso vagal reaction:VVR=ワゴトニー〈通称:ワゴッた〉)が起こる場合があります。

迷走神経反射は、極度の緊張・強い痛みによって副交感神経が活発になり症状を引き起こします。副交感神経が活発になるので、急激に心拍数が落ちます(#001「心臓って」参照)。それに伴い血圧も低下し、脳血流が低下するため顔面蒼白・意識消失が起こる場合があります。また、迷走神経は腹部に多く存在するため、嘔気などの症状も伴います。症状の発症は穿刺直後に起こることが多いです。

対処としては、まずは心拍数を上げることが先決です。アトロピンの投与を急ぎます。ただし、アトロピン投与の際にはいま一度モニターを確認し、依然として徐脈が続いていることを必ず確認してから投与することが重要です。

アトロピン投与後は正常心拍を超えて頻脈になり、それによりさらに嘔気症状などを引き起こす場合があります。迷走神経反射は数分で症状が改善することが多いため、心拍数が戻ってからのアトロピン投与は頻脈にさせてしまうだけのことになるので、必ずモニターを確認してから投与しましょう。

なによりも、極度に緊張している患者さまや痛みの強い患者さまの場合は、特に、特に近くに寄り添いバイタルサインに注意しましょう。

穿刺のタイミングでは、キシロカインショックと迷走神経反射が起こりうります。両者は同じようなタイミングで起こりますが、対処は異なります。このときこそ患者観察しているスタッフのアセスメント力が問われます。

両者の違いを知っておくことで、重症化する前に先手先手で対処することができます。ポイントは心拍数。頻脈か? 徐脈か? で見極められることが多いです。

今回は、穿刺(局所麻酔)のタイミングで起こりうること2つについてお話ししました。何が起こっているのか? それは患者さまが教えてくれます。患者さまから発せられるバイタルサイン、心電図・血圧・Sp02、そして訴え・顔色・表情・発疹……などなど、患者さまを観察すると、いま何が起こっているのかがわかります。


では、今回はここまで。
お付き合いありがとうございました!

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プロフィール:野崎暢仁
新生会総合病院 高の原中央病院
臨床工学科 MEセンター
西日本コメディカルカテーテルミーティング(WCCM)副代表世話人
メディカセミナー『グッと身近になる「心カテ看護」~カテ出しからカテ中の介助、そして病棟帰室後まで~』など多数の講演や、専門誌『HEART NURSING』、書籍『WCCMのコメディカルによるコメディカルのための「PCIを知る。」セミナー: つねに満員・キャンセル待ちの大人気セミナーが目の前で始まる! 』など執筆も多数。