# 心カテ中、何に気をつければいいかわからない
# 心カテ前の患者さまを安心させたい
# 患者さまからの心カテについての質問に答えられない
# この患者さまはカテ室でどのようなことをされてきたのか?
# カテ終わり 術後合併症?!


こんにちは!
今回のテーマはこちら!

カテーテルが冠動脈に挿入される際は5つのことに注意しましょう!

(A)to(E)(図1


カテが冠動脈の入口に来たときにはこの5つのことが起こりえます。それによってどうなるのか? 何が変化するのか? それは事前に予知できるのか? そんなお話をしていきます。

(A)PVCからのVF ガイドワイヤ(またはカテーテル)の左心室迷入

左心室内の心筋をガイドワイヤー・カテーテルで突くことにより発生する左室期外収縮(PVC)の発生の確認、そしてカテ先の血圧(観血血圧)が出ている場合は、血圧が左心室様の圧になっていないかを確認します。多くの場合はPVCが発生しても大丈夫なことが多いのですが、特に緊急カテーテルなどの心筋にダメージがある場合は、そのPVCがきっかけとなって心室細動(VF)を誘発してしまうことがあります。PVCが出た場合・圧が左心室圧になっている場合は、術者と周りのスタッフに教えてあげましょう!

(B)冠動脈側枝へのカテーテル挿入

特に右冠動脈のときは要注意です。右冠動脈の入口付近に円錐枝(conus branch:コーヌスブランチ)っていうのがあります。カテーテルを挿入したときに、たまたまこのコーヌスブランチにカテーテルが入ってしまった場合、VFが起こることがあるのです。これは円錐枝が右室流出路っていうところ付近を養っている血管だからと言われています。右室流出路付近にはVFになるスイッチみたいなものが存在しているので、コーヌスブランチの入口をカテーテルで塞ぐことによって右室流出路付近に血液が流れなくなり、虚血となってVFのスイッチを押してしまうっていうことなんですね。

(C)冠動脈解離 カテーテルによる冠動脈の解離

カテーテルは血管にとって硬い異物です。カテーテルが冠動脈の入口を傷つけてしまう可能性があります。小さな傷であれば修復される可能性もありますが、ときに血管の上から下まで一気に解離していく(裂けていく)可能性があります。そうなれば血流が滞り、心筋虚血になり、胸部症状とともに心電図変化、はたまた血行動態の破綻に至ることがあります。

(D)心筋虚血 カテーテルによる冠動脈血流の遮断

冠動脈の入口に動脈硬化があって狭窄している場合に、カテーテルを挿入すると、カテーテルの太さによって血流が遮断されることがあり、心筋虚血が起こる可能性があります。胸部症状とともに心電図変化に要注意です。

(E)造影剤アレルギー

造影剤アレルギーは、造影剤の投与量に比例するものではありません。ごく少量の造影剤量でもアレルギーが発生することがあります。カテーテル挿入時に、冠動脈にカテーテルが入っているか少量の造影剤を注入して確認します。このときからアレルギーの発生リスクがありますので、患者さまの痒みなどの症状・首や脇などに発赤がないか?などの観察をしておきましょう。これまでの経緯のなかで薬剤によるアレルギーを起こした既往のある患者さまは特に注意して観察していきましょう。私自身が経験したもっとも重症だったアレルギー症状は、一瞬で起こった喉頭浮腫を鮮明に記憶しています。それからというもの、アレルギーの確認は必ずドレープをめくって患者さまの首を重点的に確認する、またSpO2の低下を確認するようにしています。

#私たちのチェックポイント
カテーテルが冠動脈入り口に近づいたら

■モニターを観察(A)(B)(C)(D)(E)
 ➡不整脈の出現(PVC・VF)
 ➡ST-Tの変化
 ➡観血血圧 動脈圧波形(左心室圧波形になっていないか)
 ➡血圧低下(必要ならばNIBP測定)
 ➡SpO2 

■胸部症状の確認(C)(D)
 ➡掻痒感・くしゃみ・欠伸
 ➡発赤(首・脇など)
 ➡喉頭浮腫

カテ中の観察は、漠然と観察していては大切なサインを見逃す危険があります。いま、手技は何をしているのか? それによって何が起こるのか? これを考え、それに対して何を見ておくべきか? 何を準備しておくべきかを考えることによって効率よく、万が一のときにはスピーディーに対処ができるようになります(図2)。

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プロフィール:野崎暢仁
新生会総合病院 高の原中央病院
臨床工学科 MEセンター
西日本コメディカルカテーテルミーティング(WCCM)副代表世話人
メディカセミナー『グッと身近になる「心カテ看護」~カテ出しからカテ中の介助、そして病棟帰室後まで~』など多数の講演や、専門誌『HEART NURSING』、書籍『WCCMのコメディカルによるコメディカルのための「PCIを知る。」セミナー: つねに満員・キャンセル待ちの大人気セミナーが目の前で始まる! 』など執筆も多数。