みなさんこんにちは!

今回は、33回目にして初めて私の本職!? ME機器についてお話しします。前回の#032「冠動脈造影 こんな検査もあります!アセチルコリンって?」のなかでも出てきたテンポラリーペースメーカーのお話です。

テンポラリーペースメーカが登場する4つの場面

テンポラリーペースメーカーは、次のようなさまざまな場面で登場します。
①救急などで洞不全症候群・高度房室ブロック・両脚ブロックの患者さんが来たとき
②急性冠症候群、特に右冠動脈が原因の下璧心筋梗塞では房室ブロックなどによる徐脈になったとき
③冠攣縮誘発試験(特にアセチルコリン負荷)のとき
④ローターブレーター®︎などの高速回転式経皮経管アテレクトミーカテーテルにて治療するとき(特に右冠動脈の治療のとき)

テンポラリーペースメーカー植込みの流れ

静脈にシースを挿入して、そのシースからペーシングカテーテルを右心室に挿入します。

準備するもの(図)

①シース
②ペーシングカテーテル
③テンポラリーペースメーカー本体
④中継ケーブル
以下、必要に応じて
⑤固定のための糸(絹糸など)
⑥固定のための針(当院は18G注射針)
⑦透明保護フィルムドレッシング

静脈にシースを入れる

多くの場合、ペーシングカテーテルは5Frの太さなのでシースは5Frで入ります(太さが異なるカテーテルもあるので事前に確認してください)。

患者さんの状態が悪いとき、特に血圧が保てないようなときには折角静脈にシースを入れるので、そのシースから昇圧薬などの薬剤を注入する場合があります。そのときシースが5Frでカテも5Frだったらシースの内腔がキツキツになっているため、薬剤を注入することができません。そんなときには、あえて太めのシース6Frを入れておくのもいいかもしれません。

テンポラリーペースメーカーを留置したまま病棟に帰るときは、シースの中にカテーテルを入れていると抜けやすくなるので、シースを抜いた状態でカテーテルのみを留置して固定する場合があります。

そんなときには太めのシースを入れると、挿入部から出血してしまうことがあるので、なるべくカテーテルとあったサイズのシースにするほうがいいでしょう。シースサイズについては術者と相談してください。

穿刺部位の選択

穿刺部位はシチュエーションによってさまざまです。
【鼠蹊部】緊急カテの時などは鼠蹊部から挿入することが多い。
【上腕肘】アセチルコリン負荷試験のときなどは上腕肘から挿入することもある。
【頸静脈】病棟で長期間留置する場合には頸静脈から挿入することが多い。

※上腕肘と頸静脈(上大静脈挿入用)からの場合と、鼠蹊部(下大静脈挿入用)からの場合とでは、カテーテルの形状が異なります。間違って出さないように注意が必要ですね。

ペーシングカテーテル挿入

ペーシングカテーテルの先端がシースから出れば、先端の風船を膨らませて、静脈の血流に乗せてペーシングカテーテルを進めていきます。

【注意】カテーテル先端が右心室に入ったら、ここからは心電図モニターから目を離してはいけません。特に急性冠症候群のときには要注意です!

心室の心筋をペーシングカテーテルが突いたらPVC(心室期外収縮)が出ます。このPVCによって心室細動が誘発される可能性があるからです。急性冠症候群のときには高い頻度で心室細動になると考えておいていいでしょう。

PVCが出たら、なるべくPVC連発を防ぐ意味でも、カテ室内のみんなに心室細動なるよ!という意味でも、「PVC出てます!」ってみんなで確認し合いましょう!

夜中に緊急テンポラリー!って言って呼び出されることもありますね。テンポラリーは早ければ15分くらいで終わるので、けっこう油断して対応してしまうこともあるあるかもしれません。

でも……私には苦い経験が。緊急テンポラリーで心室細動になって、そこから心室細動が戻らず、PCPS(人工心肺装置)の導入になった症例を経験しました。それ以来、私はテンポラリーも油断してはならぬ、と思って対応しています。

特に、心機能の悪い患者さんのテンポラリーでは、まずはPVCの連発を防ぐことが大切です。


次回以降は、ペーシングカテーテル挿入の続き、病棟でのテンポラリーペースメーカーの管理などをお話ししていこうと思います。

今回はここまで!
ありがとうございました。

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プロフィール:野崎暢仁
新生会総合病院 高の原中央病院
臨床工学科 MEセンター
西日本コメディカルカテーテルミーティング(WCCM)副代表世話人
メディカセミナー『グッと身近になる「心カテ看護」~カテ出しからカテ中の介助、そして病棟帰室後まで~』など多数の講演や、専門誌『HEART NURSING』、書籍『WCCMのコメディカルによるコメディカルのための「PCIを知る。」セミナー: つねに満員・キャンセル待ちの大人気セミナーが目の前で始まる! 』など執筆も多数。