ここには12枚の『問い』が書かれたカードがあります。
ゲストが、それぞれ選んだカードに書かれた『問い』について、インタビューを通じてゆっくり考えていきます。
カードには何が書かれているか、ゲストにはわかりません。

ここでの『問い』とは、唯一の正しい答えがあるものではなく、思考を深め、さらなる問いを生んだり、生涯にわたって何度も問い直したりするような本質的なもの。
そして、ゲストの考えや価値観、人柄に触れるようなものが含まれています。
簡単に答えは出なくても、こうした考える時間自体に意味があるのかもしれません。
いま、少しだけ立ち止まって、あなたも自分や周りの人に問いかけ、想いを馳せてみませんか。



ゲスト:大森 泉
山梨県の看護学校卒業後、同県内の250床規模の総合病院に新卒で就職。消化器・呼吸器内科病棟2年、透析室2年、循環器病棟6年、再び透析室5年と、15年間勤務。循環器病棟在籍中に大学院の慢性疾患看護専門看護師コースに進学し、3年かけて修了。その後、3次救急の総合病院で2年間勤務を経て、訪問看護ステーションに転職し現在3年目。慢性疾患看護専門看護師として、透析医療とACPの専門性を活かした在宅ケアに従事している。2026年4月に『病棟看護師・訪問看護師が知りたい透析患者さんのQ&A』を刊行。

インタビュアー:白石弓夏
小児科4年、整形外科・泌尿器科・内科系の混合病棟3年、その後、派遣で1年ほどクリニックや施設、ツアーナース、保育園などさまざまなフィールドで勤務。現在は整形外科病棟で非常勤をしながらライターとして活動して5年以上経つ。最近の楽しみは、仕事終わりのお酒と推しとまんが、それと美味しいごはんを食べること。

「仕事が遅い」「レールに乗れない」新人時代の苦悩

白石:
大森さん、今日はよろしくお願いします。私、大森さんとは5~6年のお付き合いがあるので、いろいろと昔の話も知っているんですけど、今日はあらためてこれまでどんなところで働いてきたのか、お伺いできればと思います。

大森:
山梨県の看護学校を卒業して、そのまま山梨県内の250床くらいの二次救急をみている総合病院に新卒で就職しました。最初は消化器・呼吸器の混合内科病棟に配属されて2年、その後透析室に異動になって2年。次の異動が循環器病棟で、循環器内科・外科の混合、心臓カテーテル室兼務、CCU兼務というところで6年間働きました。そして、今度は希望で透析室に異動して5年。山梨の病院では合計15年間働いていました。

その後、いろいろと思うところがありまして……今思えば「気の迷いだった」って言っているんですけど(笑)、3次救急バリバリの総合病院に転職しました。泌尿器科、形成外科、口腔外科みたいななんでも屋さんな病棟で2年間働いて。そこでスカウト型の転職サービスで声をかけていただいて、訪問看護ステーションに転職して、今3年目になります。

白石:
最初の病院で異動が多かったのは、そういう病院の方針だったんですか。

大森:
異動する人はやたらと異動する、異動しない人は全然しないみたいな、よくわからない人事でした。僕は異動組に当たってしまったんですけど、たぶん最初の透析室への異動は左遷感がありましたね。

1年目の頃、本当に仕事ができなかったんです。今から20年前なので、当時は「新人教育に個別性を」みたいなことが言われていなくて、「レールの中でいかに成長していけるかが評価される」というところで、レールに乗れなかった。休日の日勤も任せられない、当然夜勤も任せられない。同期たちは3~4か月くらいで夜勤をやり始めていたのに、僕は2年目に入ってからでした。

白石:
同期と差がついてしまったのは、たとえばどんな場面で。

大森:
仕事がめちゃくちゃ遅かったんですね。業務として流れに乗るのが苦手で。自分が納得いかないと次に進めない、わりと理屈屋さんな部分があって。根拠がわからないと次に全然進めないんです。けれど、小さい頃から勉強は苦手だったので、その根拠をちゃんと理解できるまでの学習にも時間がかかる。だから「仕事が遅い」とよく言われていました。

白石:
それでも2年目になって夜勤ができるようになったのは、なにが突破口になったんでしょうか。

大森:
けっこう精神的にもつらかったりもしたんですけど、1年目の頃のプリセプターは見捨てないでくれました。同期たちと比べて落ち込む自分がいたんですけど、「比べるのは昨日の自分だよ」ってもう常日頃から言われていて。事あるごとに言っていただいて……。

あとは経験が増える中で、いろいろなものがつながっていった。つながると根拠がわかってくるから、今度は応用が利いてくるようになりました。

「つまらない」と思った透析室で見つけた、患者さんに近い看護

白石:
勉強が苦手ということがありながら、その後大学院に進学されたわけですが、どんなきっかけがあったんでしょうか。

大森:
「きっと一生、看護の仕事をしていくんだろうな」という気持ちがあって、だったら自分の専門分野を持てたらかっこいいなって、漠然と学生時代から思っていました。勉強が苦手なくせに、でも自分が得意なことができたらいいなって。

3年目で透析室に異動になったとき、最初はつまらなかったですね。左遷された感もあったし……。2年目のときの師長面談で、「異動で行きたくない場所はある?」って聞かれて、「透析室とオペ室は嫌です」って言っていたのに、透析室に異動になって。「なにを言ってるんや」みたいな(笑)。

透析室の看護師は、体重測定、機械操作、穿刺ができれば、日常業務は単純作業で、ベルトコンベア式に日々が進んでいくように見えたんです。当時はそれが面白くないと感じて。

白石:
いつぐらいから考えが変わったんですか。

大森:
1年くらい経ったところですかね。日常業務の基本を習得できたのが大体1年で。そうなると自分に余裕ができてきて、患者さんの訴えに、より近づけられるようになりました。

面白くないと感じていながらも、患者さんと話をする中で、透析という一場面はみているけれど、その背景には外来で来ている人たちの生活があるんですよね。いわゆる“患者指導”が必要になるんですけど、それも苦手で。理想的な管理方法はあるけれど、完璧に遂行するなんて難しい。自分も小さい頃から病弱だったので、特に。

でも、慢性的な病を持ちながら生活しつつ、治療も受けている人たちへのかかわり方って、めちゃくちゃ看護師が重要なんです。医師のかかわりはもちろんですが、看護師のかかわり方によっても大きく変わる。苦手意識を持ちながら、でも学んでいきたいと思うようになりました。

循環器病棟から大学院へ、思いがけないご縁

白石:
それで透析分野でずっとやっていきたいと思っていたところで、また異動になってしまったんですね。

大森:
そうなんです、循環器病棟に異動になりました。病院の花形部署で、若干鼻高々になる部分もありながら、でも苦手意識も持ちながら。急性期分野でもあるけれど、慢性心不全の患者さんとか受け持つと、そのかかわりもすごく重要になってきて。

循環器病棟の師長さんとの面談で、「いずれは認定看護師、専門看護師を目指せたら」みたいなことを言ってしまったら、1週間も経たないうちに、副部長が急に休憩室に来て、「専門看護師興味あるんだって? オープンキャンパスがあるんだけど、行ってみない?」って。

その副部長は、僕が出た大学院の修了生で、慢性疾患看護専門看護師コースの教授のこともよく知っていて、「その教授ともコンタクト取っといたから」って。僕としては「いつかは」って思っていたのに、思いがけずそんなご縁に当たって。教授も「もう来年から来なよ」みたいなノリで。トントンと乗せられて飛び込んでしまいました。めちゃくちゃ苦労しましたけど(笑)。

白石:
学生時代から、「一生看護の仕事をしていくんだろうな」という気持ちがあったのは、なにかきっかけがあったんですか。

大森:
漠然とした中で、「男なら」みたいなところもあったのかもしれないです。「これなら自分に任せろ」「頼ってくれ」みたいな、そんなものがあるといいなって思った部分がありました。

「患者教育」ではなく「一緒に考える」こと

白石:
大学院を出て、専門看護師として透析室に戻られたときは、だいぶ働き方が変わったんじゃないですか。

大森:
かなり変わりましたね。循環器病棟にいた6年間のブランクがあったものの、意外と最初の2年で身につけた透析の基本業務は残っていました。専門看護師として学んだこともあったので、より患者さんに近い部分で入っていったり、介護保険使っている方のサービス担当者会議とかに「透析室からも参加しますよ」と始めてみたり。患者さんが安定して歩けるようになるための腎臓リハビリテーションや、生活に即したフットケアもちょっと始めました。

患者さんが透析を受けていない時間での生活にかかわるところに、フォーカスするようになりましたね。

白石:
大森さんの話を聞いていると、「患者さんに近い」というワードが何度か出てきましたが、どんなことをイメージしているんでしょうか。

大森:
僕、「患者教育」「患者指導」って言葉、大嫌いなんですね。「なに様や」って思ってしまって……。僕がやるのは、「一緒に考える」ことです。「一緒に考え、一緒に悩むこと」。教える、教えられるという上下関係ではなく、一緒になにかを探していく。「伴走」とか「パートナーシップ」。たぶん「患者に近い」っていうのはそういうことなんだと思います。

白石:
先ほどの話でもあった「看護師のかかわり方によって大きく変わる」というのは、なにか実体験としてあったんですか。

大森:
透析の医療って、一口に透析といっても、実は薬の使い方だったり、透析そのもののやり方だったり、ものすごい枝分かれしているんです。たとえば、よく使う薬に「リン吸着薬」っていう種類の薬があって。処方上は「食直前」とか「食直後」とかって出るんですよ。でも、それってけっこうあやふやな部分があって、じゃあ食事しないときはどうするのかとか。その薬をどう使っていくか、患者さん自身がしっかり考えられるようになるには、医師たちも十分かかわっているとはいえ、より日常生活に即した部分で患者とコミュニケーションを取りながら一緒に探していく。それって看護師のほうが得意な部分だし、実際それを医師より看護師のほうがやっている部分があったなって。

訪問看護への転職、「一緒に生活を組み立てていく」

白石:
15年間働いた山梨の病院を辞めて、転職されたきっかけはなんだったんですか。

大森:
やりたいこと、必要なこと、できている部分もありつつ、でも思い通りにいかない自分もいて……。あとは給料が少なすぎたこともありました。透析室は夜勤もなく、15年目で手取りが20万円もいかなかったので。

それと、大学院は経験年数として給与テーブルに含まれる規定があったのに、反映されていなくて。それを上に持っていったら、後出しじゃんけんみたいな対応をされてしまって。不信感もありつつ、いろんなモヤモヤもあり。自分の正義感で許せなくて、「辞めてやる」となりました。

どうせ転職するんだったら地元を出ようと思って。この病院を辞めたとしても山梨県内での転職は考えられなかったので、東京や静岡、長野辺りで探していました。

白石:
そこで3次救急の総合病院に転職されたんですね。

大森:
専門看護師として横断的な働き方や、看護外来の立ち上げとかも考えていきたいと思って。ただ、泌尿器科、形成外科、口腔外科のなんでも屋さんな病棟だったのでいろいろ大変でした。

白石:
そこから今の訪問看護という選択肢が出てきたのは。

大森:
訪問看護自体は学生の頃から興味がありました。でも、自分の専門領域を「透析」に見定めて進んでいたときに、キャリアを狭めてしまうというか、透析にかかわらない状況、病院から出るってことは考えないで最初の転職のときも探していました。

でも、慢性的な病を持ちながら生活している人がたくさんいて、自分が透析室で働いていたときにサービス担当者会議に出ていた経験もあり、地域でかかわる人ってものすごく重要で。「透析看護の専門家でもありながら訪問看護もしていく、そんな人材、ちょっと面白いんじゃないかな」と考えるようになりました。

そんなときにスカウトをくれた社長と意気投合したんです。地域の中でいかに生活していけるのか。病気の治療もしながら生活していく人たちに、看護師がなにができるのか。「一緒に生活を組み立てていく、それが大事なんだよね」と熱く語り合いました。社長は看護師じゃないんですけど、そういう視点を持っているってすごいことですよね。

透析医療の歴史は「命の選択」の歴史、だからACPに親和性がある

白石:
訪問看護で、透析や慢性疾患看護の専門性はどのように活かしているんですか。

大森:
透析の患者さんは実はけっこういるんです。実際にその場で透析そのものをみることはないんですけど、透析を受けながら生活している人たちがたくさんいて。透析にまつわるいろんなことがわかっている人が、しっかりと病院の透析室や透析クリニックとの連携ができる。透析の分野って、患者さんがすごく増えているけど、思ったよりいろんなことが知られてないんです。

慢性疾患看護専門看護師の強みって、たぶん生活を一緒に考えていけることだと思うんです。病を持ちながらどういう生活をしていくか、一緒に考えていける。訪問自体でも、自分の担当以外に一緒に訪問に行くとか、いろんな方法を取る中で、患者さんと、同僚たちと一緒に考えられるかなって。

病院だと、患者さんから話を聞いて生活を想像するしかないですけど、訪問看護では実際に生活の場に行けるので。そこで見たこと、感じたことを専門職としての視点も踏まえて、解像度高く医療機関に伝えられる。それが訪問看護師ならではの医療連携だと思います

白石:
大森さんはACPに関する活動にも取り組まれていますよね。透析とACPって、どういうつながりがあるんですか。

大森:
透析医療の歴史って、命の選択の歴史なんです。透析医療ができるようになった当時、それはもうすごく大変な治療で、誰にその治療をしていくのかっていう選択がありました。日本は先人たちの患者会の働きかけも含めて、すごくいい制度ができて、誰でも受けられるようになりました。でも、透析を受けることで、かえってQOLが落ちる状態の人たちもたくさんいるんです。

透析にしても、腹膜透析か、血液透析か。でもそれって、結局はどういう生活をしていくかが決め手になる。治療の選択でもありつつ、その人たちの人生の選択になってくるんです。

白石:
療法選択って、ただ治療の説明をするだけではないんですね。

大森:
療法選択支援って、「こういう意味がある治療ですよ」と伝えるだけじゃなくて、「じゃあどのような生活をしていきたいですか」という話から始めて、「血液透析を選んだら、あなたの希望する生活にこういうメリット、デメリットがあります。腹膜透析であれば、あなたの望む生活にこういうメリットがあります。すべてを掴むのは無理かもしれないけど、生活上のメリット、デメリットから一緒に考えていきましょう」と情報提供できることが、療法選択支援だと思うんです。

「気の迷い」と呼ぶ、あの日の選択

白石:
それでは質問カードを準備しましたので、こちらから選んでいただけますか。

大森:
右から3番目でお願いします。

白石:
「もし、過去、未来に行けるとしたらどうしますか?」ですね。

大森:
未来はあまり面白くなさそうだなって。今の生活でまた未来も変わっちゃいそうですし……変なパラレルワールド感になりそう(笑)。こういう都市伝説系は好きなんですけどね。未来に行っても、たとえ戻って来られても、その未来には、もう戻ってきた自分の時間はつながっていないような気がするので。

そうなると過去かなって思うけど、過去が変わったら今の自分じゃなくなっちゃう。ただし、過去に行って、今の自分の状況で、その気の迷いがあったときだったらどう動くのかなって。その山梨の病院を退職したときですね。たぶん、退職を選ばずに、でも透析室には限らず、もっと外に出ていくような道を選んだろうなって思います。

「気の迷い」って言ったのは、若干頑なになっていた部分もあったので。お給料が少ないっていう理由もあり、もっといろいろやりたい、必要だと思うことがあったけれど、なかなか進められずモヤモヤしていて。そこへの不信感みたいな、ちょっと大人が信じられない子どもみたいな、その気持ちが大きくて「辞めてやる」になったんだろうなって。

白石:
今、その過去に戻るんだとしたら、自分自身から状況を変える方向に動くということですか。

大森:
自分自身の動きを変えて、もうちょっと長期的な目線で見ながら、一旦現状は飲み込みつつ、今度はしっかりとした手当がもらえるような働きに持っていってやるぞ、みたいな。今の職場では、今年度に入るときに、専門看護師の手当として追加してもらえるようになったんです。それは働き方を見てくれてっていう部分もあるし、立ち振る舞い方次第で、それもちゃんと目指せるとわかったので。

自分自身がむしろ大人げなかったかなって。でも、当時より、今確実に成長しているわけで。その状態をもって当時に戻れるなら、もしかしたら無双できるかもしれないですね(笑)。

「徹底した当事者意識」が、温かな看護を育む

白石:
それでは最後に、「あなたが後輩の看護師に伝えたいことはなんですか」という質問です。

大森:
看護師になったことって、僕にとって、ある意味天職だなって思っている部分もあるんですけど、看護の仕事ってものすごく面白くて、奥が深いなって。いろいろと世間では言われている部分だったり、SNSとかで変な情報も流れたりとかありますけど、やっぱり看護師の仕事って、対人援助職でもありつつ、さらに自分自身の人間性も成長させてくれる、とってもいい仕事だなって。ぜひその中で、みんなで看護を楽しくやっていけるといいですね。

白石:
大森さん自身が成長したなって思うのは、どんなところですか。

大森:
劇的に成長したなっていうのは、ないんだけれど、人に対する眼差し的なもの。自分で言うのは恥ずかしい気がするけれど、温かな人間性みたいなのは、看護師の仕事をしている中で培われた、人間的な成長なのかなって。急変とかめっちゃ忙しいときは、そうは言っていられないときもありますけど(笑)、それもひっくるめて、いろんな自分の人間性が形成できています。

実は、自分も慢性心不全と冠攣縮性狭心症を抱えていて、週1くらいはニトロペンを使っているような状況で。血圧が90台~100台くらいで維持しているんですけど、それでも発作が起きるときは起きる。血圧的にもう薬も増やせないから、発作起きたときはニトロペンで対応せざるを得ない。もっとバリバリいろいろやりたいこともあるんですけど、できない状況もあって。でも、この体験があるからこそ、患者さんの立場に立てる部分もあるのかなって思います。

白石:
私の大森さんのイメージは、めちゃめちゃ温かな眼差しというイメージが強くて。最近の私はなんだか細かなことをキリキリ気にしちゃうところもあって、大森さんのようになれる人の違いってなんなんですかね。

大森:
誰しも、両側面を持っていて。僕だっていろいろつっつきたくなるときもあれば、ディスカッションという名の口論になることだって、もちろんたくさんありますよ。でもベースとして、自分が「どういう人でいたいのか」をちゃんと持っていれば、おのずとそういう風になってくんじゃないのかなって。

白石:
大森さんが考える「自分はこういう人になりたいな」っていうのは。

大森:
自分自身がどういう風にありたいのか。看護師というのは関係なしに、人間ひとりは寂しいですし、誰かと一緒にいる中で、そこが温かい時間になっていくような。もちろん仕事の上では患者さん、利用者さんになってくるし、プライベートはまたプライベートで。温かい空間を共有できる、温かい空間にしていける――そんなハブ的な人間になっていきたいです。

白石:
すでにそうなっているように思います。大森さんの看護の根底にあるのは、徹底した当事者意識なんですね。

大森:
医療職じゃない人たちと一緒にACPの活動をやっているんですけど、「ちょっと変わり者の看護師さん」みたいな感じで言われていて。それというのも、視点がすごく患者さんに近いところが、「すごい、ずっと医療の現場にいるのに、なんか不思議な感じがする」とよく言っていただくことがあって。

でもそれって、たぶん徹底した当事者意識みたいなところを大事にしている部分でもあるので、自分としては褒め言葉でもあります。教育に関しても、自分が全く知らなかった頃を思い出して、当時の自分なら1割くらいの労力で理解できるような説明を意識しているんですよね。それも自分を置きながら、学ぶ人たちの当事者意識なのかなって。その辺も大切にしたいなって思っています。

白石:
たとえば患者さんが悩んでいるとき、看護師としてどうかかわればいいか悩んでいる後輩にアドバイスするとしたら、大森さんだったらどんな言葉をかけますか。

大森:
患者さん自身が徹底的に悩んで、家族も含めてその結果であれば、その結果はすべてが正解だと思っていて。だからこそ、患者さんが悩めるだけの情報を提供できて、そこを一緒に考えられるケアができれば、もうそれはケアとして100点なんじゃないのかなって。

ACPの世界なんかでよく言われているのが、結局、最後の亡くなり方を決めることにフォーカスされがちなんですけど、そうじゃなくて。どういう風に最後まで生活していくのか。その結果、たとえ後悔の残る死だとしても、一緒にいっぱい悩んで考えた結果であれば、それはしっかりとした納得感につながるって。だからこそ“対話”を繰り返していこうって、ACPの中ではよく言われていますけど、それって看護師の働き方にもすべてにつながっているんだろうなって思います。

白石:
なるほど……。大森さんの、患者さんに寄り添う、徹底した当事者意識の姿勢が印象的でした。今日は貴重なお時間をありがとうございました!

大森 泉さんの著書

病棟看護師、訪問看護師が知りたい透析患者さんのケアQ&A

病棟看護師、訪問看護師が知りたい透析患者さんのケアQ&A
透析室看護ではない、透析を受けながら療養・生活する人をケアするための疑問を解決!


病棟・在宅ならではの疑問をピックアップ!
透析室看護ではなく、透析患者のケアに関する疑問に答え、ケアのポイントを解説!著者は、10年以上にわたり透析室看護を経験して、現在は慢性疾患看護専門看護師として訪問看護分野で活躍する。そんな著者だからこそ一般病棟や訪問看護、高齢者施設などに従事する看護師の疑問を理解し、患者さんについて知っておいてもらいたい内容を取り上げる。

発行:2026年5月
サイズ:A5判 176頁
価格:2,640円(税込)
ISBN:978-4-8404-9126-6
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インタビュアー・白石弓夏さんの著書

Letters~今を生きる「看護」の話を聞こう~

Letters~今を生きる「看護」の話を聞こう~
私もエールをもらった10人のストーリー


今悩んでいるあなたが元気になりますように
デジタルアートや3Dプリンタを看護に活用したり、看護をとおして一生の出会いをつかみ取ったり、在宅のほうが担い手が少ないから訪問看護に従事したり、苦しかった1年目のときの自分を手助けできるようにズルカンを刊行したり、医療と企業の橋渡しをするためにスタートアップに就職したり、悩みながらも新生児集中ケア認定看護師の道をまっすぐ進んだり、ロリータファッションモデルとして第一線で活躍しながら看護師を続けたり、目的に応じて疫学研究者・保健師・看護師のカードをきったり、社会人になってから「あっ、精神科の看護師になろう」と思い立ったり……。 さまざまな形・場所で働く看護師に「看護観」についてインタビューしようと思ったら、もっと大事なことを話してくれた。看護への向き合い方は十人十色。これだけの仲間がいるんだから、きっと未来は良くなる。「このままでいいのかな?」と悩んだときこそ、本書を開いてほしい。

目次


◆1章 クリエイティブな選択肢を持つこと 吉岡純希
◆2章 大きな出会いをつかみ取ること 小浜さつき
◆3章 現実的な選択肢をいくつも持つこと 落合実
◆4章 普通の看護師であること 中山有香里
◆5章 ものごとの本質をとらえる努力をすること 中村実穂
◆6章 この道でいくと決めること 小堤恵梨
◆7章 好きなことも続けていくこと 青木美沙子
◆8章 フラットに看護をとらえること 岡田悠偉人
◆9章 自分自身を、人生や仕事を見つめ直すこと 芝山友実
◆10章 すこしでも前を向くきっかけを作ること 白石弓夏

発行:2020年12月
サイズ:A5判 192頁
価格:1,980円(税込)
ISBN:978-4-8404-7271-5
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