ここには12枚の『問い』が書かれたカードがあります。
ゲストが、それぞれ選んだカードに書かれた『問い』について、インタビューを通じてゆっくり考えていきます。
カードには何が書かれているか、ゲストにはわかりません。
ここでの『問い』とは、唯一の正しい答えがあるものではなく、思考を深め、さらなる問いを生んだり、生涯にわたって何度も問い直したりするような本質的なもの。
そして、ゲストの考えや価値観、人柄に触れるようなものが含まれています。
簡単に答えは出なくても、こうした考える時間自体に意味があるのかもしれません。
いま、少しだけ立ち止まって、あなたも自分や周りの人に問いかけ、想いを馳せてみませんか。
卒業後は500床ほどある大阪の急性期病院に就職。看護師8年目のときに現在の大阪市立総合医療センターに転職。現在は医療安全管理部で専属として勤務。
著書・編集:『術前術後ケアの疑問、3分で解説します!』『かんテキ 消化器: 患者がみえる新しい「病気の教科書」』『消化器に配属ですか?! : すごく大事なことだけギュッとまとめて教えます!』/メディカ出版
『先輩ナースが書いた看護のトリセツ』『先輩ナースの看護メモ』/照林社など
小児科4年、整形外科・泌尿器科・内科系の混合病棟3年、その後、派遣で1年ほどクリニックや施設、ツアーナース、保育園などさまざまなフィールドで勤務。現在は整形外科病棟で非常勤をしながらライターとして活動して5年以上経つ。最近の楽しみは、仕事終わりのお酒と推しとまんが、それと美味しいごはんを食べること。
出会いが導いた、今の自分
白石:
久保さんはじめまして! 実は久保さんが携われた看護のトリセツとその続編の本は、家用と職場用に買ってしまったくらい大好きな本です!(他社さんですみません笑)
久保:
それはご活用いただき、ありがとうございます! 今日はよろしくお願いします。
白石:
久保さんといえば、消化器系の書籍も執筆・編集されているので、てっきり消化器病棟で今もご勤務されているのかなと思ったんですが、今は異動されたんですね。久保さんのこれまでのご経歴についてお伺いしていいですか。
久保:
僕が看護師になったのは19年前とかになるんですけど、そもそもなぜ看護師を目指したのか、というところから話していいですか。特別、人の役に立ちたくて看護師を目指したとかじゃなかったんですよ。当時『ナースマン』ってドラマがあって、そこで看護師という職があることを知って。当時はあまりやりたいこともなかったんで、なんとなく看護学校に行ったんですね。そこのある実習で、ストーマ造設の患者さんを何人か受け持ったときに、WOCの人がすごくかっこよく見えたんです。そのまま、WOCの人に憧れて同じ病院に卒業後就職しました。それが最初に勤めた500床規模の急性期病院ですね。
こんな動機で入職したので、消化器外科病棟に配属されましたが、消化器外科のことよりもWOCのことがやりたかったので、ストーマや褥瘡のことばかり勉強している1年目でしたね。それから、WOCになるには、消化器系だけやっていたらあかんなと思って、4年目からは泌尿器科病棟に異動して、ウロストミーの方面も勉強するようになりました。ただ、ここはあまり記事にはできない内容なんですけど、紆余曲折ありまして、WOCになりたい熱は冷めてしまって……。さらに、当時いた病棟が泌尿器科の単科ではなく、呼吸器外科や心臓血管外科などの外科系もある病棟で、そこにいた医師が栄養について熱心に治療されていたこともあって。栄養のことをもっと知りたい、もっと極めたいと思うようになったんですよ。なので、WOCだけでなく、ストーマや栄養のことをやりたいと。それからは、外部のセミナーなどによく行くようになりました。
白石:
最初の入職のきっかけから、ものすごいエネルギーを感じるエピソードですね。WOCになりたい気持ちからストーマや栄養のことを極めたいと。
久保:
そうなんです。そこで、あるセミナーに行ったときに今の病院長の西口先生と出会いました。西口先生はストーマや栄養の界隈では有名な医師なこともあって、先生のもとで学びたい、働きたいとなって、看護師8年目ごろに転職しました。それが今の大阪市立総合医療センターですね。当時、西口先生は消化器外科部長だったので、消化器外科病棟の希望を出して配属になり、直々にいろいろ教えてもらって、充実した看護師生活を送るようになったんです。
白石:
西口先生とはセミナーからの出会いだったんですね。一緒に本も書かれていますよね。
久保:
西口先生は元々たくさん本を書かれていて、看護師向けの本も書かれていたんです。そこで、「本書いてみいひんか」と言われて、『術前・術後ケアの「これって正しい?」Q&A100』という本を一緒に内容を考えて執筆して。そこから、今度は共同で編集や執筆もしてみないかと任せてもらえるようになり、トントンといろいろな本を書くきっかけとなりました。執筆活動は自分のなかではすごく仕事のモチベーションになっている部分ですね。
そのころ、本業はというと、5~6年ほど教育の担当を任されていたこともあり、教育を専門的に学びたい気持ちが出てきて、院内の教育研修センターへの部署異動の希望を出していたんです。ところが、数カ月後に看護部長から呼び出されて言われたのは、「久保くん、教育に興味あるんやな。教育もいいんやけど、医療安全に興味ない?」と。当時は別に医療安全には全然興味なかったんですけど、「別に興味ないこともないです」みたいに答えたら、翌年に医療安全管理部に異動になったという、それが2020年とかの話ですね。そこから今の部署で専門的にやっています。
看護師が主体でかかわれる、医師とディスカッションできる醍醐味
白石:
転職や異動のきっかけがなんとも独特な感じがありますね。いろいろ気になることがあるんですけど、最初の病院で働くきっかけともなった、WOCの看護師さんがかっこよかった、とのことでしたが、たとえばどんな場面を見てそう感じたんでしょうか。
久保:
患者さんへのストーマ指導とかの場面でもそうなんですけど、医師と対等にやりとりしている感じがかっこいいなって。医師や看護師、患者さんからも一目置かれていて、当時はみんなカリスマって呼んでいましたね。
白石:
そんな憧れのWOCの看護師さんがいる病院に入職して、なにか一緒にお仕事されたり、学んだりしたことで印象に残っていることはありますか。
久保:
自分としては弟子入りしたいくらいの気持ちだったんですけど、当時その方はWOC専属だったんで、一緒に働いていたわけではないんですよね。ストーマケアとか褥瘡の回診のときに病棟に来てくれて、そこでいろいろ教えてもらうような感じでした。それで1年目の頃から、研究会や学会に行きなさいと言われて、1年目の6月ごろに初めて地方会に参加していましたね。「井の中の蛙になるんじゃなくて、ちゃんと外に出て行って情報収集しなさい」ということを、よく言われていて、それを忠実に守っていたと思います。
白石:
そこから、WOCになる熱が冷めてしまって、とのことでしたが、その後何年か消化器病棟で働かれるなかで、その熱が再燃するとかそういうことはなかったんですか。
久保:
そうですね。一度あきらめてからはなかったですね。WOCだけをやりたくないという気持ちのほうが強くなったというか、ストーマや褥瘡だけじゃなく、栄養など幅広くやりたいという気持ちのほうが強くなりました。
白石:
私が消化器外科病棟の経験がないから、ちょっとイメージがついていないかもしれないんですけど、看護師がストーマとか栄養を学ぶ面白さみたいなのは、どういったところにあるんでしょうか。
久保:
どちらも看護師が主体でかかわれる面白さがあるのが、魅力でしょうか。ストーマケアも看護師が装具を選択したり、指導したりできますよね。また、勉強すればするほど、装具の選択も難しいんですけど、自分の考えたケアで患者さんがよくなっていく様子を間近で見られるのはうれしいんですよ。ストーマケア好きな人が多いのは、そういうところかなって、僕もその魅力にとりつかれたひとりでしょうね。
白石:
以前WOCの看護師さんが、ストーマの装具を選択するのって、その人の体形に合ったものかどうかだけではなくて、その方のニーズや私生活の様子、仕事でどういう姿勢を取ることが多いのかなど生活背景まで考えて選択することの難しさを語られていたことがあって。そういうことまで考えるのか、と驚いたんですよね。
久保:
まさにそうです。そこは看護師ならではの強みが大いに生かせる部分かなと思います。栄養は、どちらかというと、ちゃんと投与したからといって、患者さんが劇的によくなるばかりではないし、すぐに効果が目に見えるわけではないんですけど。栄養について勉強すると、いろんな病態生理にかかわってきて、そういうことを勉強するのが面白いと感じますね。とくに消化器外科では食べられない患者さんが多いので、その栄養の知識がより必要になってくると思います。業務に生かせる部分が多いなって。
白石:
業務に生かせる部分が多いというのは。
久保:
栄養といっても、たとえば静脈栄養の知識だったら、CVCやCVポート、PICCなどの管理方法も学ぶことになりますし、点滴の組成やTPN、PPNとか、医師でも専門的に詳しくない人もいるので、そういったところを看護師として医師とディスカッションできるのは、魅力に感じますね。
医療安全の文化を育む働きかけ
白石:
現在は医療安全管理部で働かれて4年になるそうですが、この部署ではおもにどんな役割でどんな仕事をしているんでしょうか。私のイメージだと、インシデントレポートのチェックとか、監査の際の医療安全のラウンドとかの印象が強いですが。
久保:
そうですそうです。それも大事な仕事のひとつです。あとは実際に起こった医療事故の対応ですよね。それに医療事故が起こらないようにマニュアルの見直し、職員に対して情報提供や周知、研修などもしています。細かなことを話すといろいろあるんですけど、そもそも医療安全管理部の目的は、病院内の医療安全の文化を醸成するみたいなところなんです。そのための働きかけを一番大事にしていますね。
白石:
医療安全部門で働くとなると、なにか資格とか研修が必要なんでしょうか。医療安全管理者みたいな。
久保:
そうですね。40時間の医療安全管理者養成研修は取りました。ただ、僕は責任者というわけではなく、うちの病院は1,000床規模で看護師が約1,200人、全職員合わせると2,400人近くいるので、医療安全管理部も看護師が5人いるんですよ。そのうちのひとりです。
白石:
元々異動したきっかけも、別に希望だったわけでもなく、興味があったわけではないところから、実際4年働かれてみて、正直患者さんとのかかわりとかも減って病棟に戻りたいとかそういう気持ちとかはないんですか。逆に医療安全の面白さを知ったみたいなこともあるんでしょうか。
久保:
たしかに希望した異動ではないですし、患者さんとのかかわりは今ゼロですね。ほぼデスクワークなんで、妻には事務職って言われていますけど(笑)。でもやってみるとけっこう楽しいことも多いですよ。いろんな病棟のインシデントの分析やデータ解析して対策を立てるのが好きなのもあるかもしれないですけど。今はここに来てよかったなって思います。
今までの僕は、どちらかというと医療安全を軽視していた人間だったので。効率を重視しがちというか。だから、医療安全管理部に来て、医療安全ってやっぱり大事なんだなってそこを学べたことは、自分のなかで大きいなって思います。今後の看護師人生にすごく活きるだろうなって思いますね。
白石:
なるほど。効率化も医療安全と通ずるものがあるようにも感じますが、その考えが変わったきっかけというか、出来事ってなにかあったんですか。
久保:
はっきりとした出来事があったわけじゃないですけど、そもそも医療安全のことをまったくわかっていなかったんですよね。院内で起きている医療事故がこんなに多いのかということも病棟にいたときは知らなかったし、その実情を知って、安全って大事なんだなって、たぶん誰もがここにいたらそう思います。
でも、医療安全の大切さを伝えるってすごく難しいです。まだまだ個人としても、病院全体としても課題ではありますね。一朝一夕でなるようなものでもないので、長い目でやっていかないといけない。大半の看護師や職員が、過去の自分のように医療安全のことはわからないと思うので。そういう人たちでも、事故が起こらないようなシステム、環境、組織づくりが大事だと思います。個人の責任の問題だけではなく。
立地のいい大阪での暮らし
白石:
それでは、こちらの質問カードからお好きなものを選んでください。
久保:
じゃあ右から3番目で。
白石:
「あなたが今住んでいる街について教えてください」です。私は都内に住んでいるんですけど、久保さんは大阪にお住まいでしょうか。
久保:
そうです、今は大阪市の都島区に住んでいます。実は病院も同じ区内にあって、職場に近いところを選びました。まぁ、通勤が面倒くさいというだけの理由なんですけど(笑)。でも、立地がすごくいいんです。大阪の一番の繁華街である梅田まで地下鉄で2、3駅。JRでも3駅くらいで行けるので、アクセスがすごくいいんですよ。
白石:
わりと大阪の中心部に近いところなんですね。
久保:
最近は梅田もすごく綺麗になって、うめきた公園という大きな公園ができて。ぜひ大阪に来られた際には行っていただきたいですね。住んでいる駅前にはマクドや吉野家、ロイヤルホストなどの飲食店がたくさんあったり、スーパーやドラッグストアが近くにあったり、ベルファというショッピングモールもあったりと、暮らしやすい環境です。
白石:
そうしたら、通勤は徒歩とか自転車ですか。
久保:
徒歩で15分くらいですね。電車通勤は避けたくて。人身事故とかで遅れることも多いですし。市内だと車を持っている人もいますが、僕は持っていないんです。必要なときはカーシェアを利用しています。イケアやコストコに行ったり、妻の実家に行ったりくらいですね。普段の移動は電車で十分です。
白石:
なるほど~。久保さんは普段の休日、どのように過ごされているんですか。土日祝休みになるんでしょうか。
久保:
そうなんです。今はカレンダー通りで。2ヶ月ほど前に子犬を飼い始めたので、まだ外に連れて行けなくて。あまり遠出はできないんですが、その前は、妻と一緒によくディズニーランドやジブリパークに行ったりしていました。
白石:
ええ、ディズニーがお好きなんですか。
久保:
実は最初、そんなに興味はなかったんです。でも妻が好きで、何度も通ううちに、今では僕のほうが好きになってしまったかもしれません(笑)。とくにパレードやショー、グリーティングが好きです。乗り物よりも、キャラクターに会って写真を撮ったり、ディズニーならではの雰囲気を楽しんだりするほうが好きですね。
白石:
そうなんですか~私はディズニーは近いからか、いつも混んでいるからか、意外と行かないんですよね。もう10年くらい行っていないかもしれません(笑)。大阪といえばUSJも近いですが。
久保:
ユニバはですね……
白石:
ユニバ!(イントネーションが新鮮!)
久保:
あ、関西の人は「ユニバ」って呼ぶんですけど(笑)。行かないことはないんですが、そんなに頻繁には行きませんね。マリオエリアができてからもまだ行けていないんです。すごく混んでいるみたいで。でも、ディズニーが近かったら、きっと頻繁に通っていたと思うんですけどね……。
白石:
わりとオンオフはっきり分けて楽しむタイプなんでしょうかね。
久保:
どうでしょう、執筆が立て込むと、休みの日はずっと自宅で書いているので、あまりオンオフ分けられてないなと思います(笑)。
何事もちゃんとやろう、一つひとつ真剣に向き合うスタイル
白石:
じゃあ、もう1枚質問のカードを引いてもらいましょう。
久保:
左から2番目で。
白石:
「あなたにとって働くとは」ですね。
久保:
難しい質問ですね。いやぁ、なんだろう……。ちょっと思い浮かばないので、働く上で大事にしていることでもいいですか。
白石:
いいですよ~。
久保:
大事にしているのは、求められていること以上のことをするということです。スピードであったり、クオリティであったり。頼まれた人が想像している以上のものを出そうと心がけています。ただし、それを人には求めないということも大事だと思っています。
白石:
なるほど。そもそも、求められていることをきちんと理解することも、なかなか難しいなと思うんですけど、久保さんはどんなことを意識されていますか。
久保:
まずはコミュニケーションを取ること、対話ですね。ただ、すごく自分のなかで意識しているかというと、そこまでではないかなぁ。とにかく、自分で勝手にこれが求められているんだと、独りよがりになってはいけないとは思っています。たとえば今日も、メディカ出版さんからプランナーの依頼があって、いただい企画内容を見て、もっとこうしたほうがいいのになぁと思うことがあったんです。でも、自分勝手に進めるのではなく、ちゃんと対話しながらやっていかないといけないと感じたところでした。
すごく自分に自信があるかというと、そうでもないと思うし、すごく当たり前で、抽象的なことかもしれないけど、何事もちゃんとやろう、しっかり時間をかけて考えて、調べて、真剣に向き合おうって感覚ですね。一つひとつの仕事は。
白石:
でもそれって、通常業務だけではなく、執筆活動とかもあわせてってことですもんね。
久保:
そうですね、執筆が立て込むと、休日も作業しないといけないですけど、でも不思議と苦になりません。それは、働くということに関して、僕は自分本位では長く続かないと思うんです。人のために働く、人に喜ばれることをする。そういう意識が大切なんじゃないでしょうか。
白石:
それって、西口先生に執筆しないかと言われてこれまでやってきたことが、求められること以上の成果を出すことにもつながるんでしょうか。
久保:
たしかに、そう思うようになったのは執筆を始めてからかもしれないですね。看護師の仕事で、病棟業務で求められること以上って、なかなか明確に言葉にしづらいというか、わかりにくいなと思うんですけど。今の執筆のことや医療安全の仕事では、結果や評価がわかりやすいこともあって、だんだんとそういうマインドになったんだろうと思います。
たとえば、西口先生から最初に本の執筆をお願いされたとき、消化器外科のQ&Aがテーマだったんで、病棟の看護師に「なにか質問あったらここに書いておいて」とメモを置いていたんですけど、それでほとんど誰も書かないわけです。だったら……って僕が100個くらい質問を考えて書いたんですけど(笑)。それは単純に、尊敬している先生の役に立ちたいという思いからでした。名をあげようとか、そういう気持ちはまったくなかったんです。そこで、まずは自分のことを評価していただけたのかなって。
今振り返ると、人の役に立つことが、自分のなかですごくやりがいになっているように感じます。そういった意味では、仕事とプライベートの区別があまりないのかもしれません。休日でも仕事のことを考えていますし、執筆活動もしています。「働くとは」をひとことで語るのは難しいんですけど、自分のなかではなんだか生活の一部のような感覚で、そんなに特別なことをしている感覚はないですね。
続けることで広がる可能性、その少し先を見据えて
白石:
それでは、「あなたが後輩の看護師に伝えたいことはありますか」という最後の質問です。
久保:
僕の看護師人生は、実は希望通りにいかないことが多かったと思うんです。WOCになりたいと思っていましたが、その夢は潰えてしまって。教育をやりたいと思っていたけど、医療安全に異動になった。でも、WOCの夢が潰えた後も、ストーマや栄養という新しい興味を見つけることができたし、医療安全に来てみたら、すごくやりがいがあって楽しいです。今の世の中は「やりたいことをやろう」という風潮がありますが、僕は流れに身を任せて、続けていくことも大事だと思っています。
白石:
なるほど。ただ、若い看護師さんは、自分の得意や好きがまだよくわからないとか、なにをどう続けていけばいいのか、という悩みを持っている人も多いと思うのですが、そういう方に向けてアドバイスはありますか。
久保:
ちょっと答えになっているか自信がないですけど、得意や好きを見つけるために、まずはなにか業務で役立つことを始めてみるといいと思います。たとえば消化器外科病棟にいるなら、栄養のことを勉強してみるとか、心電図を勉強してみるとか。好きかどうかはそのときわからなくても、とにかくやってみる。そうすると、その分野で周りから頼られるようになっていって、そこから新しい可能性が広がっていくと、自分の経験でも思います。
白石:
最初はなにか当たりをつけて、とりあえず行動してみて、自分がどう感じるかを考えていけるといいですよね。続けていくこと、信頼を得ることの大切さについて、そうするとどういういいことがあるんでしょうか。
久保:
続けていくことで、周りからの信頼を得られるようになり、周りからの信頼を得ると、より多くの機会が与えられるようになります。そうすると仕事が楽しくなっていく。仕事って、 最初から楽しいわけではないと思うんです。たとえば、僕の場合は上司や編集者からの評価が大きなモチベーションになっています。本業での仕事も、副業での執筆活動も、誰かに認めてもらえることがうれしいんです。
ただ、これは自分本位で働いていると長くは続かないと思うんですよ。それだけでは難しくて、人のために働くという意識が重要だと思います。とくに若手の看護師さんは自分のことで精いっぱいだと思いますが、少し先を見据えて、視野を広げていってほしいですね。
インタビュアー・白石弓夏さんの著書

私もエールをもらった10人のストーリー
今悩んでいるあなたが元気になりますように
デジタルアートや3Dプリンタを看護に活用したり、看護をとおして一生の出会いをつかみ取ったり、在宅のほうが担い手が少ないから訪問看護に従事したり、苦しかった1年目のときの自分を手助けできるようにズルカンを刊行したり、医療と企業の橋渡しをするためにスタートアップに就職したり、悩みながらも新生児集中ケア認定看護師の道をまっすぐ進んだり、ロリータファッションモデルとして第一線で活躍しながら看護師を続けたり、目的に応じて疫学研究者・保健師・看護師のカードをきったり、社会人になってから「あっ、精神科の看護師になろう」と思い立ったり……。
さまざまな形・場所で働く看護師に「看護観」についてインタビューしようと思ったら、もっと大事なことを話してくれた。看護への向き合い方は十人十色。これだけの仲間がいるんだから、きっと未来は良くなる。「このままでいいのかな?」と悩んだときこそ、本書を開いてほしい。
目次
◆1章 クリエイティブな選択肢を持つこと 吉岡純希
◆2章 大きな出会いをつかみ取ること 小浜さつき
◆3章 現実的な選択肢をいくつも持つこと 落合実
◆4章 普通の看護師であること 中山有香里
◆5章 ものごとの本質をとらえる努力をすること 中村実穂
◆6章 この道でいくと決めること 小堤恵梨
◆7章 好きなことも続けていくこと 青木美沙子
◆8章 フラットに看護をとらえること 岡田悠偉人
◆9章 自分自身を、人生や仕事を見つめ直すこと 芝山友実
◆10章 すこしでも前を向くきっかけを作ること 白石弓夏
発行:2020年12月
サイズ:A5判 192頁
価格:1,980円(税込)
ISBN:978-4-8404-7271-5
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