# 心カテ中、何に気をつければいいかわからない
# 心カテ前の患者さまを安心させたい
# 患者さまからの心カテについての質問に答えられない
# この患者さまはカテ室でどのようなことをされてきたのか?
# カテ終わり 術後合併症?!


みなさんこんにちは!
今回は、冠動脈造影(CAG:coronary angiography )で冠動脈を見るコツのラストです!

今回のお話にお付き合いいただくと、
・カテスタッフから病棟スタッフへ冠動脈造影の結果を申し送るべきこと。
・申し送り受けた病棟スタッフであれば、カテスタッフが何を伝えたいのか。
・施行医が治療する必要があるかどうか悩んでいる理由。
・冠動脈造影の注目すべきポイント。
などがわかることを目標に下記の順にお話を進めていきたいと思います。

「冠動脈造影ココがポイント!1・2・3」
1.よく見えるビュー(角度)を探せ!(#028参照
2.3本の冠動脈どれが大きくてどれが小さい?(#029参照
3.狭窄の度合いはどれくらい?(#030参照
おまけ:冠動脈の特徴を見極めろ!(今回はコチラ!
・糖尿病患者さんの冠動脈
・透析患者さんの冠動脈
・痙攣する冠動脈

これまで上記の1~3についてお話ししてきましたが、今回はおまけの「冠動脈の特徴を見極めろ!」です。特徴的な冠動脈についてお話ししていきます。

糖尿病患者さんの冠動脈

動脈硬化のリスクファクターは、高血圧や脂質異常症・喫煙歴などがありますが、糖尿病も危険なリスクファクターの一つです。

糖尿病患者さんの冠動脈の特徴は、全体的に血管が細いことが多いのです。多くの冠動脈の太さは4~5mmくらいから始まり、末梢でも2-2.5mmくらいはありますが、糖尿病患者さんの冠動脈を造影してみると、末梢は1mmあるかなと思うくらい細くなってしまっています()。

これは動脈硬化の病変がいくつもあるため血流が乏しくなり、血管が痩せ細ってしまっているのかもしれません。そして、その病変は透視でもわかるくらい石灰化が見えていることが多いのです。

血管径が細いと非常に治療がやりづらくなります。細いところにはステントは入れにくいし、広げにくいため、成績が悪い。ステントをなるべく入れなくてもいいように、風船で広げようとしても動脈硬化の石灰化がキツかったら広がらない。非常に治療がしづらくなります。

まずは冠動脈の上流側(近位側:proximal)から治療して血流を十分に流した後、数カ月後にフォローアップの造影を行うと末梢血管が太くなっていることがあります。

透析患者さんの冠動脈

透析患者さんの冠動脈CTを撮像すると白く輝くものが多く認められます。これは冠動脈の動脈硬化についた石灰化で、ミネラル(リン・カルシウム)の代謝バランスが崩れやすいことが原因になります。

血管内を超音波(IVUS)で血管の中を覗いてみると、白く光る石灰化が360°全周性に付いていることが多いです。こうなると石灰化が硬いため、風船では広がらない場合もあります。それどころか、石灰化が強すぎて風船などの治療デバイス(道具)が通過しないこともあります。そこで登場するのがローターブレーター(Rotablator™/ボストン・サイエンティフィック ジャパン)。ダイアモンドチップがついたドリルで石灰化を削り取る治療をします。

痙攣する冠動脈

安静時狭心症っていうものがありますね。早朝、就寝中に胸が痛くなることが特徴の狭心症です。これは冠動脈が攣縮(血管が痙攣すること)することによって冠動脈の血流が悪くなり、一時的に心筋虚血が起こり、胸痛が出ます。

この安静時狭心症を確定診断するために冠動脈造影が行われます。ただの冠動脈造影ではありません。冠攣縮誘発試験っていうのをします。これについては次回で詳しくお話しすることにします。

一般的に、冠動脈造影で心筋虚血を起こすような動脈硬化がないというのが、造影の診断材料の一つになりますが、冠動脈を詳しくみてみると攣縮が起こっている部分は動脈硬化が進行しやすいことがわかっています。攣縮が血管にダメージを与えることによって、動脈硬化が進行しやすくなるのかなって思います。

ただ、ふだん起こっている胸痛発作がその動脈硬化によるものではなく、冠動脈の攣縮によるものだと診断するのが冠攣縮誘発試験ってことになります。

今回は特徴的な冠動脈についてお話ししました。 冠動脈って人によってさまざま。一人ひとり顔が違うように、冠動脈もまったく同じカタチはありません。この患者さんはどんな冠動脈かな?って思いながら見てみるのも勉強になるかもしれません。


それでは今回はここまで。
ありがとうございました。

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プロフィール:野崎暢仁
新生会総合病院 高の原中央病院
臨床工学科 MEセンター
西日本コメディカルカテーテルミーティング(WCCM)副代表世話人
メディカセミナー『グッと身近になる「心カテ看護」~カテ出しからカテ中の介助、そして病棟帰室後まで~』など多数の講演や、専門誌『HEART NURSING』、書籍『WCCMのコメディカルによるコメディカルのための「PCIを知る。」セミナー: つねに満員・キャンセル待ちの大人気セミナーが目の前で始まる! 』など執筆も多数。